越後妻有トリエンナーレ・もぐらの館「土壌モノリス」 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/01

土壌モノリス
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越後妻有(新潟県十日町市・津南町などの一帯)地域で開催されているトリエンナーレを見に行ってきました。
2000年から始まったこのトリエンナーレも今回で5回目となります。

3年に1回の割合で開催される、広大な自然の山中のエリアを使って行なわれる野外芸術祭ですが、毎回楽しい発見があります。
そんなトリエンナーレの会場の中から、特に印象に残った作品や事柄などをこれから数回に渡りBlogにUPしたいと思います。

まずはこの作品「土壌モノリス」ですが、これは作品というよりは学術的にきちんとした手法によって採取された、土壌サンプルの一つと言えるのかもしれませんが、かなりの迫力でした。
パンフレットには、「土壌モノリスとは、土や地層の断面を切り出した標本のこと」とあります。

「つくり方は、まず地層の断面に、接着剤を塗りその上に布を貼る。数時間のち、乾いたところで布を剥がしていくと地層が崩れずにそのまま取れる。」そうで、土壌の生成には1cm約100年、1m1万年の時間がかかるのだそうです。


会場には日本全国の土壌の断面標本が所狭しと並べられています。もちろん地元「越後妻有」の土壌断面もあります。

標本にはきめ細かい肌の面があったり大きな礫が混じっている層があったり、くっきりと亀裂が入った地層があったり、表土の方には木の根や草の根などが混じっていたりしていて、さまざまな表情、色、テクスチャーが手に取るように解ります。

ひとつひとつに詳しい解説はありませんでしたが、土質の専門家の手にかかるとこれを見ただけで地層の成り立ちや性質、その土地の土壌の歴史が詳細に解ってしまうのでしょうね。

林立している土壌標本のひとつひとつが、土地の歴史をひも解く貴重な情報を掘り出してもらいたくて、それを見ているものに一生懸命に語りかけてくるように感じます。


越後妻有トリエンナーレ・竹のトンネル「LATHIKU」 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/02

竹のトンネル LATHIKU
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太い竹(孟宗竹)を300本以上も使って、トンネル状に組み合わせて作ったインスタレーション。

うねるように曲がったトンネル道が続くだけという単純な演出なのですが、シンプルな空間構成と一見アクロバチックに見える架構、竹という素材の持つ力強さや親近感を覚えるアジアンテイスト溢れる作品です。

特別に何が面白いというわけでもないが、直球で投げ込んでくるストレートな表現に思わず惹き込まれます。

竹の縦格子の間からチラチラ見える越後の里山の風景や、遠くに見える信濃川の河岸段丘が、丸い竹を踏みしめながらトンネルをくぐり抜けるという行為にアクセントを与えてくれています。


越後妻有トリエンナーレ・蓬平いけばなの家/古民家といけばな … 建築の旅・WanderVogel2012/09/03

妻有トリエンナーレ 蓬平いけばなの家
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妻有郷 松代の芝峠温泉の近くに蓬平(よもぎひら)という集落があり、そこで古い民家を利用して開催されている様々な作家による生け花展。

ここでの見所は何といっても、この集落で一番大きいという古民家の持つ圧倒的な存在感です。

(写真は、かとうさとる氏の「妻有降臨」という作品です)
周辺農家で作られている「カサブランカ」を見た作家の印象に想を得た作品ということですが、真っ赤な花弁をイメージした大きな球体が古い床の間をバックに迫力ある表現力で迫ってきます。

ここでもこの作品を引き立てているのは、書院造り風のけやきのごつい長押や回縁、太い柱、豪壮な造りの黒塗り壁で納めた床の間などが周りの空間をがっしりと引き締めているからでしょう。
天井は数寄屋っぽい竿縁天井ですが、太い竿縁にしているので、けっして軽い雰囲気にはなってはいない。

木製の引き違い窓や昔ながらの歪んだ板ガラスなども、空間をひとつにまとめあげる効果を引き出しています。

建築といけばな、お互いの良いところを引き出し合って一帯となった、凛とした空気の中 おごそかで幻想的な空間を体現できます。


越後妻有トリエンナーレ・下条駅脇のランドマーク「茅葺きの塔」 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/03

