設計者・現場監督の責任と職業倫理 … 第三者監理・建築設計/監理2017/09/28

建築定期講習
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建築士事務所に属する建築士の資格を持っている者に義務づけられている3年毎の定期講習。
ほぼ丸一日を要して行なわれる。

現在、どんなに高名な建築家でも新しく免許を受けた建築士たちと一緒に、この講習会を受けなければならないという決まりになっている。
建築士に対してそういう縛りを付けるのであれば、同じ「士」の免許・資格である医師や弁護士も同様に実施すべきだと思うのだが、関係団体の力が強いのだろう、不条理だが現状でもまだそういう状況にはなってはいない。
弁護士だって医者だって、倫理も常識のかけらもない者も中にはいると思うのだが、、、

この建築士定期講習の組立ては、大きく2本の柱で構成されている、と言って良いと思う。
1つ目は、この3年間で起きた建築関係の事故や社会情勢に関する事例紹介、そしてそれに起因して新しく追加されたあるいは変更された法律や法令の解説。
2つ目は、建築士あるいは建築士事務所としての法令の遵守・コンプライアンスに関する職業倫理の周知徹底。
もともと2つ目のことが原因(俗にいう姉歯事件)で始まったこの制度なので、定期講習では毎回この内容に多くの時間を割いている。


僕も、デザイン・設計作業の他に、第三者監理ということに力を入れて取り組んでいるので、この職業倫理については現場で言いたいことが山ほどある。

建築士が行なう業務は、国家資格を持って設計や工事監理を行なう以上、業務独占を賦与されていることになる。
業務として行なう設計や工事監理等において私法(民法や商法など)上の契約責任や不法行為責任とは別に、建築士法などの法令に規定する内容を遵守するという公法上の責任を負っている。
あえて専門的な責任うんぬんは別にしても、特に住宅の建築などでは、ごくごく一般的な(建築や施工の知識のまったく無い)人が建て主・契約者となるわけなので、建築士は設計や工事監理業務に当たり、専門的な技術的判断のもと、専門家としての高度な注意義務(民法で言うところの善管注意義務)を負っているはずなのだ。


でも、実際にはどうだろうか?
今抱えている第三者監理の現場でもそうなのだが、建築士の資格を関係者はみな持っていて、当然この建築士定期講習を同じように受けているにもかかわらず、法令違反(建築基準法違反)や手抜き工事が頻発し、施主に対する説明不足も重なり大変な混乱を引き起こすことが多々ある。

設計書上の仕様解説の不備、思慮が浅く不誠実な現場監督の投入に加え、施工を知らない施工者が作業を行ったことで起こった結果がそう言う事態を引き起こすのだが、最近こうしたどうしょうないゴタゴタが多い気がする。

その物件の場合、数ヶ月前から設計・施工側と施主側の双方が代理人(弁護士)を立ててやり取りをせざるを得ない状況に落ち入っている。
ただ、普通の弁護士は建築のことについて施主以上に素人なので、工事の混乱を納める有効な手立てを立てることは残念ながら出来ない。

弁護士には違約金や損害賠償金の交渉、引渡し延期に伴って発生する費用の負担などの金銭的な交渉、契約上の違約交渉などに専念してもらい、私の方は実際の建物の技術的な解決策の提示、第三者監理の検査で見つかった不良箇所の是正指示と確認など、工事の実質的な監理・監視業務を行なうことに専念するのが良いのだろう。

問題は、それをどううまくやらせるのかが、大きな問題なのだが、、、まぁ、それが手腕の見せ所ということだ。

住宅建設・施工品質の崩壊(建築専門誌より) … 建築監理・第三者監理2017/06/21

日経HB7月号
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定期購読している建築専門誌、日経ホームビルダー7月号の特集「迫り来る 施工品質の崩壊」

なんとも恐ろしいタイトルが付けられているが、住宅現場の実態を肌で触れている者としては、実体験として解る気がする。
記事の大半はトラブルの実例やハウスメーカー施工各社の品質管理に関する取組みなどの内容なのだが、根本的な話しをすれば、職人と現場監督のスキル不足ということに集約しそうだ。

