寄沢で開花していたオニシバリの花(雄花) … 自然観察・WanderVogel2017/03/12

オニシバリの花
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丹沢の寄(やどりき)沢の河畔で、ジンチョウゲ科のオニシバリの花が咲いていました。

ジンチョウゲ科の木の樹皮はどれもとても強く粘りがあり、和紙やお札などの原料として昔から使われています。
これは、何も日本だけに限ったことではなく、中国南部からヒマラヤ地方(ネパールやインド北部)でも同様に、昔から紙の材料としてジンチョウゲ科は利用されてきています。

昨年12月に行ったネパールの2,000m以上の山の中でも、これと同じようなジンチョウゲ科の木が自生していました。
樹皮を剥ぎ取り、蒸して叩いて水に晒して簀の子で漉いて と、ほとんど日本の和紙制作と同じ工程でもって、ネパール和紙(ロクタペーパー)を作っています。
ネパールのロクティ:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2016/12/11/

和紙の材料としては、同じジンチョウゲ科の中でミツマタ(三椏)やガンピ(雁皮)などが有名ですが、このオニシバリもジンチョウゲ科ですので、この木の樹皮からも紙を漉くことは出来ます。
ちなみに、コウゾ(ヒメコウゾ:姫楮)はクワ科(雌雄同株、雌雄異花)ですので、同じく紙の原料といってもちょっと科が違いますね。ヒメコウゾは、丹沢や群馬・新潟の山中でもけっこう見かけます。

オニシバリは雌雄異株の落葉低木ですが、落葉する時期は冬ではなく夏なんです。ですからこの時期でも艶々した葉っぱが茂っています。
ミツマタなどはこの時期には完全に葉を落としていて、枯れた枝先に黄色いボンボリのような花だけを付けています。

ちなみに、ジンチョウゲは常緑ですので、いつも青々した葉を付けていますね。
また、日本で栽培されている庭木などのジンチョウゲは、そのほとんどが雄株だと言います。園芸用には挿し木で育てる方が効率が良いらしく、花の付きの早い雄株のほうが増える要因になっているとか。


オニシバリは周りの落葉高木が葉を落とし切った冬の間に葉を茂らせ、盛んに光合成をして一年分の養分を貯えます。
夏の間は鬱蒼として暗い森の中も、この冬の時期には林床まで陽がサンサンと降り注ぎます。
オニシバリは、秋に葉っぱを落とす周りの木々の中にあって、冬のあいだ太陽の光を独り占めして、「してやったり」とほくそ笑んでいるでしょうね。

逆に、ほとんどの木々や草が葉を茂らす夏の間は、すっかり葉を落として枝だけとなり、来るべき秋の新葉の展開に備えています。
夏に葉を落とすことから「なつぼうず」などと言う別名もあるくらいです。

花びらのように見えるものは、萼片(長く伸びた萼筒が先端付近で四裂したもの)にあたります。
萼筒の先端からは、黄色い花粉を付けた雄しべが顔を覗かせています。
オニシバリは雌雄異株ですので、この木は雄の木ということになりますね。

冬の間に葉と花を付けたオニシバリは、初夏の葉を落とす前の枝先に真っ赤な実をたくさん付けます。
葉の無い枝にたくさん付く赤い実は、薄暗い林床の中でもけっこう目立ちますが、この実には毒があるのだと言います。

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