コクサギの弾ける寸前の果実・種子 … 自然観察・WanderVogel2018/01/11

コクサギの果実
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自宅近くの上郷の森でたくさん見られるコクサギの実。

コクサギは雌雄異株の木で、この時期、雌木の枝にはたくさんの特徴的な形をした果実(実)が見られる。
花の姿は本当に地味で注意して見ないと見過ごしてしまうのだが、果実になるとひときわ目立って存在感を発揮する。
4つあるいは3つの分化した果実が(写真のように)まとまって付いているので、かなり特徴的な姿に写る。

また、葉が落ちて枯れ枝のようになってしまっているコクサギだが、冬芽を目で追って行くとちゃんと「コクサギ葉序」が確認出来るのも面白い。


コクサギの分化した果実一つ一つには丸い種子がひとつずつ入っている。写真手前に割れた外果皮の奥に顔を覗かせている茶色い玉がコクサギの種子。
丸い種子の下には内果皮と呼ばれる硬い殻が折り畳まれた状態で収納されていて、時期が来る(乾燥状態が進むと)とそれがバネのように種子を弾いて、種を遠くに飛ばす仕組みになっている。

枯葉一枚でも持って帰ってはいけない!と、神経質過ぎるほど言われている「横浜自然観察の森」内では種子を採って帰って観察するなんてことは到底出来ないが、以前に丹沢での森林作業中に見つけたコクサギの果実をいくつか自宅に持って帰って観察をしたことがあるのだが、乾燥によってパチンッと弾け飛び、予想以上の大きな音と勢いに驚かされたことがある。
ものの本によると、9m以上も遠くに弾き飛ばす力があると書かれていた。


植物たちは様々な手法を駆使しながら自分の分身・子孫を広範囲にばらまく「技」を身に付けて進化してきた。
その手法をみてみると、風や水、動物や昆虫といった「協力者」に頼るものがけっこう多いのだが、コクサギは自分の力で種子を遠くに弾き飛ばすという種子散布方式を身に付けたのである。
同じような「自力噴出散布」といった種子散布手法をとるものには、カラスノエンドウやゲンノショウコ、ムラサキケマン、ツリフネソウ、ホウセンカなどがある。

植物たちがそれぞれの進化の過程の中で、なぜ?その種子散布方式を選んだのか?を考えてみるだけでも自然観察は一層興味深いものになり、植物進化の不思議、生命の神秘の一面が垣間みれる。

そういう目で森の中を歩いてみると、森は大きなワンダーランドに見えてくる。

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