先日行った西丹沢でのカモシカ滑落死 … 山歩き/自然観察・WanderVogel2014/04/04

西丹沢でのカモシカ滑落死
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先日歩いた西丹沢の山奥の林道で死んでいたかわいそうなカモシカくん。

丹沢の山(特に西丹沢・山北町の山奥)の地質は、丹沢湖周辺では火山角礫凝灰岩が主体(一部結晶片岩化している)で、 加えて山地斜面の表層には宝永スコリア(1707年の宝永大噴火時に降り注いだ火山灰で黒い色をしています)や軽石(いわゆる白っぽい多孔質の石です)ローム層、その二次堆積物に覆われていて非常に崩れ易い性質があります。
(平成22年の9月に起きた台風による沢の斜面崩落や林道の崩壊は、集中して降り続いた豪雨が直接的な原因ではあるが、一番の要因はこの崩れ易い地質に起因しているのでしょう。)

カモシカの滑落現場の上はかなり高い垂直のガレ場で、その上部から足を滑らせて一気に滑落してきたものと思われます。
顔を持ち上げてみると、左の角の半分から先が折れてなくなっていましたので、頭から地面に落ちたのかなぁ。かわいそうなことです。
私がここを通ったのが朝8時頃ですが、カモシカの身体・毛も夜露に濡れているという感じでもありませんでしたから、たぶん落ちたのは早朝かと思います。

カモシカの正式名は「ニホンカモシカ」というのですが、ウシ科ヤギ亜科カモシカ属(偶蹄類)です。
つまり、シカという名前が付いていますが立派(?)な牛の仲間なんです。
一方、ニホンジカはもちろんシカ科ですから、カモシカとはまったく科の違う動物ということになりますね。

角を見ると違いがよく解ります。シカの場合は枝分かれした立派な角を持っていますが、基本的に毎年落ちて生え変わります。
カモシカの角は牛と同じですから、枝分かれもなく、頭蓋骨に直接くっついて生え替わることはありません。ですので、カモシカの角は毎年毎年成長していきます。
もちろん、シカの角のような皮(フクロ角とも言われる)も付いていません。

また、カモシカにはオスにもメスにもこの角はありますので、シカと違いこれで雄雌を判断することは出来ません。

細くて長いきれいな足のことを例えて「カモシカのような足」といいますが、写真で見ても解るように実際のカモシカの脚はガッシリしていてかなり筋肉質です。

カモシカはこの筋肉質の丈夫な脚と繊細な蹄を使って、急な斜面や垂直な岩場を上手に歩き回ることが出来ます。カモシカはヤギに近い種類なので、岩場に強いことも当然です。

そんなカモシカでも油断すると岩場から落ちることがあるんですね。
垂直の岩場をトラバースする際も命綱を着けているわけではありませんから、脚を滑らせれば即「死」に結びつきます。


参考資料:
「平成22年9月8日神奈川県北部における豪雨災害の調査報告」では、最後のまとめとして以下のように書かれています。
・アメダス丹沢湖の観測値は日雨量、最大時間量とも最大を記録した。これは、昭和47年7月災害以来の雨量である。
・2010(平成22)年9月8日に神奈川県北西部において発生した豪雨の雨域は局地的で、顕著な土砂流出が認められたのは世附川及びその下流域に限られていた。
・丹沢湖に流入した土砂及び流木の量から考えると、世附川上流域では表層崩壊が多発している可能性が高い。
・土砂流出形態は土砂流~掃流状態であり、表層のスコリア層が主体で巨礫混じりの土石流は少ない。また、スギ・ヒノキ植林の流木が多かったのが特徴である。このことは、山地斜面の表土保全、森林管理のあり方が課題であることを示唆している。

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