職人にせよ現場監督にせよ一朝一夕で優秀な人材を生み出せる、作り出せるわけではなく、それには長い時間とコストがかかる。また、100人教育しても全員が人材確保につながるというわけではない。そのうちの何割かは脱落して行くし、何割かは一定のスキルにまで達しない者が出てくる。
そこで、多くのハウスメーカーでは、そういった職人レベルのスキル不足は容認して、スキルアップだけでなく「仕事のやり方」で解決しようと、やっきになっている。
そのひとつが、施工の単純化、標準化、マニュアル化だと言える。
あらかたの作業を職人や現場監督の介在する前の段階で、工場生産してしまおうということだ、簡単に言えば「職人のスキルアップ」ではなく、「素人でも建てられるようにする」ということなのだろう。
しかし、「建物」特に住宅の建設では、不測の事態や現場で判断しなければ納まらない事柄というのが、頻繁に起きてくるものだ。
分厚い施工マニュアルをいくら作ろうが、それに記載されていない状況が現場ではたくさん発生する。

今まで、施主からの第三者監理で検査・監理をして来て感じるのだが、工場加工・生産された部材の間違いや食い違いというのはそれほど多くはない。
是正指摘に結びつくような不良施工のほとんどは、現場施工で造られたものに集約されている。つまり、基礎工事、断熱工事、防水工事など、現場作業で組み上げていく工事ということになる。
その施工不良の原因のほとんどは「段取りの悪さ」だと感じる。
いくら素人同然の「職人さん」でも造れるとはいっても、段取りについては施工マニュアルには書かれていない。マニュアルや施工仕様書に書かれているものは完成形の姿だけなので、ぱっと見、それ風に出来ているような感じもしたりするが、良く見ると施工の順序がぜんぜん違っていて、完全に不良施工になっているケースというのも多く見てきた。

是正指摘をしても、根本的な施工の意味を理解していないので、何が間違っていて、何をどう直せば良いのかが解らない。といった状況も頻繁に起きている。
これは職人にも現場監督にも言える。
監督がいちいち指示を出さないと現場が正常に納まらない、というのも著しく危機感を感じるが、監督自身が間違いに気付かないというのもお粗末なものだ。

特集されている「迫り来る 施工品質の崩壊」の根本原因は、(住宅本体の)物質的な話しではなく、人的なスキルの崩壊、ということなのかもしれない。

日本の住宅の全てがそうではないが、ある一定の割合で今でも不良住宅は建てられ続けているのが実態だ。

不愉快な工務店・建て主の本音 とは … 建築監理・第三者監理2017/05/19

建築専門誌の記事
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建築雑誌(専門誌)に日経ホームビルダーという月刊誌があります。
この書籍、一般の書店には並んではいませんが、毎号けっこうタイムリーな話題を届けてくれます。

今月号は写真のように、「建て主の本音」という特集になっています。
紙面内に「建設途中に不愉快な経験はありますか?」という問いに対し、ハウスメーカーに依頼した人で約65%、工務店に依頼した人で70%弱の割合で「ある」という回答が示されています。
どういう形式で質問を投げかけたのか、によって答え方は違ってはくると思いますが、私の正直な第一印象は「意外に多いな」というものでした。

トラブルの原因はそれこそ種々あってその程度も様々なのですが、一番多いトラブルの根本的な原因はというと、お互いのコミュニケーション不足によるボタンの掛け違いが最終的に大きな不信感を生み出す結果となっている。ということのようですが、そりゃそうだ。

私が関わる第三者監理でも、その対応自体というよりは受け答えの仕方・伝え方のマズさから、施主と工務店との間に抜き差しならない深い溝を作ってしまった、ということがありました。

第三者監理/検査では、施工不良箇所を見つけると、単純にそこだけの是正指示を出すのではなく、なぜ改善の必要があるのか、何が問題なのかを明確にし、施工会社が納得したところで是正工事に入るわけだが、不良で一番多いのはやはり単純な技術的ミスが多い。なのでなおさら、なぜダメなのかをきちんと正して行かないと同じような施工間違いが今後いくつも起こる可能性が出てくる。

