薄暗い林床に怪しく咲くギンリョウソウモドキ … 自然観察・WanderVogel2021/09/25

ギンリュウソウモドキ
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緊急事態宣言が続いているので、なかなか山に出掛けられないでいたが、丹沢の活動フィールドにどうしても顔を出さねばならず行って来た。
雲間に時々薄日が射す天気だが幸い雨にはならず、午前中に用事を済ませた後、午後から数時間周辺を散策することが出来た。

薄暗い林床にギンリュウソウモドキ(別名:アキノギンリュウソウ)が怪しく咲いていた。

ギンリョウソウモドキ:Monotropa uniflora L. 
(APG分類:ツツジ科ギンリョウソウモドキ属)
春に咲くギンリョウソウとよく似た種なのだが、ギンリョウソウが液状果を作るのに対し、ギンリョウソウモドキの種子は朔果であることなど違いは大きい。見かけで見分けるのはなかなか難しいのだが、咲く季節で僕は見分けている。
ちなみに、ギンリョウソウは青色の大きな柱頭を持ち、その周囲を黄色いオシベの葯が囲んでいるので非常に良く目立つ。ギンリョウソウモドキの方は写真でも解るように柱頭の色は黄褐色から黒色で、正直あまり目立たないモノトーンな花だ。

また、一見して解るように、この植物は身体に葉緑素を持っていないので、自分で栄養素を作り出すことが出来ない。というか、自ら栄養を作り出すことを放棄してしまったのだ。したがって栄養を造らないのであれば、「根」も「葉」も要らないわけで、こういう奇妙な姿となってしまった。
彼らは、地下の菌類(キノコなど菌類の地中菌糸を消化して栄養を吸収している)から一方的に栄養を受け取って(略奪して)生きている。菌従属栄養植物と呼ばれる不思議な生態系を持った植物なのだ。

菌類自身は、地中の窒素やリンを吸収しそれを周りの樹木に与え、逆に彼らが光合成から得た栄養素を受取るというWin-Winの共生関係を維持しているが、ギンリョウソウモドキは略取する一方のようにも見えるのだが、もしかすると森林全体に張り巡らされたネットワーク自体に影響を与えるような何か大きな秘密を抱えているのかもしれない。
いずれにせよ、一見すると関係なさそうな者同士が実は密接につながっていることは間違いなく、生きものの世界はやはり神秘に満ちている。

ギンリョウソウもギンリョウソウモドキもともに虫媒花なので、種子を作るためには、虫を呼んで花粉を運んでもらわねばならない。
このような薄暗い林床に咲くこんな目立たない気味の悪い花に寄ってくる虫がいるというのもまた驚きである。

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山の自然素材を使って作るアート(コバンソウ) … Nature Art・Workshop2021/09/17

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:コバンソウ
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

コバンソウ(Briza maxima L.)小判草:イネ科コバンソウ属の一年生植物。

普通に雑草としてあちらこちらで見られる。小判型の小穂が名前の由来になっている。別名タワラムギ(俵麦)とも呼ばれる。
ヨーロッパ原産で日本には明治時代に観賞用に導入された帰化植物。乾燥に強く、土壌の質を選ばないので、どこでも生える。

小判があるなら大判もあるのかと思うと、アブラナ科でそう言う名前を持つダイコンの仲間があった。平べったい実ができる大判草という名前が付いているが、本種とはまったく別の印象を受ける。
本種コバンソウに似た小さい小穂(振ると音がする)を付ける「ヒメコバンソウ(姫小判草)」というのもあるが、こちらは同じ科、同じ属なので、納得の命名といえる。その中間とも言うべきか、チュウコバンソウ(中小判草)というのもあるようだが、見たことないのでなんとも言えない。


ドライフラワーにし易く、穂が面白い形状をしているのでレイアウトを工夫することで作品化しやすいだろう。
穂そのものが種子の集合体と言える。1枚1枚がパラパラと剥がれ、薄い翼付きの種子が風に乗り周辺に広がっていく。
しかし、種子同士は結構シッカリと結合し合っているため1~2年程度では自然に剥がれ落ちたりしないので、作品としての持ちは良い。
時間の経過とともに、穂の色が薄い茶色から黄金色に変化していくので、楽しめる。
額を手に取り軽く振ってみるとシャラシャラと乾いた音がする。

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山の自然素材を使って作るアート(スイバ) … Nature Art・Workshop2021/09/13

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:スイバ(雌株)
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

