南アルプス・標高2,000m付近の針葉樹林帯を歩く2 … 自然観察・WanderVogel2015/05/06

鳳凰三山 山麓のサルオガゼ
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南アルプスの針葉樹林帯を歩く。2

樹林帯の中にあって、何とも幻想的な雰囲気を醸し出している、枯れ枝にまとわりつく無数の糸のようなコケ?。
まるで、能や歌舞伎の演目「土蜘蛛」で土蜘蛛の精が放つ蜘蛛の糸(千筋の糸)に絡み付けられてしまったかのような、おどろおどろしい姿をしています。

絡み付けられている木はカラマツです。
カラマツは日本の針葉樹のうちで唯一、秋になると黄葉し冬には葉を落とす樹木ですので、冬の間は枯れ木のような姿になっています。
そんなこともあって、このコケ?も絡み付け易いということなのでしょうか。

始めこの姿を見たときはイトゴケの一種のキヨスミイトゴケ(清澄糸苔)が絡まっているかな、と思いましたが、帰ってきてよく調べてみると、「サルオガセ」という何とも奇妙な名前を持つ地衣類の仲間だということが解りました。
そして、この「サルオガセ」は「キヨスミイトゴケ」などよりも、もっとポピュラーに見かけられるものなのだそうです。


鳳凰小屋から尾根道を燕頭山へ向かって、なだらかに下る山道を歩いている時に見かけました。
写真を撮って、あらためてまわりを見渡してみても、ほかに木には絡まっていませんでしたので、よほどこのカラマツの木が気に入ったのでしょう。
あまり湿気のありそうな地形ではなかったのですが、それでもサルオガセの生息条件には適っていたのでしょうか? 盛大に絡まっていました。

サルオガセ、漢字では「猿尾枷」と書くのだそうですが、何ででしょう?(調べたがよく解りませんでした)
図鑑では、樹皮に付着して懸垂する糸状の地衣類ということで、霧のかかるような森林の樹上に着生する、とあります。コケに近い仲間の地衣類に属する、花の咲かない植物なのだそうです。
空気中の水蒸気を吸って、その水分と光合成だけで単独で育つので、他の植物に寄生して生きているわけではないのだそうです。

なんとも不思議な植物です。

もっと調べてみると、この植物は食べられるのだそうです。
煮て柔らかくして食べるのだそうですが、好んで食べたくなるシロモノではありませんね。
姿は何となくヒジキというか海藻に似ていなくもありませんが、僕はパスします。

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