ただ、その際の施工側の言い分や説明、受け答えがあまりに言い訳じみていて、いい加減なものだと「建物全体の施工に対する不信感」につながり、ひいては「施工会社自体への不信感」へと気持ちが動いてしまうものなのです。

で、そのうちに、言った言わないの堂々巡りとなり、本来良好であるべき「施主と施工者」の関係性が一気に崩壊してしまうことになってしまう。

施工者の中には、個々の施工ミスは認めるものの、「非」を認めたがらない担当者、会社もあるので、その場合は少々厄介なことになります。
場合によって施主側、施工者側がお互いに弁護士を立てての話し合いに発展することになります。
そうなると解決(実際には解決はしないのですが)まで時間が掛かってしまい、結果的には施主にとって(建物自体にとっても)あまり良い結果を生まないのですよ。

出来るだけそうならないように、うまくもっていきたいのですが、残念ながら弁護士同士の話し合いにまで発展するケースが今年に入ってからも2件発生し、私も対応に苦慮しているところです。

木造住宅・準耐火検査のための現場資料 … 建築監理・第三者監理2017/05/11

準耐火建築物の検査資料
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木造住宅の準耐火建築の仕様には、(国交省)告示に書かれている条文規定の他にも、各建材メーカーがそれぞれ国交相から取得している「認定」制度というのがあります。

しかし、その告示にせよ認定にせよ、準耐火建築を成立させるための「根本的な防・耐火基準」というものをきちんと理解した上で使わないとまったく意味が無いのは言うまでもありません。

一口に木造の「準耐火仕様」といっても、実際にはその造り方には多くの選択肢があります。
設計者はその多くの仕様基準のうちの何を選択して「準耐火建築物」を造り上げるのか、を施工者側に正確に示すために「準耐火仕様リスト」という図面を作成します。
その「準耐火仕様リスト」を元に、施工者(現場監督や現場の大工さん)は住宅を造っていきます。
また、「準耐火仕様」は「構造」と同じように確認申請時に確認機関に提出するものですので、工事の途中で勝手に変更したり、アレンジをしたりしてはいけない性質のものです。

もちろん「準耐火仕様リスト」は、検査をする側(第三者監理者)も同様のものを入手し、検査員はそれを元にして検査・確認をしていく、というのが基本的な流れとなります。


告示基準や認定書に記載されている「仕様・工法」というものは、基本的には施工者側が都合良くアレンジなどをしてはいけないものです。
「準耐火建築物」としての大きなくくりを押えつつ、告示や認定の基準通りに造っていかないと、準耐火仕様は破綻してしまいます。
熟練した、経験豊かな現場監督・大工さんであればそのへんのコツをきちんと押えて造るのでしょうが、馴れていない大工さんでは単純な間違いや工事の手戻りなどが起きやすい、というのがこの「防・耐火仕様」と言えます。

重要なのは、防火・耐火のキモである強化PBや断熱材の施工そのものにあるのではなく、それらを取付けるための「下地の作り方」が一番大切な要素となります。
その施工手順や重要性をきちんと理解をしていないと、結果的にチグハグはものが出来上がってしまいます。

もうひとつやっかいなのは、その各メーカーの出す「認定書」というものは、その中に「準耐火施工手順」の全てが書かれているわけではないということです。
工事監理者も現場監督もまた実際に手を動かす大工さんたちも、その指定された「認定書」の施工手順を間違いなく理解して施工を進めていかなければいけません。
認定書に書かれていないことや、不明瞭な点は直接メーカーとやり取りをして、最終的には申請検査機関の「主事」に確認を取るなどして正確さを担保していくことが重要です。


昨日書いた住宅の施工違反については、第一義的には現場監督と大工さんの準耐火仕様に対する知識不足・経験不足から発生した「広範囲に渡る不具合、施工不良」ということですが、実はもっと深い問題点として、施工会社自体が「認定書」の内容を読み間違えていた、ということが言えるのではないか。
そのため、結果的に(たぶん、過去にも多くの)建築基準法違反の住宅を作り出す結果になっている、と私は推測しています。