スイバ(蓚、酸い葉、Rumex acetosa):タデ科ギシギシ属の多年草。英名はCommon sorrel.
雌雄異株で花は春から初夏にかけて咲く。茎は直立し、高さは50~80cmくらいになる。
内花被片は長さ約4mmで、内花被片の中に1.5~2mmくらいの胡麻のような小さな黒い果実が1個入っている。種子はルーペで良く観察してみると3稜形をしていて、なかなか手の込んだ造形をしている。
鮮やかな紅色をした内花被片は結構長いこと色あせずに色が残るので、鑑賞期間も比較的長く楽しむことが出来る。
通常、採取時にすでにドライフラワー化しているため作品の制作にあたっては手間が掛からない。


「土手のスカンポ ジャワサラサ・・・・」と歌われた小学唱歌の「スカンポ」は、このスイバのことなのだそうだ。しかし、地方によってはイタドリ(虎杖)をスカンポと呼ぶところもあって、僕などはスカンポと言えばイタドリのことだとずっと思っていた。イタドリとスイバは同じタデ科の植物ではあるが、まったくの別の物なのである。

葉を噛むと酸味があることが、スイバ(酸い葉)という名が付けられたという。
日本では新芽を山菜として食べられたりもするが、ヨーロッパでは古くからスープの実やサラダ、肉料理の付け合せなどとして普通に利用されてきたようだ。スイバにはホウレンソウと同しようにシュウ酸という成分を含むため、調理にあたってはアク抜きなどの下ごしらえが必要なのだそうだが、さほど気にするほどでもないようにも思えるのだが、、。

ベニシジミという蝶の食草(幼虫はスイバやギシギシなどのタデ科植物の葉を食べて育つ)になっている。
ベニシジミ(シジミチョウ科ベニシジミ属)は、小さいながらも羽を広げるときれいな紅色の羽が特徴の美しい蝶で、スイバの多い場所ではたくさんのベニシジミを見ることができる。
とは言え、成虫となったベニシジミはタンポポ、ヒメジョオン、シロツメクサなどの花の蜜を吸うので、スイバの群生地に限らず結構いろいろなところで見かける蝶なのだ。

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山の自然素材を使って作るアート(ミドリハコベ) … Nature Art・Workshop2021/09/11

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ミドリハコベ
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ミドリハコベ(Stellaria neglecta):ナデシコ科ハコベ属の越年草。
(画面上ではコハコベとしているが、ミドリハコベが正しい)
ドライフラワー化した後もしばらくは茎の緑色は長持ちする。時間が経てば全体的に枯れ色となるが、その色合いもなかなかシックで良い。
花(果実)の付いた部分だけ無柄の小葉のみ残して、他の大きめの葉は取ってしまっている。分岐した枝の付き具合を見ながら、画面上にレイアウトするのが作品づくりのキモとなる。
どこででも見かける何げない雑草のような扱いの草本だが、こうしてレイアウトしてみると、繊細でなかなかシャレていて僕の好きな題材のひとつだ。


ミドリハコベ(緑繁縷)、またはコハコベ(小繁縷):
花期は3~9月。白色の花弁を5枚だが各花弁は2深裂して10枚にみえる。ミドリハコベの雄しべは4~10個。コハコベの雄しべは1~7本。ともに花柱は3個。ミドリハコベは高さ15~50 cmで立ち上がる感じで生えていて、茎は緑色をしているが、類似種のコハコベは横に這う感じであることが多く、茎はふつう暗紫色を帯びる。
ミドリハコベの種子には、とがった突起があるが、コハコベの種子は突起は低くてとがらない、という違いがあるが、ルーペで見ないと確認出来ない。
この標本の場合は、ミドリハコベだと思われる。
良く似たウシハコベは花柱が5本あるので判別は容易だ。

ユーラシア原産で、農耕に伴って世界中に広まったとされ、北アメリカやヨーロッパでは庭草として一般的な植物。日本では史前帰化(しぜんきか)植物として扱われる。
単にハコベとしたときには、このミドリハコベのことを指すようだ。または、コハコベとミドリハコベを併せて単にハコベと呼ぶ場合も多い。
春の七草の「はこべら」はおそらく本種ではないかと言われている。春の七草の一つとして古くから親しまれていて、食用にされる。

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山の自然素材を使って作るアート(スギ) … Nature Art・Workshop2021/09/06

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:スギの球果と食痕
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

スギ(杉、Cryptomeria japonica):ヒノキ科スギ亜科スギ属、日本原産の常緑針葉樹。スギ属 (Cryptomeria 属) は本種のみ。
以前はスギ科 Taxodiaceae に分類されていた。
漢字の「杉」は、日本ではスギのことを指すが、中国ではコウヨウザン(広葉杉:中国南部原産のヒノキ科コウヨウザン属の常緑針葉樹)のことを指す。

