木造浴室内の結露で大騒ぎ2008/03/01

木造温泉施設外観・赤城高原
一昨年の11月に竣工・OPENした赤城高原にある温泉温浴施設から連絡を受けた。

この施設は源泉掛け流しの浴槽を持つ木造の温泉施設で小さいながら贅沢な施設である。
浴室内は床と腰壁は十和田石と地元の子持産の石を使い、壁と天井・構造材には青森ヒバを使用している。
その内壁が結露し壁の羽目板が反ってきたり灰汁が出ていたりしているとの一報が入ってすぐに現場確認に出かけた。

浴室内に入ると確かに激しく結露している。
僕の浴室内環境の設計ではけっして結露などしないはずなのだがどうしたことだろう?
結露してすでに数日経過していたのだろう、壁表面にはヌルヌルしたバクテリアが発生していた。
まずは高圧洗浄で壁や天井をかまわず洗い流した。
その後に設計どおりの方法で室内環境を整えた。
結露を防ぐには換気と空調のバランスが大切だ。
源泉掛け流しのお湯は24時間浴槽に入っているのでそのままでは湯気で室内はいっぱいになってしまう。冬期間は特にそうだ。

新潟ほどではないが赤城高原は積雪もあるし冷え込みも厳しい。しかし、換気空調バランスをキチッととってやれば結露などしないのだ。
結露しなければ衛生的環境を保つことが出来て建物自体も長持ちする。

1時間ほどで壁は乾き始めてきて床も乾き始めてきた。
温泉管理者に管理方法をしっかり伝えて一件落着だ。

木造浴室内の結露で大騒ぎ:22008/03/01

木造温泉施設内観・赤城高原
浴室内の浴槽はこんな感じ。

こんな湯気のたちそうな内部空間でも換気や空調環境をしっかり設計・管理してやればぜんぜん結露しない環境を作れる。
もちろん源泉掛け流しの浴槽でも室内の結露は大丈夫である。
それが温泉設計の経験とノウハウなのである。

豪雪地帯における安全安心な地域づくりとは2008/03/01

今冬の豪雪は20年ぶりだそうだ。(新潟の南魚沼や妻有に限るとそれほど多いという感覚はないが・・・。) 国土交通省の都市・地域整備局は、「豪雪地帯における安全安心な地域づくりに関する懇談会」を先月開催しその議事要旨を公表した。雪下ろしなどの事故での高齢者の割合が高くなっているという。僕の通っている南魚沼や十日町一帯は日本でも有数の豪雪地帯である。車道と歩道との間には深い側溝(流雪溝)が敷設されていて。グレーチングの蓋が嵌まっている。屋根から落ちた雪や家の前の雪はそのグレーチング蓋を開けて側溝内に落し入れるのである。しかし流雪溝に雪を捨てる担い手が年々高齢化しているため、設備を活かしきれていないとしている。また、過って高齢者がその側溝内に落ちて流されてしまったりという事故も毎年のように起こる。
山間地集落の道路では除雪費用がまかなえず、孤立と離村の選択が迫られているともいっている。人口が少ないため、予算投入が難しいという見方もあるが、山村住民は山地を荒廃から守っているという観点からいうと、そういうところにこそ税金を投入しても良いのではと思う。日本の国土の大部分は山間部である。特に人との関係性が密接である里山から山間部にかけては下流域全体の生態系の大切な「源」でもある。旧建設省は日本の河川という河川をみんなコンクリートで固めたいのかと、いぶかるほど乱開発をしてきたが最近それにもようやく歯止めがかかろうとしている。しかしその一方で山間地集落住民の高齢化問題によって山野が荒廃していっては元も子もない。税金の使い道は短期間の「費用対効果」だけでは判断できないこともある。長期的な視点に立って省庁を越えた税金の使い道を考えてもらいたい。今回の懇談会が単に「豪雪」と「高齢化」の関係性だけにとどまることなく日本の国土・自然を守るための第一歩になればと期待したい。それで美しい渓流がいつまでも残り、フライフィッシャーマンの「夢」が落胆へと変わらないよう願いたい。

