山の自然素材を使って作るアート(ナガミヒナゲシ) … Nature Art・Workshop2021/08/05

- -
「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ナガミヒナゲシ・長実雛芥子
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ナガミヒナゲシ:ケシ科ケシ属
ヨーロッパ地中海沿岸原産のの一年草または越年生植物。春先から初夏にかけて道端などで生育し、目立つオレンジ色の花を咲かせる。
非常に強い繁殖力を持ち、他の植物の成長を妨げてしまうため、全国の多くの自治体で「注意すべき外来植物」に指定している困った植物だ。
ここで取り上げている「山で見られる植物」というわけではなく、日光が当たる場所であれば街中であれ花壇の植込みであれどこでも爆発的に繁殖しているのを見かける。

蕾みの時には深々とうなだれているが、開花する時にはまっすぐ上を向く。毛が密生する萼に包まれた蕾みは、開花するときには萼を脱ぎ捨てる。

種子散布のシステムがこれまたユニークで独特。非常に良く出来ている。
果実が熟して乾燥すると柱頭との間に8箇所程度の隙間・スリットが円周に沿って開いてくる。縦に細長い果実の内部にはフィン状の縦のガイドが設けてあって、上部のスリットから吹込んだ風をガイドに沿って下に送り、その力を利用して逆に種子を押し上げ外へと浮き上がらせ排出、散布する、というメカニズムを持っている。

合わせて、風靡(ふうび)散布あるいは風力射出散布と呼ばれるような、風の力で果実自体を激しく揺さぶることによって広範囲に種子をまき散らすという二重の仕組みを組み合わせている。そのためにその身体のサイズに似つかわしくないほどの高く長い茎を持っているのだ。


採取にあたっては少し注意が必要だ。ナガミヒナゲシの茎や葉には植物毒の「アルカロイド」が含まれているので、採取中に黄色い汁が手に付くと、皮膚の弱い人はかぶれやただれを起こす恐れがある。(鈍感な僕は平気なのだが、、)

そんなやっかいなナガミヒナゲシだが、その種子散布の巧みにスポットを当てて作品づくりをしてみるとかなり面白い。
種子散布の仕組みが解るようデザインし、レイアウトにも工夫をこらすと楽しい作品になるだろう。
果実が緑色のうちに採取して吊るしてドライフラワーを作り始めても問題はない。ドライフラワー化する過程でスリットが出来、種子散布の準備は進んでいく。ただ、問題がひとつあって、この細かい種子は出尽くすということが無く、いつまでも細かい種子が出続けることだ。


ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、Papaver dubium)
果実(芥子坊主)は細長く、和名の長実雛芥子はここから付けられた。
株立ちして育つことも多く、大きな株では一株で100個もの実をつけるという。果実の中にはケシ粒大の種子が入っていて、一つの果実には約1,600粒もの種子が内包されているという。ということは、大きな株ではそれひとつで16万粒もの種子を周囲にバラまくという「飽和攻撃」により他の植物を駆逐していく、ということになる。ある意味、無敵な植物なのだ。外来生物恐ろしや。

- -
アクセスカウンター