昨日も書いたように、木造住宅の防・耐火仕様には、「防火構造仕様」「省令準耐火仕様」「準耐火建築物」「耐火建築物」というカテゴリーがあります。
そのうちの「準耐火建築物」に関しても、イ-1、イ-2、ロ-1、ロ-2 というように4つの仕様・タイプに分かれていますので、それぞれその中身をきちんと頭の中で分けて理解しておかないと勘違いしやすいものです。


基礎の配筋検査や木造の構造検査は行なわれますが、この防耐火施工検査というのは私たちのような「第三者監理・検査」が入らなければ検査無しでスルーしてしまうものです。
そして、工事が進んで行きPBなどが張られ、その上からクロスが貼られてしまうと重大な違反があったとしても、まったく解らないということになります。

今回、検査で見つかったような「重大な施工違反」も、そのままあと1週間もするとまったく気付かれずに、また是正をすることも出来ずに、結果的に建築基準法違反の不良住宅になってしまうところでした。

木造住宅の準耐火仕様違反について … 建築監理・第三者監理2017/05/10

準耐火仕様違反の住宅
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一般的な規模の木造住宅でも、都市部に建てられるものには、より高い防耐火性能が求められる「準耐火建築物」や「耐火建築物」という仕様を要求されることがめずらしくなくなっています。

特に、木造3階建てともなると「準耐火仕様」というのが常識化してきています。
木造住宅の防耐火仕様に関して言うと、「防火構造仕様」「省令準耐火仕様」「準耐火建築物」「耐火建築物」というカテゴリーがあります。
それぞれにその位置付けや防耐火施工要領などが細かく建築法規(告示・認定)等で定められています。

今、私の行なっている第三者検査の物件の中で、とても大きな問題を抱えている物件があります。
木造3階建ての「準耐火(イ-2)」仕様で建設が始まった住宅なのですが、基礎工事から建て方工事までの間でもいろいろと問題はあったのですが、今抱えている最大の問題はこの「準耐火仕様」による施工に関してです。

最初の問題発覚は、検査を行なっている段階で感じた「もしかしてこの大工さんは、準耐火仕様の住宅を今まで造ったことがないのではないか?」という私の疑念からでした。
なぜなら、準耐火仕様では絶対必要となる下地の施工等が工事が進んでいってもまったく施工されていなかったからです。
それが「1カ所、2カ所、施工し忘れた」、というようなレベルではなく(まぁ、それもあってはいけないことですが)、まったく、ぜんぜん施工されていないのです。
設計図面でもそのあたりの重要な仕様書(準耐火仕様リスト)が整備されていなかった、という点も問題を起こしやすい原因だったと思います。
この点に関しては、私も相当早い段階から、図面での指示がしっかり出来るように「準耐火仕様リスト」をきちんと作成して現場に周知徹底するように、と何度も進言していたのですがダメでした。


しかもこの住宅会社には、施主からの第三者監理である私の事務所以外に、施工会社が依頼している「第三者検査機構」の検査員が事前に何度か検査をしているのです。
にもかかわらず、施工の間違いや施工忘れが最後まで正されることはなく、結果的に建築基準法違反になってしまう住宅の施工が続けられていました。
私は、施工会社から依頼された「第三者検査会社」は最初からあまり信用していませんので、べつに驚きもしませんが、、今回はちょっとひど過ぎました。
もう少し真剣に、というか、施工の先々を見越した検査をしてくれないと、検査員・検査会社としての役割を果たしていないと思うけどなぁ。
私とは直接契約関係にない施工会社・検査機関なので、私が強制したり指導したりすることが出来ないのが、悔しい。


そういうことが重なり、急遽、施工会社・設計事務所・第三者検査機構ら関係者を集め、法律上・法規上の解釈や準耐火仕様の正しい施工要領などをめぐって、早朝から深夜までカンカンガクガクやり合ったところ、問題の根元が現場の大工さんだけにあるのではなく、現場監督や工事監理者を含む施工者側にあったことが解ってきました。
ということは?、この会社が今まで造ってきた住宅の中にも少なからず深刻な建築基準法違反の疑いがある物件がある、ということなのか?