杉は古くは神聖な建築物の柱材、壁材などに使われてきた。時代が下がると町家などでも使用されるようになったが、一般的な民家では広葉樹材が使用されることが多かった。杉は割裂性がよく、裂いて材(角材や屋根葺き板材など)を作ることが出来たため、古くはその方法で加工されてきた。
また、杉の樹皮もとても有用な建材で、外壁材や屋根材(杉皮葺)として古くから利用されてきた。葉は乾燥して線香に用いられた。

ニホンリスの食痕:スギの球果を齧った痕(上の4個の球果)。球果の中に入っている小さな種子を食べる。
ニホンリス(ネズミ目リス科)はけっこう雑食で大食漢、アカマツの松ぼっくりやスギ、ヒノキの種子、クルミやドングリ、果実の他に、キノコや昆虫、小鳥の卵なども採食する。
植林地やアカマツの生えている真下の地面をよーく観察すると、ニホンリスやムササビ、モモンガ、ネズミなど野生小動物の食痕をたくさん見つけることが出来る。

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山の自然素材を使って作るアート(ウツギ) … Nature Art・Workshop2021/08/27

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ウツギ
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ウツギ(空木)学名:Deutzia crenata:アジサイ科(旧ユキノシタ科/エングラー体系)ウツギ属の落葉低木。雌雄同株。葉は対生。
ウノハナという別名を持ち、丹沢の沢沿いや林道沿いの林縁部で、6月ころにいっせいに白い花を咲かせる。
この時期、ウツギだけでなく、ヒメウツギ(アジサイ科)やガクウツギ(アジサイ科)、マルバウツギ(アジサイ科)、コゴメウツギ(バラ科)、ツクバネウツギ(スイカズラ科)などが順に咲き始める。

ウツギは花期を終えるとすぐに結実させる。直径5~6mmの果実はお椀状というか壷状の朔果で、果実の中心からは花柱(雌しべの芯)がピョコンと飛び出している。花柱は熟すと枯れて3~4裂する。
果実は熟すと基部が裂けてそこから小さな種子がこぼれ出てくる。
種子は小さく肉眼では粉のように見えるがルーペで良く観察してみると、長さ1.5~2mmの種子の片方に翼があるのが解る。風に乗って運ばれる風散布形式の種子なのだ。

結実後はこのままの姿を保ち、翌年の夏くらいまで残っているのでサンプル採取は容易だ。

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山の自然素材を使って作るアート(センペルセコイア) … Nature Art・Workshop2021/08/25

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:センペルセコイア
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

センペルセコイア:ヒノキ科(スギ科)セコイア属の常緑樹
もちろん日本には自生していないが、大きな都市公園や庭園などに植えられることがある。
近似種のメタセコイアは20世紀半ばに中国西南部で見つかりその後アメリカで育苗された苗木が輸入され、日本全国に広がりあちこちで見かけられる様になっているが、センペルセコイアの方はまだそれほど見る機会は少ないと思う。葉の形状など良く似ているが、センペルセコイアは冬季でも葉が落ちない常緑樹で、メタセコイアの方は黄葉後にすべて落葉してしまうので、見分けられる。

葉の付いた小枝ごと下に落とすので、時期になると写真のような姿のものをたくさん採取出来る。
枯れて、中の種子を落とし終わったものが多く、種子サンプルを見つけるのには少し苦労する。
作品化しても、葉がポロポロと落ちていくので、現状の姿を維持させるには瞬間接着剤で留めるなりの工夫は必要。
枯れた果実の形状にもいろいろ個性があり、レイアウト次第では楽しめる。
バックには少し柄のあるネパール和紙(ロクタペーパー)を使っている。


センペルセコイア:Sequoia sempervirens、セコイア・センパーヴィレンツ、別名:セコイアメスギ・アカスギ
世界の絶滅危惧植物 絶滅危惧Ⅱ類(VU)、北アメリカ太平洋側沿岸部、標高700-1000mの海岸に近い山地に自生する。
寿命がとても長く、樹齢800年から2000年のものがあるといわれている。また、世界でもっとも樹高の高い木のひとつといわれ、高いものでは100mを超えるという。
雌雄同株異花で、葉の先端に雌花が付く。雄花は葉腋から出て、葉の内側に付く。
樹皮や材の中心部が赤いことからコースト レッドウッドとも呼ばれる。

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山の自然素材を使って作るアート(ヤマノイモ) … Nature Art・Workshop2021/08/20

