ススキとセイタカアワダチソウの戦い … 自然観察・WanderVogel2014/10/22

セイタカアワダチソウとススキ
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一時期、野原や草原を破竹の勢いで侵略していた外来種のセイタカアワダチソウ(要注意外来生物・日本の侵略的外来種ワースト100に指定されている)ですが、時が経つにつれ「そういえば、最近あまり見ないなぁ」という印象をもつ “あまり見ない雑草” になりつつあります。

セイタカアワダチソウという名前の由来は、アキノキリンソウの別名であるアワダチソウ(泡立ち草)に良く似ていて、背が高いことから名付けられたといいます。


写真は、このあたりでもまだ普通に見られるススキの間に点在する、セイタカアワダチソウです。

少し前まではニホンの自生種・ススキが駆逐され、背の高いセイタカアワダチソウ(北米原産の外来種)の黄色い花一色の原っぱになってしまっていましたが、最近またススキの勢いが盛り返しています。


外来生物の浸入によって、抵抗力の低い日本の自生種が浸食・駆逐されてしまう、という現象は樹木や草本だけに限らず、昆虫でも動物でも淡水魚でもあり得ることで、実際にあちらこちらで(僕たちの目に入らないところで)熾烈な戦いが日々繰り広げられています。


セイタカアワダチソウが一時期日本中の原っぱに一気に蔓延した大きな要因は、この植物の持つ勢力拡大戦略のある仕組みにあります。

もともとこの植物はあまり滋養のない痩せた土地でも陽の当たらないところでも繁殖できる生命力の強い植物です。それが比較的肥沃な日本の土壌に侵入してきたのですから、当然爆発的に増えていくことになります。

さらにこの植物、その根から周囲の植物の成長を抑制する特殊な物質を出し、他の植物の動きを止めながら、自分の勢力拡大を図るという恐ろしい技を持っています。

このように他の植物の生長を防いだり、動物や微生物が寄り付かないような物質を出す効果を「アレロパシー」というのだそうですが、ソバやヨモギ、ヒガンバナ、アスパラガスなどもそういった能力を有しているといいます。

セイタカアワダチソウはそういった技を使い、主にススキの原や湿原などに侵入しては他の植物を駆逐してその勢力を伸ばしてきたのですが、日本に帰化して数十年経つと自分自身が日本化してきたのか、自分の出す毒素に自分が抵抗出来なくなり、自滅していく状況になっているのだそうです。

そこへ、元の主であるススキが耐性を付け勢力の巻き返しを図ってきました。今ではススキの勢いの方が盛り返してきていて、以前とは逆にセイタカアワダチソウを駆逐し始めています。


勢力が逆転していく要因には、土の栄養分を作り出していたモグラやネズミがいなくなり、セイタカアワダチソウの根が吸収する深さの栄養分が極端に少なくなっているのも原因と言われていますが、いずれにせよ植物同士の勢力拡大の仕組みと攻防の様子は神秘的で、とても興味深いものがありますね。



ところが、最近のニュース(日経新聞10/21)を聴くと、そういうところばかりではないみたいです。

東日本大震災・原発事故から3年半以上がたっても住民が避難したままの福島県内、東京電力福島第1原発周辺や、避難区域に指定されている福島県富岡町のJR常磐線の富岡駅周辺などでは、今年も黄色いセイタカアワダチソウがうっそうと生い茂っている、と報じられています。

第1原発西側の農地や富岡駅付近の線路沿いなどでは、あれ以来まったく手入れがなされていないので、新たにセイタカアワダチソウの天下となっているようです。

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