妻有トリエンナーレ 下条
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十日町市から可愛らしい2両編成のJR飯山線で小千谷方向に2駅行ったところの「下条駅」脇に建つ「下条茅葺きの塔」。

面白い建築を設計することでメディアに取り上げられることの多い「みかんぐみ」と神奈川大学曽我部研究室の共作です。
こういう作品は、建築的な目で見ると(茅葺き工法なども含めて)賛否両論があると思いますが、私はこういうのすごく好きです。

ランドマークとしては高さが足りないという意見もありますが、現在の建築基準法(12m以下)では致し方のないところでしょう。
方形の塔の屋根(外壁?)に「段葺き」で葺かれた二重螺旋の茅葺きが、日本の風景とはひと味違った「亜細亜」な原風景を表現しています。


紹介文にはここ下条(ゲジョウ)にはかつて多くの茅職人が暮らしていたのだそうですが、今は現役の茅職人は残っていないそうで、この塔は長岡の茅職人さんに葺いてもらったとのことです。

茅葺きの屋根というのは、広く日本全国に存在していますがそれぞれの地域で気候風土や伝統、あるいは容易に調達できる材料などをベースに、葺き方や下地材料、施工要領、棟の形状や納め方など独特の地方色があり、それが「おらが村の風景」を形作っているともいえます。
(たぶんこの塔の棟の形状というか納め方は「長岡風」なのでしょうか?、仕上げ材料は違うにせよ長岡地域独特の形状と納めをしているものと想像しますが、すみません 詳しくは断言できません…)

細かく言えば、茅葺き屋根そのものが隣村との違いの出る「地域の独自文化」ということですので、本来であればその村の独自工法を踏襲しつつ組み上げていくのが文化的にも伝統保存的にも正しい姿なのですが、こういう「二重螺旋の段葺き」という日本の茅葺きのジャンルからまったくかけ離れた姿で葺くのであれば(作者はこのへんの事柄はしっかり解っていて、やっているのだと思います)、これはこれで楽しい! と、私などは思ってしまいます。


越後妻有トリエンナーレ・イフガオ族の「高床式茅葺き小屋」 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/03

トリエンナーレ フィリピンの茅葺き
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下条駅から少し山あいに入った棚田に囲まれた場所に建つ、フィリピン・ルソン島から移設したという茅葺き小屋です。

これはフィリピンのイフガオ族の住んでいる棚田から下条の棚田に、イフガオ族の伝統的な高床式の保存倉庫を移築したのだそうです。
前回(2009年)のトリエンナーレの際に実際にその村から大勢の村人が来日して、フンドシ姿でこの小屋を再建したということで、その作る過程を含めてアートというかインスタレーションな作品です。

ちなみに、イフガオ族の住んでいるフィリピン・ルソン島のイフガオ州は世界遺産(文化遺産)にも登録された山一面に棚田の広がる地域で、同じく棚田で有名な十日町市との間でこの他にもいくつか交流プロジェクトが進んでいるようです。


風に揺れる稲穂越しに小屋を眺め見ますと、茅葺き屋根の小屋の佇まいが一見懐かしく思えるのですが、何となく感じる違和感は小屋と屋根のプロポーションやその姿の後ろに広がる針葉樹林の林にどことなく「しっくりこない感」を感じるからでしょう。

こういうところにも、あるべきところ(育った環境)にあるべき姿(建築文化)という図式は歴然としてあるものだなぁ、と改めて思い起こさせてくれました。
この「しっくりこない感」を感じることで、その要因をより深く理解することにつながるのだ、と思います。

人が長い年月にわたって育てて来たその地域の建築文化と、自然環境の持つ空気感、植生・地形・気候風土などはお互いに密接に関係していて、小屋ひとつ取ってみても、その環境の中にあってこそその姿である、つまりそれこそが「必然」なのだと感じさせてくれました。

その意味において、この作品を鑑賞する「意義」は大きい。


古民家/町家の解体・移築について … 建築の旅・WanderVogel2012/09/04

中越の町家解体現場
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先日のトリエンナーレで十日町市周辺を車で回っている時に出会った、民家(町家)の解体工事現場です。

部材をひとつひとつ吟味しながら丁寧に解体しているところでしたので、現場内部を覗かせてもらうと、梁や長押や柱など大きくて立派な材料を使っていることが解ります。

雪国独特の意匠である(軒を深く飛び出させるための)せがい(船枻)造と、軒まで張り上げた下見板が特徴的なこのデザインコードは、雪深いこの地方の気候風土が育てたものです。

