まじめに建築や環境の話し・茅葺き屋根民家を例に … 建築と環境・WanderVogel ― 2014/11/26
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少し真面目に、建築材料からみる環境問題の話し。
一般にいわれる茅葺き屋根の「茅(かや)」とはなんでしょうか?
茅または萱(かや)というのは、屋根を葺くのに用いる草本の総称で、特定の「この草」と決まっているわけではありません。
と言うよりも、その地方で取れる(入手し易い)屋根葺き材料の草をそう呼んでいるということです。
多くは、ススキ(薄、芒)、チガヤ、カリヤス、シマガヤ、スゲ(菅)、葦(ヨシ)などイネ科の植物で、広義では麦わら、稲わら等も含まれます。
日本全国でみると、ススキ(イネ科ススキ属)が使われることが多いのですが、全国各地方でさまざまな形質をもったその地方特有の「茅」が使われています。
また、同じススキひとつ取ってみても、育った環境で茅葺き屋根の葺き方がガラッと変わるくらい地方差があります。
そうしたその地方特有の茅材を使って葺いた屋根は、その地方の気象条件や風土、文化、歴史を反映した独自の茅葺き技法として発達してきました。
その結果、それぞれの地方に独特の形式と風格とを合わせもち、その土地ならではの土着性を持った茅葺き民家が伝承されることになったわけです。
昔は関東地方・東京にも多くの茅の生産地がありました。
たとえば「茅場町」などはそのままの名前が付いていますし、「吉原(今の台東区千束四丁目あたり)」はもとは葦(アシ)の多く生える広大な湿地帯でした。
(アシは悪しに通じると言うことで、ヨシと呼ばれるようになったことは良く知られていますね。)
神奈川県でも昭和の初めまで各村々にそれぞれの萱場を持っていました。
丹沢の鍋割山の頂上一帯の旧茅場などは今でもその名残を見せています。鍋割山の頂上の広い草地は昔の地元の村の入会地(共有地)・茅場の名残で、今はここに登ってくる登山者に抜群の眺望を与えてくれています。
西日本では、京都の茅葺き材の提供地である琵琶湖湖畔のヨシ原が有名ですし、大阪では大阪府南部の岩湧山(いわわきさん)一帯に今でも茅場・萱場が残っています。
大都市の周辺には、その都市に住む多くの人たちの住宅や建物の屋根に使用する膨大なカヤを調達する生産場所が身近にたくさん用意されていた、ということです。
関東地方の各所にあった「茅場」は、今ではすっかりその姿を消してしまいました。
今では関東での茅の調達は、ススキは冨士の演習場一帯、ヨシは渡良瀬川遊水池周辺を中心に行なっているということです。
もっとも、渡良瀬遊水池自体は、足尾鉱毒事件の鉱毒対策で1903年に計画され出来たものですから、曰く付きと言えるかもしれませんね。
ラムサール条約で指定され鳥獣保護区にもなっていて、いかにも「自然がいっぱい」という感覚を持ちますが、今でも土中には(100年間に渡って蓄積された)銅などの重金属が多く含まれていると言います。
(当然、そこに生息する植物や棲家としている動物や魚たちにも何らかの障害・影響を与え続けてきた思われます…)
ヨシは水辺に生え、欧米ではウオーターリード(water reed)、またはたんにリード(reed)と呼ばれています。 ヨシは、屋根葺き材料としてススキよりも腐りにくいので珍重されますが、ススキより若干値段が高くなります。
東日本有数の葦(ヨシ)の一大産地であった宮城県石巻市北上町の北上川河口に広がる葦原は、先の東日本大震災で半分以上(一説ではそれ以上の被害?)が水没(地盤沈下と海水の流入による)してしまい、葦にとって大変な被害が出ました。
北上川の場合、自然被害で生産量が落ち込んだと言うことよりも、その後の(今でも続いている)福島第一原発の放射能漏れで、空(空中)と海(河口)からのダブル汚染で葦自体に蓄積されているかもしれない含有放射性物質の懸念の方が重大な心配事だろうと思います。
今でも、東北地方から茨城県の一部にかけては、除染対象になっている落ち葉や表土以外の、山で採れるキノコや山菜、渓流魚(イワナやヤマメだけでなくワカサギやサワガニなども)、獣たち(イノシシやシカ、ツキノワグマなど)も実際に計測してみると、(環境省が基準を大幅に緩和したにもかかわらず)今年も出荷出来るようなレベルに達していない高レベルの放射性物質が確認されています。
当然、当該地域ではそれらは出荷停止ですし、一部では採取することさえも禁止されています。
これは単純に考えてみると、そこに一緒に生えている草木や樹木だって同じ状況にあるのでは? という、至極当然な疑問に突き当たります。
震災で原子炉がメルトダウンした際には、東京の工事現場で使うコンクリートに入れる砂利や砂でさえ東北産(プラントに野積みしてあったものだけでなく)というだけで受け入れ拒否あるいは除染の対象になっていたのに、いつの間にか危険レベルを示す「基準」そのものが大幅に引き上げられ、その夜まで「危険・除染の必要あり」だったものが、次の朝には同じものが(基準値が変更になったという紙の上の話しだけで)「安全・全然問題なし」に変わってしまうとのはどう考えてもおかしなことです。
東北産の茅は本当に大丈夫なのか? 東北の木材は大丈夫なのか?