このことは、(住宅や建築の業界だけでなく)実は社会的にも大変大きな問題をはらんでいて、軽々にここに詳細を書くわけにはいきません。
問題がある程度解決に向かってから、後日整理して追記を書くことにいたします。
(そういうわけで、写真も少しボカシを入れてます。)

ローコストだから欠陥住宅?ってことはないのだが … 建築監理・第三者監理2017/03/15

サンプル写真
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今日(2017年3月15日)の文春オンラインで流れていたニュースのなかで、とても気になる記事がありました。

「ローコスト住宅のハウスメーカー「秀光ビルド」の物件に、建築基準法違反など“欠陥住宅”が続出している」というものです。

「秀光ビルドは1991年に石川県で創業し、北陸から関西、中部、東北へとシェアを拡大。現在までに手掛けた住宅は全国に1万戸弱ある。」ということでしたが、関東地方ではまだそれほど進出してきていないのか、私は監理や施工調査を依頼されたことはまだありません。

記事の中ではさらに、「中堅ハウスメーカーの営業マンが明かす。」として、「秀光ビルドは一棟1000万円を切るようなローコスト住宅が売りですが、現場監督は常に一人で10件程度の案件を抱えて疲弊している。そのうえ、単価が安いため腕のいい大工が確保できずにトラブルが頻発している。施主が支店に怒鳴り込むことも多く、会社側は訴訟になる前に補償金を支払い、クレームを抑えている」などと書かれていますが、、、

前半部分はどの格安住宅メーカー(パワービルダー)もほぼ同じ条件でしょう。
後半部分は、請負金額が低く設定されていれば、腕の良い大工を雇えないのはある意味しょうがないことです。
ローコストであるには、それなりのちゃんとした理由があるのですから。

ですが、腕の良い大工を雇えない=欠陥住宅が出来る、ということは必ずしも言えません。

なぜならば、今のハウスメーカー系の木造住宅の施工現場では、実際に大工さんが腕を振るえるような場面などそうそう無い、と言えるからです。

大工さんの仕事である「木工事」に関して言えば、工場で木材をカットして、組立て順に番号を付けられた部材(プレカット材)をトラックで現場に運び込み、現場で梱包を剥がして、順番通りに組立てていく、という作業が主になってしまっている今の工法では、大工さんの腕の善し悪しはあまり考慮されていません。
裏を返せば、少し訓練を受けた若手の大工さんなら、そつ無く組立ててしまえるのです。
工法自体がそういう風に出来ているからです。


一昔前の大工さん、職人さんの中には、「あの人は、口も態度も悪いのだが、仕事は出来るねぇ!」なんて人も居たのかもしれませんが、今は「口や態度が悪い大工は、絶対に良い仕事は出来ない!」と言えるでしょう。

「腕」に差を求めないとするならば、今のハウスメーカー系の大工さんに求められている素質は、きれい好きで時間を守れて、細かいことにもよく気が付き、他の職方とトラブルを起こさず、むしろ調整役をこなせるようなオールマイティーな職人、ということになります。

ですので、そういう意味での大工さんのランク付け、というのは確かにあります。


その一方で、態度も性格も悪く、怠け癖の付いた無精な職人、というのは現実にはいますし、まったく訓練を受けていない職人(風)のアルバイトが大事な仕事をしている、なんてこともあります。
そういう職人が手がけた現場の検査をしたことが過去ありますが、1カ所・2カ所といった間違いではなく、ほとんど全ての仕事が汚くていい加減で、全てに渡って不適格な施工でした。
本来、そういうものづくりに不適な人が現場に入ってこないように、きちんと現場を管理するのも現場監督の大切な職責なのです。それがコントロール出来ていないと、知らず知らずに不良住宅・欠陥住宅を造ってしまう原因となってしまいます。