せがい(船枻)造といっても、これにも地方色がいろいろあり、新潟(上中越)の場合は妻側の意匠が独特で、妻側から見える軒の出を支えている二段になった部分が一番の特徴でしょう。
建物自体はそれほど大きな家ではないですし、この辺りではごくごく一般的な町家の民家ですが、普請した時には材料を選んで建てられたことがわかります。

こういう民家は何も手を付けないと、ただ解体され捨てられてしまうことが多いものですから、移築によって第二の人生を歩んでいくことには大賛成なのですが、出来ればこの地域内での移築を望みたい。

昨日も書きましたが、その土地で育った建築文化はその地域にあってこその“伝統”であり、“文化”なのです。
それが一番望ましい姿なのです。

とは言え、朽ち果てて捨てられてしまうよりは、他の地域に移ったとしても長く生きながらえる方が「マシ」なのでしょうが…
この問題は、本当に難しい。


越後妻有トリエンナーレ・カボチャで作る「おもちゃの実」 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/05

越後妻有トリエンナーレ おもちゃの実
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パーゴラシェルターで栽培されている色鮮やかなカボチャの実。

いろんなかたちや色、大きさのカボチャがぶら下がっていて、楽しい野菜のトンネルが作られています。

ぶら下がっている実をよく見ると、動物やロボットの“型”に入れられて作られた可愛らしい姿のカボチャが混じっていることに気付きます。

子供たちにはきっと人気のアトラクションになるなぁ、と見ていて思ったのですが、場所が町の中心からかなり離れているのと、この作品の他には見るべきものがないのが ウ~ン、残念。

案の定、他の作品に比べて訪れる人も無くて(地の野菜を売る直売コーナーにも人影がなく)、せっかくの色とりどりのかわいいカボチャたちもちょっと寂しい感じがしました。


越後妻有の豪農/商家・旧川西町の星名家住宅 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/07

川西 星名家住宅
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越後妻有トリエンナーレ大地の芸術祭 を見て回っている時に出会った、十日町市(旧中魚沼郡川西町)にある星名家住宅です。

解説文には、
「星名家は江戸時代に酒造業を営みながら、大地主へと発展した町家で、小千谷街道(現 国道252号)に西面して広大な屋敷を構えている。
街道に面した主屋の間口は三十二メートルに及ぶ豪壮な造りで、内部には広い板敷きの茶の間や台所があり、四室の座敷を備えている。
主屋(写真の切り妻の家)の背後の敷地には、南北に土蔵造の蔵が三棟づつ(計六棟の土蔵)並び、これらに囲まれて庭が作られている。
天保13年(1842)に上棟し、母屋は豪雪に耐えられるように太い柱、桁、梁など雪国特有の様式を伝える豪壮な造りで、新潟県における大地主層の住宅の代表的な例として価値が高い。
間口十七間の母屋、蔵6棟、茶室2棟と敷地も合わせて国指定重要文化財の指定を受けている。
裏手の雑木林の中には雪季の積雪を保存し、主に酒造関係の冷蔵所として利用された、深さ3mの玉石乱積み壁面を持つ「雪穴」も残されており、これも登録有形文化財(建造物)に指定されている。」
とあります。

街道側と妻側には雁木が出ており、1階では街道に面して格子戸が力強く並び、透けて見える内部空間と共に、とても美しい象徴的なデザインを見せています。
2階に見える細い千本格子は、全体を支配する豪壮な雰囲気に色気と雅な感じを与えています。

1階のごつい格子の奥には豪雪地帯らしい「土縁(つちえん)」と呼ばれる土間が回されているのが見えます。
この「土縁」は、内部空間のようで外部空間、外部空間のようで内部空間といった極めて日本独特の「あいまい」な空間概念を持っていて、この建築空間(軒下/軒内)が「自然」と極めて高い「親和性」を持っていることが一目でわかります。

土縁の奥には縁側状の板の間が広がっていると想像できるが、一面に板戸が閉め切られているので、室内を垣間みる事は出来ない。

主屋は平入の建物で、中央あたりの格子のない一間の柱間奥が玄関となっています。

六棟ある大きな土蔵群も敷地外側から垣間みる事が出来ますが、そのうちの1棟の外壁は吸込まれるような深みのある黒漆喰できれいに塗られており、相当に手の込んだ造りであることが解ります。