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ヤマノイモ
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ヤマノイモ属のつる性植物は丹沢ではヤマノイモのほか、オニドコロ、ニガカシュウ、カエデドコロなどいくつか混生して見ることが出来るが、みな良く似た形状をしているので見分けるには少しコツが必要だ。

ヤマノイモ(山の芋)Dioscorea japonica:ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。雌雄異株。
日本原産で、粘性が非常に高い。ジネンジョウ(自然生)、ジネンジョ(自然薯)、ヤマイモ(山芋)とも呼ばれる。
雄花は直立し白い花を咲かせ、雌花は下に垂下がって咲く。
葉はヤマノイモ属の中で唯一対生なので、見分けは付き易い。また、葉腋にムカゴ(零余子)が付くのも特徴のひとつだ。

果実は蒴果(さくか)で大きな3つの陵があり、下向きにつく。
それぞれの陵の中に2つの種子が入っている。果実が熟すと針金状の留め金がはじけて裂開し種子が放出される。種子の周りに出来た薄くて大きな膜を使って風に乗り遠くに飛ばされる。ただし、ムカゴによる繁殖のケースの方が多いのだともいわれている。


オニドコロ(鬼野老)Dioscorea tokoro:ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。雌雄異株。
雄花は直立し淡黄緑色を咲かせ、雌花は下に垂下がって咲く。ムカゴは付かない。
オニドコロは葉はヤマノイモに比べ丸く、葉が互生で付くので見分けられる。オニドコロのイモには有毒成分があって食べられない。ヤマノイモと間違えて食べて苦しむ人もいるが、アク抜きをすれば食用出来るともいわれている。オニドコロの毒の成分はサポニンの一種とシュウ酸カルシウムで多くは水溶性。シュウ酸カルシウムは加熱処理である程度無効化することができる。とは言え、一種の救荒植物的な扱いでの話であろう。

果実は蒴果でヤマノイモとは逆に上向きに出来る。
種子の周りにはヤマノイモ同様に薄い翼があるが、ヤマノイモと比べずいぶんと小振りだ。なので、飛翔能力も高くはない。上向きの付く果実はヤマノイモと違って稜/殻は全開せず、先端から3分の1だけ開く。殻から吹き飛ばされるほどの強風が吹くときだけ種子は散布される仕組みなのだ。理にかなった実に良く出来た種子散布システムだ。


ニガカシュウ(苦何首烏)Dioscorea bulbifera:ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。雌雄異株。
雄花(紫色)雌花はともに下に垂下がって咲く。
葉の形は普通のハート型で互生して付く。オニドコロの葉と似ているが、大きさはヤマノイモ科では一番大きく、15cm位もあるのも見かける。
葉脈に規則正しく横に走る側脈があるのもニガカシュウの特徴。ニガカシュウの葉柄の基部と上端には独特の縮れた襞(ひだ、ひれ)がある。
葉腋にムカゴ(零余子)が付くが、ヤマノイモのムカゴに比べるとゴツゴツした突起があってイビツな形をしている。
根もムカゴも苦みが強くて食用には向かないかな。


ヤマノイモの作品制作にあたっては、枯れた果実のサンプル採取は非常に容易でいくらでも手に入る素材のひとつだ。
蔓と枯れた果実のバランスを見ながらレイアウトし、薄い翼の付いた種子をアレンジすると作品は出来上がる。フォルム自体がキレイで面白い形をしているので、そこを活かして楽しみながら作ると良い。
上記のように似たツル植物の種子散布方式の違いを頭の隅に思い浮かべながら作っていくとより理解が深まるだろう。

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山の自然素材を使って作るアート(イケマ) … Nature Art・Workshop2021/08/16

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:イケマ・生馬・牛皮消
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

イケマ:学名:Cynanchum caudatum 、キョウチクトウ科ガガイモ属のツル性多年草。
山の林縁部や、日当たりのよい斜面などで普通に見られる。

キョウチクトウ科ガガイモ属の特性で、全草毒草である。特に、植物を傷つけたときに出る白い汁(乳液)に毒性を持つ。
また、その太く長い地下茎にはアルカロイド系の毒性があり、昔から生薬としても用いられてきた。漢方名で「午皮消根」といい、効能は利尿、強壮、強心薬、食中毒の解毒や腹痛、歯痛、風邪薬、回虫の駆除などに使われていた。

またイケマは、アサギマダラ(蝶)の食草としても知られている。同じキョウチクトウ科ガガイモ属のキジョラン(鬼女蘭)もアサギマダラの食草。
アサギマダラはイケマやキジョラン、ガガイモなどの葉の裏側に産卵し、その幼虫はその葉を食べて育つ。アサギマダラは、鳥などの外敵から身を守るため、幼虫のうちにガガイモ属の持つ毒素を体内に取り込み「蓄積」しているという。この天敵からの防御システムもアサギマダラのDNAに組み込まれたプログラムなのだと考えると自然の不思議さには感嘆させられるばかりだ。