現場監督が現場にいないのは、今ではすでに常態化・常識化していますので、それをハウスメーカーに求めても仕方ありません。

であるからこそ、施主自らあるいは施主の目で検査をする第三者監理者による検査体制が今の建設現場には不可欠なんです。

住宅建設で直面する目に見えない不安や憤り … 住宅建築施工・第三者監理2017/02/09

土曜日の象の鼻パーク
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今日は朝から気温が下がったまま日中もほとんど上がらず、横浜ではお昼近くからは冷たい霧雨が降り続きました。
雪にならなかったのは幸いですが、いつ雪に変わってもおかしくないくらいの寒さです。

週間天気予報が今週始めに出された時、週の半ばでの降雪予報があったので、今日は今抱えているどの現場も工事を行なわないか作業を縮小するかしています。
午前中は各現場の監督や施主へのメール送受信で忙しかったのですが、午後になって少し時間に余裕ができました。

建設工事の第三者監理という仕事では、時として 思いもよらない事態や困惑する場面に直面することがあります。
昨日もある現場でそうしたことが持ち上がり、今 情報の収集と対応策のやり取りしているところです。
第三者監理の業務範囲は、単に「施工不良を防ぐ」とか「より質の高い施工をしてもらう」といった目に見える事柄だけに留まらないと考えています。


施工トラブルを含め現在進行している業務の内容について、ここに詳細を書くことは出来ませんが、施主を精神的に疲れさせる「悩みや心配事」の種は、建設業者のルーズさや担当者の人間性の問題、現場作業員の作業姿勢や無神経な行いなど、施工(ハード)以外のソフトな面にも潜んでいるものなのです。

そういった施工以外のトラブルに対しても、ひとつひとつ絡まった糸をほぐしていくように、正常な状態に戻していくのも第三者監理の仕事でもあるのかな、と思ってやっていますが、今抱えている案件のうちでも複数そういった性質のものが含まれています。

現在施工が進められている現場でもありますし、竣工直後という状態ののもの、あるいはすでに引渡しをして数年を経過しているというものもあります。
それぞれ不良施工の内容や施主の悩み、心配事は違ってはいますが、みな抜き差しならない状況にあることは共通しています。
案件の中には、交渉と是正工事を繰り返し少しずつ良くなっていっているものもありますし、調査と分析に2年以上掛かっていて、今最後の交渉中というのもありますが、まだ明快な解決策が見えず「霧の中」状態というのもあります。

それでも、ひとつひとつ丁寧に論理的にかつ気長に問題点と向き合い、しっかりした調査と相手との交渉を重ねて行けば、出口は見えてくるものです。(と、信じたい。)

事務所のHP内にも、「技術的な検査/監理だけに留まらず、「住宅を造る」ことの楽しさを共有し、施主に寄り添う心強い「ガイド役」となるような存在を目指します」なんて書いていることですし、なにより、解決出来ない「悩み」など世の中にそうは多くはないだろう、と信じてもいますから、、、


写真は、早く暖かくなりますようにと願いを込めて、先週土曜日の横浜みなとみらい・象の鼻パークの様子を貼っておきます。

木造駅舎・東急池上線 戸越銀座駅 … 建築・街歩き2017/02/07

戸越銀座駅
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昨年暮れ12月にリニューアルした東急池上線の戸越銀座駅のホーム。

よくTVなどでも取り上げられることの多い「戸越銀座商店街」、その最寄り駅にあたるのがこの「戸越公園駅」ですよ。

1927(昭和2)年の開業以来 90年ぶりのリニューアルだということと、木造で新しく造られたホーム屋根というのが東京では珍しい、ということで建築関連のニュースでもけっこう取り上げられていました。
東京の多摩地区で産出された「多摩産」材にこだわって、その木板を格子状に折曲げるように組み合わせてデザインされた屋根が特徴で、ついでに壁もベンチも木製というわけです。
東京都の「森林・林業再生基盤づくり交付金」事業の補助金を受けて実施されたもので、これも都内の鉄道施設としては初の事例なのだそうです。