現在ももちろん住居として使われていることもあって、内部を拝見する事が出来ないのが残念でした。


越後妻有の民家/農家 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/08

越後妻有の民家
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越後妻有の十日町市周辺で、今でもよく見られる民家(農家)の姿です。
もちろん急な勾配屋根を持つ茅葺き民家もあちらこちらに点在していますが、雪下ろしを前提としたこういった形状の瓦屋根・金属屋根の民家も実際には多いのです。

越後妻有トリエンナーレの主要プロジェクトのひとつに「古民家再生プロジェクト」「空家プロジェクト」というのがあって、トリエンナーレ出品作品の舞台(脱皮する家、うぶすなの家 など)として文字通り「再生」しているものもありますが、全体から考えるとレアケースですし、保存/再生という観点からは少し方向が違うのかもしれませんね。

大半の地域では(日本全国、同様なのでしょうが…)やはりここでも過疎化の波が押し寄せていて、お年寄りしか住まなくなってしまった村では、残った村人で協力しあっての雪下ろしもそう容易には出来ないのでしょう。
ここ数年は大きな地震もありましたし、年によっては豪雪になり雪の重みで潰れてしまい、その後修復も出来ず朽ち果てていく民家が多いのだと思います。

古民家再生の基本は9/4日のBlogでも書いたように、その生まれ育った地域での保存・再生が一番望ましい姿で、他所の地に運んで移築したのではその文化的価値は半減と言うか無くなってしまいます。
単に保存するといっても、それはそれでとても難しいことです。
だとすれば、何とかこの地で「再生」出来る方策はないものだろうかと、この3年に1度のトリエンナーレを見に行くたびに思います。
(これは、この地に限らず全国同じでしょうけど・・)

この民家はこの地方では良くある構造・意匠で建てられた民家/農家ですが、せがい(船枻)造りの持ち送りの方法(構造材)がちょっと変わっていて、目を惹きました。
妻側の両端部を見ると、軒先に飛び出した桁を支える梁(というか 持ち送り)にうまいこと曲がった根曲がり材を使っています。

雪の多い地域(新潟だけでなく富山や高山でも見られますが)の斜面などで、雪の重みに耐えて育った独特の形状に曲がった木材を、構造的に上手に使って造られています。

家自体(外壁の下見板など)はかなり痛んでいるようですが、傾いたり屋根が曲がったりはしてはいないので、構造的にはまだまだ大丈夫そうです。
ただ、この少し上に建っていた民家(写真右端に少し写っていますが)は屋根が落ちてしまっていて、土壁もかなりの範囲が崩れてしまい、すでに再生することは難しい状態でした。


FURIA ETCカードの入替え … WanderVogel・BikeTouring2012/09/09

FURIA ETCカード入替
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今日は、GHEZZI&BRIAN FURIAのETCカードの入替えをして、ついでにちょっと横浜周辺を軽くツーリングです。

ETCカード入れておく本体はシートの下にあるので、ボルトで固定されているシートを外して差し替えをします。
工具が必要なので、ちょっと面倒です。そんなこともあって、ETCカードはバイク専用のものを作って入れっ放しにしています。

バイクの場合、料金所のやり取りの煩雑さを解消してくれるこのETCシステムは、車の時の何倍も恩恵を感じます。

ただ、何故2人乗り(僕の場合は常に1人乗り)しか出来ないタイヤが二つしかないバイクの高速料金が、未だに4輪の軽自動車と同じなのかよく解らない。高速のパーキングエリアでも、バイクの駐車スペースは狭くて小さくて冷遇されているのに・・・。

ETCカードを入替えて調子見がてら、本牧・三渓園やみなとみらい・ベイブリッジを眼下に見ながら湾岸沿いに高速道路を走ります。

今日は80~100km/hで走っても、全身に熱風を浴びているようです。
バイクウエアがサウナスーツのように感じます。
かといって、若い頃のようにTシャツ1枚で乗るなんてことは、さすがにもう出来ないし…。

秋はすぐそこ! もう少しの辛抱か。

・・・不定期に つづく

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