花期は7月から8月で、小さな花が多数集まって花序全体が球のように丸くなって咲く。花が終わると、ガガイモ属特有のオクラのような紡錘形の袋果(果実)を2つずつつける。袋果の中には白く長い種髪(毛束)をつけた長さ8mmほどの種子が入っている。袋果が割れると毛束の付いた種子が飛び出し風に乗り飛散する。


イケマは「生き馬」を意味し、ウマの便秘を治す薬に使われたとか、「カムイ(神)の足」というアイヌ語が由来で名付けられたとかイケマと言う名の由来には諸説あるようだ。(アイヌ語名も日本語名も「イケマ」というそうだ)
アイヌ民族にとってもイケマは古くから重要な植物で呪術用、薬用、食用とされていたようで、伝染病などから身を守るお守り代わりに乾燥したイケマを身に付けていたともいう。


アサギマダラ(タテハチョウ科):日本全土から朝鮮半島、中国、台湾、ヒマラヤ山脈まで広く分布し、その目立つ色彩の翅は一目でそれと分かる。アサギマダラの成虫は、秋に日本本土から南西諸島・台湾などへと渡り、初夏から夏にその逆のコースで北上するとされ、「旅する蝶」として知られている。
上にも書いたように、アサギマダラはガガイモ属植物の持つアルカロイド系毒素を体内に取りこみ貯えることで身体を毒化し、敵から身を守っている。アサギマダラは幼虫・蛹・成虫とどれも鮮やかな体色をしているが、これは毒を持っていることを敵に知らせる警戒色と考えられている。(Wikipedia抜粋)

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山の自然素材を使って作るアート(イワタバコ) … Nature Art・Workshop2021/08/12

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:イワタバコ・岩煙草
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

イワタバコ:岩煙草、Conandron ramondioides Siebold et Zucc.、イワタバコ科イワタバコ属
別名:イワジシャ(岩千舎、岩萵苣)、イワナ(岩菜)、ヤマジシャ(山萵苣)とも呼ばれる。(ジシャ、チシャとはレタスのこと)
和名の由来は、岩場に生え、葉がタバコの葉に似ているので名付けられた。若葉は食用とされる。
日本の本州、四国、九州、沖縄および、台湾などの山地に一般に分布し、日当たりの悪い湿った岩や崖に生える多年草。いつも水がにじみ出ているような日陰の岩壁に群生しているのが見られる。
細長い朔果は長さ約1cmの広披針形で2つに割れる。(ほとんど粉のような)紡錘形の種子が多数入っている。

神奈川県内では鎌倉長谷寺や東慶寺、円覚寺などのイワタバコ(ケイワタバコ)の群生がよく知られているが、神武寺はじめとした三浦丘陵一帯と丹沢および箱根などに広く分布している。ざっくり言うと鎌倉や三浦丘陵一帯にはケイワタバコが多く見られ、丹沢の沢沿いなどではイワタバコが見られる。
ただ、丹沢や箱根でもイワタバコとケイワタバコの両方が自生していて、場所によって棲み分けされていると言われている。山地の沢だけでなく、秦野市菩提のわさび園の沢や石垣などでも普通に見かけられる、丹沢では割りとポピュラーな花というイメージだ。
丹沢は基本的に丹沢層群の地層を構成する凝灰岩(緑色凝灰岩)が多く、岩質が水分を含みやすいこともあってイワタバコの生息にはもってこいの環境なのだろう。

採取にあたっては、自然保護を最重点に考え、種子が放出された後の枯れたものを個体を痛めず慎重に採取するか、個人のわさび棚などに生えているものを一声掛けて採らせてもらう。写真のイワタバコの枯れた朔果のサンプルは「ケ」の付かない「イワタバコ」。
2つに割れた朔果はそれ単体で見てもけっこう芸術的なフォルムをしていて、なかなかに「萌える」ものである。
ただ、そうそうたくさんのサンプルを採取することが出来ないのが難点だ。


イワタバコとケイワタバコの区別について:同定は結構やっかいだが、このへんを詳しく解説している他人のブログ記事を参考にすると、「ケイワタバコの葉は主脈が葉身(ようしん)の中央を通らず片側に寄っており、左右対称でないことが大きな特徴。主脈は曲線を描く。(毛がどうこうは一切無視して)この点をもってケイワタバコであろうと当たりを付けると良い。葉の表面は強めに縮緬(ちりめん)状になる。」とあった。

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