新しくデザインされた木製の駅舎というくくりで言えば特筆して「珍しい」というものではないのだろうだが、首都圏では余りお目にかかれないので、これからこういった温かみのある素材を使った公共デザインが多くなるとギスギスした世の中も少しは「やわらぎ」を感じられるのではないか、と思ったりする。

でも、こういった試みは出来上がってみれば何てことなく見えるのだが、実際にかたちになるまでは大変なやり取りがあったのだろうなぁ、などと変な勘繰りをしてしまいます。特に交付金などの補助金がらみだと、余計な面倒が多そうで、、、などと要らぬことにまで気を回してしまいます。

それはさておき、今日のような快晴の陽の中で見ると、なんだかホーム全体が輝いて見えたなぁ。

一昨年の地震の被害・ナグタリ村のゴンパ … Nepal Trekking・WanderVogel2016/12/09

ナグタリ村の倒壊したゴンパ
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一昨年のネパール地震で大きな被害のあったランタン一帯(Langtang Valley)ですが、川(Bhote Koshi River)を挟んだ西側の山麓一帯でもやはりかなりの被害が出ていたようでした。
そこはthamag(タマン族)の人々が暮らす、独特の文化の残っている地域(Tamang Heritage Area)で、事前の情報では地震の被害が比較的小さかったエリア、と聴いていたのですが、実際に歩いてみるとそうでもありませんでした。

エリア内のいろいろな村を巡りながら歩いていると、目に付く家屋で被害の無かったものは皆無で、ほぼ全ての民家の屋根が倒壊・崩落していました。
地震から1年半以上が経った現在でも、応急修理がなされているものはそのうちの約半数程度、というのが印象です。
しかも、伝統的な屋根(スレート石屋根や板葺き屋根)での修復はまったく見られず、波形トタン板による応急修理がほとんどです。

この地域の民家の建て方には2つのパターンがあって、木造(柱梁工法)で造られているものと、石積みの壁に木造の床や屋根を載せたものがあります。
また、細かい彫刻を施した飾り窓や柱頭飾りなども、この村の独特の建築文化を象徴しています。

木造の場合は、屋根も「くれ板葺き」で造られ、葺いてある木の板が飛ばないように、上に石が載せられています。日本の昔の民家に良く似ています。
石積みの壁の上に木造の梁・垂木で屋根下地を組んだ民家の場合は、薄く裂かれたスレート石で屋根が葺かれているものが多く見られます。これも石の産地を持つ地方の日本の民家でも見られる手法です。
いずれにしても、みな地元で容易に手に入る素材で造られています。

村のあちこちには応急修理さえままならず、打ち捨てられている家屋も多く見られ、大切な村のゴンパ(チベット仏教の僧院)でさえ未だに手が付けられずに仏像が野ざらしの状態にあったりしています。

この辺りの村は、古くはチベット・中国との交易で栄えた地域だったと言います(Bhote Koshi川沿いの道を遡ると、チベットはすぐそこです)が、新しく観光産業(トレッキング)にも力を入れ始めた矢先のあの大地震です。目玉である静かな村の装いや伝統的な村の佇まい、建築文化、といったものが失われてしまったというのは何としても残念なことです。

とは言え、こうした村々では、まずは倒壊した宿泊施設(ロッジや山小屋レベルのものではありますが)の修復や新築をする姿も多く見られました。

独特の佇まいを見せていた村のイメージは少し失われてしまいましたが、ナグタリ(Nagthali)村から見る壮大なヒマラヤの山々の姿は昔も今も変わりません。

北鎌倉・明月荘が全焼・焼失してしまいました … 建築・文化財保全/HM2015/03/24

北鎌倉・明月荘
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昨日は朝から建築士会関係者や横浜ヘリテージマネージャー(邸園(歴史的建造物)保全活用推進員)の関係者たちから、続々とメールが飛び込んできました。
北鎌倉の明月谷戸に建つ明月荘が22日の午前3時ころに出火し、主屋と隣接するお茶室の全てを焼失してしまったというなんとも衝撃的な知らせでした。