大手ゼネコンの相次ぐ施工不良は教育不足が原因?2008/03/02

今年に入って、次々に発覚したスーパーゼネコンの現場での施工不良をどう受け取るべきか、という記事があった。(日経BP社の建設・不動産専門情報サイトより) 監理専門の建築士の酒見氏が答えているのだが、「建設業界に潜んでいた積年の問題が明るみに出たと受け取るのが正しいだろう。多くの建設会社が、現場の担当者や専門工事会社を技術面できちんと教育してこなかったことが表面化したのだ。大手だからこそ、竣工前に施工ミスを発見して、補修や再施工を可能にしたともいえる。現場管理が甘い建設会社は、見つけられないまま竣工させてしまうケースもあるだろう。」と語っている。
僕の設計した現場でもそっくり当てはまる。けっして高度な構造を持つ建物ではない、ごくごく普通のRC造や鉄骨造・木造建築でも上記のような状況は少なからず感じられる。全てがそうではないが、現場の監督員や作業員の技術面での勘違いや間違いなどは建設界の構造的な問題か?と思ってしまうほどだ。たぶんその間違ったやり方をずーっとしてきて疑問に思うこともなかったのかもしれないし、そもそも新しい基準や法規、工法などを再教育するシステムもなかったのだろう。また、個人レベルでもそれをしてこなかったのかもしれない。建設の技術や施工・法規は日々変わってきている。どんどん知識を新しく取り入れていかないと追いついていかない。一生懸命新しい勉強している者とまったく気にしてもいない者とが同じ現場にいたのでは作業上の意思統一も出来ないだろう。現場では設計者・監理者・監督・作業員の全てがひとつの目標に向かって日々邁進をしているものだ。間違いやミスや勘違いを起こさないためには最低限の技術的な意思統一が大切だ。それには「教育」が大切なファクターになってくるのだと思う。昨今の施工不良を見聞きするにつけそう感じる。第三者監理によるチェックも有効ではあるが、まずは作り手ひとりひとりがしっかり勉強し続けることが大切なことだろう。

大量の杉花粉が舞っていて・・・2008/03/12

この時期は毎年、杉花粉でダウンする。仕事のパフォーマンスもガクッと落ちて散々な季節である。使われる計画のないまま奥多摩や丹沢周辺の山々に植林された杉がこの季節になると大量の杉花粉をまき散らす。杉花粉のもたらす経済損失は莫大な金額になるだろう。仕事のみならずプライベートでも動きが制限される。困ったものだ。

地盤と基礎下(地盤補強)の関係2008/03/24

週末の数日を新潟に出張してきた。
このところの暖かい陽気と雨のせいで越後の山の雪も消え始めている。しかし今回はもちろん全部仕事であるからのんびり山を眺めているわけにもいかず、ましてや解禁までにはまだ1週間ほどあるのでそれこそ指をくわえていた感じだ。

仕事の半分は設計した医療施設群の定期報告の建物調査である。

もうひとつはRCと木造の混構造で設計する建物の施主打合せである。建設地は数年前大きな地震で被害の出た震源地近くの小千谷市である。
当然、設計で重要なことのひとつは「耐震性」だ。建物自体があまり重くならない今回のようなケースでは、一般的に地盤調査もボーリング調査までは行わずスウェーデン式サウンディング調査で確かめることが多い。
もちろん精度からいえば前者に利があるが、そのぶん調査金額も後者の5〜6倍近くになるのがネックだ。
木造3階建て程度の規模の建物の基礎設計で必要な要素は「地耐力」である。地耐力は「地盤支持力」と「沈下量」から求めるが、サウンディング試験では支持力しかわからない。
沈下についても土質そのものについても「推定」することしか出来ない。
また、試験に使用される道具そのものが礫層などでは貫入していかずに測定不能となるなど測定できない項目が多くそれゆえ試験結果から導かれる最終判断については調査員の知識・技量や経験に大きく左右される。

したがって実際、現地での試験と判断については経験豊富で地元での調査実績がありかつ、現地の地盤状況についてよく知っている地元の地盤調査会社から選ぶことにしている。
できれば地盤補強の設計も出来、基礎形状のアドバイスも出来るところがベストである。

また建物の設計者がその検査に立ち会うことも重要だ。
数年前に同じ地区で地震で倒壊している建物や亀裂の走る地盤を目の当たりのすると慎重になってもなり過ぎということはない。
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