最近見る機会がめっきり減ったミノムシ … 自然観察・WanderVogel2017/09/21

ミノムシ
- -
最近、町なかだけでなく自然公園の中でもとんと見ることが減ってきたように感じるミノムシ。
写真のミノムシは「横浜自然観察の森」の経路脇に生えていた、ノブドウのツルにぶら下がっていた。

当然だけど、ミノムシの蓑(みの)の中にはミノガと呼ばれる「蛾」の幼虫が入っている

産卵し蓑(みの)の中でふ化した幼齢期のミノガの幼虫は、いったん蓑から出て周囲に散らばっていく(一齢幼虫の時に口から糸を出して、風に乗って拡散していくのだそうだ)が、たどり着いた先ですぐに木の葉や小枝を齧り取ってそれを材料にして自分の身体の周りに蓑を作っていくのだ。

幼虫は成長し脱皮するたびに、蓑のサイズを大きく作り変えていく。
ミノガの幼虫は、終齢までに7回も脱皮を繰り返すという。
その間、蓑を身体に付けた状態で、頭と手だけを上の穴から出して動き回り、近くの葉っぱを食べて回り成長していく。

秋に見られる大きめのサイズの蓑(みの)は、ミノガにとっては最終形の冬眠用のシェルターで、翌年春から夏にかけてサナギとなり成虫へと最終変態していくことになる。
ただし、来年この蓑から出て本来の?蛾の姿に羽化することが出来るのは「雄」だけで、雌の方は成虫になってもずっとこの蓑の中に籠もって暮らすのだという。
正確には、飛び回れる羽根も歩くための脚も持っていないので、蓑の中からは出ようにも出られないのだが。


蓑の下側には穴が空いていて、雄はそこから這い出て羽化して飛び立ち、雌のいる蓑を探して回るのだそうだ。
羽化した雄は雌の出す強力なフェロモン臭だけを頼りに、この地味で目立たないな蓑を探し当てるのだというのだから、彼らにとってどれだけものすごい(魅力的な)臭いなのだろうか! とっても興味のあるところだ。


蓑の中から出ることが出来ない雌とは、蓑の下に空けられた穴(雄が羽化する時に出て来た穴)を通しての交尾となるので、お互い顔を合わせることもなく交尾をし、雄は役目を終えて死んでいくのだそうだ。
交尾を終えた雄はその場でコロリと死んでしまうそうなのだが、雌のいる蓑に結局たどり着けない雄も多いようで、蛾の世界でも男女の出合いはそうそううまくは運ばないということだ。
まぁ、それでも、交尾に成功した(性交した)雄はミノガの中でも「勝ち組」と言うことになるのだろう。

雌のミノガにしてみても、陽当たりもよく快適で、丈夫な外殻と外敵の目から適度にカモフラージュされた一戸建ての蓑の中は、不自由さを感じると言うよりは快適さの方が勝っているのかもしれない。

そんな面倒なことをしながら種をつなげているミノガの仲間が、日本国内だけでも15~20種もいるというのだから、ここでもまた生命の進化の不思議を感ぜずにはいられない。

アクセスカウンター