山の自然素材を使って作るアート(ブナ) … Nature Art・Workshop2021/08/02

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ブナ・山毛欅・椈
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ブナ:ブナ科ブナ属の落葉広葉樹
新葉は銀色に輝く細かな柔らかい毛で覆われ、春の芽吹きはなんとも可憐で美しい。新葉の展開と同時に開花する。
秋には綺麗に「黄葉」「紅葉」するので、その姿も見どころ。殻斗の中には2個の堅果が入っていて、種子散布方式は殼斗ごと地面に落とし野生動物に食べられるとともに一部を運んでもらう方式だ。冬芽にも特徴があって、細長いきれいなライフル弾型(披針形/ひしんけい)をしている。
良く似たイヌブナはブナよりも低い標高で見られるが、殼斗も小さく果実も小振りだ。

ブナの実はソバの実に似るため「そば栗」とも呼ばれる。
毎年、大量の実を落とすブナだが、地面に落ちたブナの実は山に棲む野生動物(ツキノワグマ、ネズミ、リス、ムササビなど)の貴重な食料になり、その場であらかた食べられてしまう。
そこで、ブナは数年に一度、大豊作の年を作るようにDNAにプログラムされているのだ。そして野生動物の食べる量を大幅に上回る数の果実を作り地面に落とす。そのようにしてブナは子孫を残すチャンスを広げているのだ。実に賢く涙ぐましい生存戦略だ。それほど気を使って種子をバラまいても自然界ではなかなか実生が育たないという厳しい現実もあり、人生同様に樹生もそうなかなかうまくは行かないということだな。

令和3年(2021年)度もブナの実が大豊作となる可能性が高いという。ブナの実が豊作となると、ブナの実を好物としているツキノワグマの栄養状態が向上し、翌春に生まれる子熊の数が増えると言われている。ブナの実付き具合は山の食料事情を大きく左右する大切な指標となっている。


作品づくりでは、フォルムのきれいな個性的なかたちの殼斗と果実(種子)を同時に採取しよう。4裂して広がった殼斗は刺状の突起が特徴でかなり変わった姿をしているが、そこがブナの果実の特徴だ。果実にははっきりとした3稜がある。
ブナの殼斗はゴツくて迫力があるので、額装するにあたってはその迫力に負けないくらいの少し粗っぽいテクスチャーを持つ台紙(ネパール和紙など)にレイアウトすると良いだろう。何ごともバランスが大切なのだ。


ブナ(山毛欅、橅、椈、Fagus crenata Blume)
日本の温帯林を代表する樹種。
中国語で「山毛欅」とは、中国ブナを指す。「橅」の漢字は近年作られた和製漢字。
雌雄同株。5月頃に葉の展開と同時に開花する。果実は総苞片に包まれて10月頃に成熟し、その殻斗が4裂して散布される。
殻斗に包まれた2個の果実(堅果)は、断面が三角の痩せた小さなドングリのようなもの。

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