ギンリョウソウ(銀竜草)と菌とゴキブリの関係 … 自然観察・WanderVogel2017/09/17

丹沢山中のギンリョウソウ
- -
三連休の中日、相変わらず台風18号の影響で雨が降り続いている。というよりは、これから明日・明後日に掛けてさらに風が強まり、雨も強く降り出すということなのだが、、、

というわけで外にも出掛けず、じっと自宅に引きこもっているというわけだ。
今日は、丹沢の山中でもよく見かけるギンリョウソウ(銀竜草)、別名:ユウレイソウの話。

先月末(8/26)net 時事通信社の記事で見られた人もいるのではないかと思うが、「森林にすむゴキブリが植物と共生し、種を運ぶのに一役買っていることを熊本大学の准教授らが発見した」と言うニュース、けっこう面白かった。
ギンリョウソウの実を食べるモリチャバネゴキブリの写真付きでニュース配信されていた。

ギンリョウソウは菌類(ベニタケ科の菌根菌)から栄養を供給されて生きているツツジ科(APGⅢ)シャクジョウソウ亜科の植物で、本州の低山の山中では割りと良く見られる腐生植物の中のひとつだ。
ギンリョウソウの身体が真っ白なのは、葉緑素を持っていないことによるが、自分で光合成は出来ないかわりに、地中の菌類から栄養を取得して生きている。

先日歩いた丹沢・雨山の山麓で、一輪だけだったが見ることが出来たのだが、これはまだ蕾みの状態(写真)だ。

ギンリュウソウは秋に花を咲かせ、翌年春~初夏にかけて1cmほどの果肉がある実をつける。ただ、その種子が散布される過程・仕組みについては詳しく分かっていなかった。
ギンリュウソウの花にも魅力的な蜜があるのかどうかは解らないが、花期にはマルハナバチなどが訪れ、受粉の役目を果たしているようだ。


記事では「熊本大学の杉浦准教授らは熊本市内の大学近くの林にカメラを設置し、肉眼と合わせ約2年間で200時間にわたり、ギンリョウソウを観察。鳥やネズミなどは実に興味を示さなかったが、関東以西の森林に生息するモリチャバネゴキブリが頻繁に果肉を食べていることを発見した。
ふんからは長さ約0.3ミリの種子が見つかり、ギンリョウソウが果肉を提供する代わりに、モリチャバネゴキブリが食べた種を散布する「相利共生関係」にあることを突き止めた。飛ぶことができる昆虫が、植物の種子を散布するケースが確認されたのは初という。
ギンリョウソウの実の成熟期は、モリチャバネゴキブリが羽化する時期と一致する。杉浦准教授は「種子を散布してもらえるように、進化してきたのでは」と話している。」とあった。

モリチャバネゴキブリは小型のチャバネゴキブリの仲間だが、家の中にいるお馴染み?のチャバネゴキブリとは違い、家に中では暮らせない。
また、寒い地方でモリチャバネゴキブリが生息出来るのかは解らないが、出来ないとすれば北では北の媒介する別のゴキブリ?がいるのかもしれない。

この地味でか弱そうなギンリュウソウが、山中のあちこちでよく見られるのにはそういう仕組みが出来上がっていたのか!、と またもや自然の進化の奥深さに感じ入ってしまった。
しかも、運良くモリチャバネゴキブリによって広範囲に種子を運ぶことが出来たとしても、生きていく条件(ベニタケ科の菌根菌がそこにあること)がたまたまその場所に揃っていなければ種を蒔くだけでは育つことは出来ない。

自然界ではこのように、樹木や草花と虫たち(ギンリュウソウの場合はプラス「菌類」ということになるのだが)が「専属契約」を結び、共に生きる姿というのをよく見かける。

お互いにとって、相手がこの世から消えてなくなってしまっては絶対に生きてはいかれない綱渡りのような「運命」を背負って進化を遂げてきたのだ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2017/09/17/8678527/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

アクセスカウンター