岳人・山渓の12月号と文庫本 … 定期購読の本たち・WanderVogel2014/11/19

岳人12月号など
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定期的に購読している「岳人」と「山と渓谷」の12月号と友人から借りた文庫本

岳人は数ヶ月前に編集・出版がモンベルの辰野氏に変わって若干編集方針が変わったとはいえ、なかなか内容の濃い編集を続けていると思う。
12月号は特集に「山に生きる人々」という題で、巻頭の30ページに渡って高桑信一氏の文でまとめています。

高桑信一氏は「山の仕事、山の暮らし」という本を以前読んだことがあるが、山で生きる人々の姿を厳しい正直な目で精緻に書かれていて、とても良い本でした。
今月号の内容も、短い文章の中とはいえ、なかなか読み応えがあり、読み終えた後に考えさせることを含んでいて、深みのある内容だった。

山で暮らす人たち、森を受け継ぐ人たち、そういう人たちがいること(いたこと)に、都市に住んでいる人は普段まったく気がつかない。 もったいないことです。
知ること、そして体で感じる経験を通して始めていろいろな興味も生まれてくるものです。


特集の後ろに続く、根深 誠氏の「懐かしい山と人」というコラムもとても共感が持てて、良い記事でした。
なかでも、白神山地のマタギがしゃべった「ああ、いい風だ。風が見えるようだな」という一文は、筆者だけでなく僕も心を揺さぶられる言葉だった。


スカルドゥの北側に聳えるK7の登山記「K7西峰 登攀の記録」は、ピークハントをすることはない僕にとっても楽しめた記事だった。
イスラマバードからインダス川沿いにカラコルムハイウェーを遡り、スカルドゥへと走るルートは、フンザ、ギルギットまでしか行ったことがない僕にとっては今でも憧れの地です。


旧「岳人」から続く連載の「遭難事例から学ぶ知恵と教訓」は、今年に入って一般の参加者を引率して「森林探訪」をする機会が多い僕にとって、まさにタイムリーな記事で毎回参考にさせてもらっている。

リアリティーのある事故事例とその分析、うっかり事故を回避するための方策など、実践で役に立ちそうな記事が載せられている。
山での事故は、見るからに危険な箇所よりもむしろ何てことないところにこそ「魔の手」が潜んでいるものだ。


「山と渓谷」12月号は初心者の冬山特集という感じで、毎年この時期のお決まりの企画・特集で、取り立てて良くも悪くもない、という感じです。
(べつに悪く言っているわけではなく、そういう雑誌も必要なんです。野外活動のモチベーションを簡単に上げるには、演出された写真を見ることも必要かと…)

ちゃんと、来年のカレンダーも付録で付いているしね。


友人から借りた、服部 文祥著の「百年前の山を旅する」という本。図らずも「岳人」の今月号の特集に通じる内容でした。
古道を地図で探し、今となってはその踏み跡さえも確かでない「道なき古道」を昔の衣装と装備で歩き通す、という企画山行です。

7つの短編に分かれているが、何となく前半と後半では目指しているものが違うようにも感じるが、「古道を歩く」前半部の旅の描写はなかなか面白かった。

日本も昔は、ネパールヒマラヤのトレッキング街道(日本の街道のように一里塚あり、宿場町あり、飯屋兼宿屋あり の整備された主要交通路としての山岳街道)のように、山深くを縦断する小さな細い街道でさえ、旅人のための杣屋や茶屋などが要所要所にあったんだろうな、と考えさせられるルポルタージュ形式の読み物だった。

服部氏は「岳人」にもここ数年に渡ってずっとルポを書いていますので、馴染みのある作家・登山家です。
岳人連載の「スーパー登山論」(今回で22回目)は、ロシア極東ツンドラをサバイバル登山スタイルで徒歩で旅するものですが、飲みながら楽しんで読める読み物になっている。

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