恥ずかしがり屋の樹冠・熱帯雨林の神秘 … 海外の山歩き・WanderVogel2017/08/15

クラウン・シャイネス
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「クラウン・シャイネス」という言葉に出会ったのは何年前だろうか。

日本語では「深慮の樹冠」とか「譲り合う樹冠」とか「恥ずかしがり屋の樹冠」などと訳されていますが、高さ数十mにもなる高い樹木の樹冠同士が引き起こす現象を指しています。
植物はとにかくひたすら日の光を独り占めするため上へ上へと幹を伸ばし、延びた先で枝をパアっと広げて「樹冠」を作り出し、占有権を行使しようとする性質を持っています。
これは、成長し遺伝子を次へと引き継ぐため、光合成に頼る樹木が生き残るために身に付けた遺伝的な性質と言っても良いでしょう。
ですので、木々は他の樹木よりも一刻も早くより多くの日を浴びるために枝葉を広げたいと考えています。
日を遮られて光合成が出来なくなった植物に待っているのは、枯れて死を迎えることしかありません。

そんな厳しい自然の摂理の中にあって、この「クラウン・シャイネス」という現象はとても興味深い。

写真のようにここでは、上へ上へと延びた幹の先の樹冠がお互いに微妙な距離をおいて一定の隙間を形成しています。
まるで、互いが共存共栄を目指すかのように、遠慮し合って枝や葉を伸ばしているように感じます。
風で微妙に揺れる樹冠の動きに合わせて隙間は狭まったり広がったりして、互いのテリトリーを守っているようにも見えます。

こうして見ていると、熱帯雨林の森全体がひとつの生命体として成り立っているのではないか、とも思えてしまいます。

この現象はどのような森でも起こるのではなく、熱帯雨林、特にマレーシア半島やボルネオ島などに多く生えている(ラワンなどの)フタバガキ科の巨木の森に限って見られると言います。
同時期に育ったフタバガキ科の樹木が、50mほどの高さで樹冠を広げる時にこの現象を引き起こすのだそうです。


この熱帯雨林の森がこの地球上から姿を消してしまう前に、ぜひこの目で見てみたい。

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