昨日は朝のうちにデスクワークをして、その後山上の畑に出ていましたので朝のニュースを見る時間が無くて、明月荘全焼の知らせを仲間内のメールではじめて知ったというわけです。
夕方戻ってきて、ニュースやネットなどで詳しく確認してみて、何となく全体像が解ってきました。

この「明月荘」を会場にして、内田 祥哉(よしちか)先生を迎えての講演会が催されたので、私も昨年11月に訪れたばかりでした。
写真はその講演会の時の参加者同士が明月荘の庭でくつろぐ様子を写したものですが、焼けてしまった今では、この姿を再び見る機会は永遠に失われてしまったことになります。
(この写真の右手側にお茶室が建てられているのですが、火はそちらへも延焼し、施設のすべてが焼け落ちたそうです。)


出火の原因は解っていませんが、午前3時に出火したこと、直前に警報装置が作動していることなどを考えると放火の可能性が大きいでしょう。
実際に、神奈川県(全国でもそうでしょうが)の木造文化財の放火による焼失はけっこうな棟数にのぼります。
有名なところでは、藤沢市に建っていた昭和初期の洋館「旧モーガン邸」、戸塚区に建っていた「旧住友家俣野別邸」、つい最近では、私の住んでいる金沢八景近くの富岡というところに建っていた「旧川合玉堂別邸」が一昨年の暮れにやはり放火により全焼・焼失しています。

同じいたずらでも破壊や落書きでしたら(これも許されることではありませんが…)修復も効きますが、焼失してしまったものは絶対に二度と元には戻りません。

火災というのは、木造建築の最大の弱点であり、究極の破壊方法だと言えるでしょう。
家屋だけでなく付随する調度品から備品まで、全てが一瞬で灰になってしまうのです。
その意味からも、「放火」という行為は木造の文化財破壊の中でももっとも許されざる破壊行為と言えるのです。

ですから重要文化財級の木造建築を維持管理・利活用している方々は特に「火」には神経を使っています。いざという時が来ないよう日頃からいろいろ注意を払い、方策をとっているわけです。

また、明月荘の保存管理については、神奈川県(都市整備課)と一緒になって専門的な補修/利活用を手助けしている「神奈川まちづかい塾」のメンバーらが中心となり、さまざま修復プログラムを模索していました。
やっと昨年、修復作業に向けたプログラムを作った矢先の出来事だったので、メンバーの落胆ぶりは想像以上だと思います。
怒りを感じるというよりは、みんな何とも言いようのない失望感と脱力感に包まれていることと思います。
重要な文化財の焼失という言いようのない無念さに加えて、それを保存修復し利活用を推進してきた方々の焦燥感を思うと何とも言いようもありません。


保存・修復・利活用と一口に言っても、県の修復/維持管理の予算組みの中ではとてもやりきれるものではなく、森林ボランティアなどと同様に市井の人たちの協力や努力、知恵に期待するところが大きいのが実情です。

「神奈川まちづかい塾」をはじめ、様々な団体の方々が以前から建物の清掃や広大な庭や山林の整備を行なってきました。そして、木造建築文化財の専門的なことがらだけでなく、昔の鎌倉谷戸の生活・文化などについての情報発信にも尽力してきました。

今年は年初からこの神奈川まちづかい塾主催による、修復ボランティアを広く募集して、この建物のことを周知させることも含めた「修復ワークショップ」を始めたばかりでした。

とりあえず傷みの目立つ明月荘玄関周りを修復しようと、今年の1月・2月で一部土壁や基礎の解体と新たな軸組補修を行なっていました。
そしてこの4月から5月にかけては、土壁の下地組み(竹小舞)ワークショップと土塗り(荒塗り)ワークショップが始まる予定で、ワークショップのボランティア募集もすでにかけていました。

でも、22日の早朝でそれらのこと全てが水泡に帰してしまいました。
現段階では放火によるものとの結論が出たわけではありませんが、いずれにせよ、まったくもって残念・無念でなりません。

明月荘・木造建築/和小屋の知恵:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2014/11/08/
横浜山手の洋風住宅の修復見学会:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2014/03/29/

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