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少し真面目に、建築材料からみる環境問題の話し。
一般にいわれる茅葺き屋根の「茅(かや)」とはなんでしょうか?
茅または萱(かや)というのは、屋根を葺くのに用いる草本の総称で、特定の「この草」と決まっているわけではありません。
と言うよりも、その地方で取れる(入手し易い)屋根葺き材料の草をそう呼んでいるということです。
多くは、ススキ(薄、芒)、チガヤ、カリヤス、シマガヤ、スゲ(菅)、葦(ヨシ)などイネ科の植物で、広義では麦わら、稲わら等も含まれます。
日本全国でみると、ススキ(イネ科ススキ属)が使われることが多いのですが、全国各地方でさまざまな形質をもったその地方特有の「茅」が使われています。
また、同じススキひとつ取ってみても、育った環境で茅葺き屋根の葺き方がガラッと変わるくらい地方差があります。
そうしたその地方特有の茅材を使って葺いた屋根は、その地方の気象条件や風土、文化、歴史を反映した独自の茅葺き技法として発達してきました。
その結果、それぞれの地方に独特の形式と風格とを合わせもち、その土地ならではの土着性を持った茅葺き民家が伝承されることになったわけです。
昔は関東地方・東京にも多くの茅の生産地がありました。
たとえば「茅場町」などはそのままの名前が付いていますし、「吉原(今の台東区千束四丁目あたり)」はもとは葦(アシ)の多く生える広大な湿地帯でした。
(アシは悪しに通じると言うことで、ヨシと呼ばれるようになったことは良く知られていますね。)
神奈川県でも昭和の初めまで各村々にそれぞれの萱場を持っていました。
丹沢の鍋割山の頂上一帯の旧茅場などは今でもその名残を見せています。鍋割山の頂上の広い草地は昔の地元の村の入会地(共有地)・茅場の名残で、今はここに登ってくる登山者に抜群の眺望を与えてくれています。
西日本では、京都の茅葺き材の提供地である琵琶湖湖畔のヨシ原が有名ですし、大阪では大阪府南部の岩湧山(いわわきさん)一帯に今でも茅場・萱場が残っています。
大都市の周辺には、その都市に住む多くの人たちの住宅や建物の屋根に使用する膨大なカヤを調達する生産場所が身近にたくさん用意されていた、ということです。
関東地方の各所にあった「茅場」は、今ではすっかりその姿を消してしまいました。
今では関東での茅の調達は、ススキは冨士の演習場一帯、ヨシは渡良瀬川遊水池周辺を中心に行なっているということです。
もっとも、渡良瀬遊水池自体は、足尾鉱毒事件の鉱毒対策で1903年に計画され出来たものですから、曰く付きと言えるかもしれませんね。
ラムサール条約で指定され鳥獣保護区にもなっていて、いかにも「自然がいっぱい」という感覚を持ちますが、今でも土中には(100年間に渡って蓄積された)銅などの重金属が多く含まれていると言います。
(当然、そこに生息する植物や棲家としている動物や魚たちにも何らかの障害・影響を与え続けてきた思われます…)
ヨシは水辺に生え、欧米ではウオーターリード(water reed)、またはたんにリード(reed)と呼ばれています。 ヨシは、屋根葺き材料としてススキよりも腐りにくいので珍重されますが、ススキより若干値段が高くなります。
東日本有数の葦(ヨシ)の一大産地であった宮城県石巻市北上町の北上川河口に広がる葦原は、先の東日本大震災で半分以上(一説ではそれ以上の被害?)が水没(地盤沈下と海水の流入による)してしまい、葦にとって大変な被害が出ました。
北上川の場合、自然被害で生産量が落ち込んだと言うことよりも、その後の(今でも続いている)福島第一原発の放射能漏れで、空(空中)と海(河口)からのダブル汚染で葦自体に蓄積されているかもしれない含有放射性物質の懸念の方が重大な心配事だろうと思います。
今でも、東北地方から茨城県の一部にかけては、除染対象になっている落ち葉や表土以外の、山で採れるキノコや山菜、渓流魚(イワナやヤマメだけでなくワカサギやサワガニなども)、獣たち(イノシシやシカ、ツキノワグマなど)も実際に計測してみると、(環境省が基準を大幅に緩和したにもかかわらず)今年も出荷出来るようなレベルに達していない高レベルの放射性物質が確認されています。
当然、当該地域ではそれらは出荷停止ですし、一部では採取することさえも禁止されています。
これは単純に考えてみると、そこに一緒に生えている草木や樹木だって同じ状況にあるのでは? という、至極当然な疑問に突き当たります。
震災で原子炉がメルトダウンした際には、東京の工事現場で使うコンクリートに入れる砂利や砂でさえ東北産(プラントに野積みしてあったものだけでなく)というだけで受け入れ拒否あるいは除染の対象になっていたのに、いつの間にか危険レベルを示す「基準」そのものが大幅に引き上げられ、その夜まで「危険・除染の必要あり」だったものが、次の朝には同じものが(基準値が変更になったという紙の上の話しだけで)「安全・全然問題なし」に変わってしまうとのはどう考えてもおかしなことです。
東北産の茅は本当に大丈夫なのか? 東北の木材は大丈夫なのか?
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