ネパールヒマラヤ・Phuへの旅/記録 4 … 海外・WanderVogel2021/07/27

phu近くのthorten群
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写真:Kyang村からPhu村への途中の道端に建てられたChorten群、2018年12月

石を積んだだけの小さなバッティの囲炉裏端で粗末な食事を取ったあと、僕とガイド、ポーターの3人はKyang村を後にした。
渓谷左岸の垂直に切り立った岩壁を、ヤク1頭がやっと歩ける幅と高さにくり抜いて作られた道をひたすら進む。
この3日間、バッティで出会う村人の他には道端で出会う人も皆無で、無人の荒野を3人で黙々と歩いている。

周りは圧倒的な景色で、とにかくすごい光景が広がっている! 赤みがかった土色の山々と群青色の空。
水の音もしない、風の音もしない、静寂の中、3人の足音だけが聴こえる。
Phu川岸の切り立った岩肌や急斜面をトラバースして付けられた細く危なげな路を無言で歩いていく。

岩山ばかりで放牧地としてはまとまった広さの場所が取れないからだろう、荒れた台地の狭いテラスのひとつひとつをていねいに無駄無くカルカとして使っている。川の対岸にはヤクの道らしき踏み跡がたくさん付けられているのが見える。


しばらく歩くと、Phu川とLoha kholaの分岐点に行き当たる。そこを通過すると、いったん河原付近まで下って行く。このあたり、Phu川にいくつかのの小さな木橋が架けられていて、冬期間、積雪で左岸沿いの道が閉ざされた場合、右岸の河原沿いの道を交互に使えるように両岸に踏み跡が付けられているのが見てとれる。

すでに標高は4,000mを越えている。水分補給を意識しながら休憩を挟みながらゆっくり進む。
登りの一歩一歩が息切れしだしてきた。

前方に美しい大型のチョルテン群が見えてきた。(写真)
鮮やかな彩色が残る古いチョルテンがいくつも建てられているので、ひとつひとつつぶさに見て回ろう。
よく見るとチョルテンの須弥座壁面には仏像や素朴でコミカルな動物模様のレリーフが付けられているのが解る。しかし、レリーフも屋根も塔身部分も風雨による損傷が大きい。管理や修復の手が行き届かないのだろうが、この環境と定住人の少なさを見るとそれもうなずける。

意識して周りを見回してみると、なかば崩れ土に帰ろうしているチョルテン群がいくつか見られる。
道に点在する無数のマニ石たち。ひとつひとつには経文が梵字でていねいに掘り込まれている。

それにしても、この荒涼とした世界と神秘的なチョルテンとの対比はどうだ!
なぜにこんなにも厳しく絶望的な地をチベット族はあえて選ぶのだろう? と不思議な気持ちになる。

世界中にあるさまざまな宗教の建造物や造形物のなかでも、チベット仏教のそれは群を抜いて特異なものだと感じてしまう。

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