くれ板葺き屋根の民家 … 建築の旅・WanderVogel2013/05/27

くれ板葺き屋根
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40〜50年前くらいまでは田舎の民家で見ることが出来た「くれ板葺き」の屋根も、今では博物館でないとなかなか目にすることは出来ません。

飛騨や信州、新潟などの雪深い地でも古い民家/農家/町屋では写真のような、「榑(クレ)」と呼ばれる板を葺き、石を置いた切妻造りの建物がほとんどを占めていました。

現代のような製材工具がない時代には、丸太を割り、木の目にそって同じ厚みと長さに一枚一枚裂いて作られていました。
これは、「クレヘギ」(くれ剥ぎがなまったもの?)と呼ばれる手法で、木の特質を利用して上手に木を裂きながらクレ材を作り出すという熟練の技術です。

榑(くれ)材の寿命はおおむね5〜6年と言われていて、茅葺きと比べてもかなり寿命の短いものです。
くれ材にはクリ、カラマツ、ナラ、ネズ、サクラなどを用いますが、中でもクリ材は水に強く腐りにくく耐久性があり、屋根を葺くのに一番適していると言います。

茶室や数寄屋造りなどの武家の住宅などでは檜皮葺きや杮葺きといったヒノキやサワラ、スギ、ヒバなどの高級材が使われましたが、農家や普通の民家ではそう簡単に使うことは出来なかったのでしょう。
もちろん瓦葺き屋根などは、江戸のような建物が密集した都市部では防火/類焼防止の観点からいくらか規制もゆるかったのでしょうが、その他の地方では厳格な身分制度の中でおとがめを受けることになりますので使用出来ません。

葺き替えには榑板をいったん全部屋根から取り外し、腐りがない使えるものは屋根に残して、腐りがひどくもろい材は取り外して屋根裏を掃除し、下から新しい榑(くれ)を葺いていく「クレガエシ(板がえし)」という作業を行います。

破棄された古いくれ板は焚き物として重宝され、無駄なく使われたようです。

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