木造住宅の準耐火仕様違反と工事監理 … 建築監理・第三者監理2017/10/29

準耐火仕様の検査
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このblogでは新築住宅検査の話題は出来るだけしないようにして来たが、最近すごく気になったことがあったのでさわりだけ書いてみる。
(ちょっと生臭い話なので、興味なければ読み飛ばしてください。)


写真はある準耐火仕様の3階建て住宅の天井裏に隠蔽されることになる換気ダクトの写真。換気ダクトの材質は一般的な樹脂製のスパイラルダクトで、火には大変弱いものだ。

準耐火仕様ではダクト類が不燃物で作られていない場合はグラスウールやロックウールなどで囲うか、同等の防耐火性能のある被覆材で囲わなければいけないことになっている。
検査時にそういう突っ込みを入れると「まだ施工前の状態なんですよ」と切り返してくるだろうが、これまでの工事のやり方というのを見ていると、たんに木造住宅の準耐火仕様に対する知識が欠けていて、この先の施工などまったく考えていなかった、というのが本当のところだろう。

実際にこの状態でかまわず天井下地を組み始めていたので、検査時に指摘して天井の下地材をすぐに解体・撤去してもらった。
もともとこの時の検査の主題は、写真下の方に写っている壁の横下地材の是正検査だった。その前の検査でこの横部材が施工されていなかった(準耐火仕様違反)ことが、是正工事指示の発端だった。
この工事現場では、問題個所がひとつ解決すると、また次の問題点が発見される、ということの繰り返しだった。
つまり、造っている大工さんには準耐火仕様に関する知識がまったく無く、管理する現場監督も仕様や手順がよく解っていなかったということだ。

これまでの数回の第三者検査においても、強化プラスターボードの下地材の施工には不具合が多く見つかり、外壁や間仕切り壁のファイアーストップ材は施工忘れが頻発していた。加えて、小屋裏の準耐火仕様の施工に関しても規定通りの施工が全然なされていなかった、などなど様々なことを考え合わせてみると、問題の根本は大工・現場監督の知識不足と注意不足、ということなのだが、大金を支払う施主にとってはたまったもんではない。


この工事を担当しているのは、関東圏内ではわりと知られている設計施工の会社(提携している設計事務所が設計する「デザイナーズ住宅」というのがウリの会社なので、高額であっても一般的な規格住宅より人気があったりする)で、私のところでも過去十件近くその会社が施工する住宅の第三者監理・検査をしてきた経緯がある。
第三者監理・検査は全て施主からの直接オーダーで、施主の代理人として施主の立場で検査に立会ってきている。

これまでの複数物件の検査を通じて一貫して感じるのは、設計者や施工担当者の違いによる技術的・施工的なレベル差がかなり大きくて、施工の出来についてもその時々でかなり品質にバラツキがある、という点だ。
この「施工レベルの違い」と言うのは、上手・ヘタという意味ももちろんあるが、実際に「違法建築」に当たるかどうか、というくらい違法性の高い非常に危ないケース、ということだ。


そうした施工の出来如何にかかわらず、検査をする側としては違法なことを見過ごすことは出来ないので、施工上の不具合についてはその都度しつこく指摘し、全てきちんと是正するまで確認をするようにしている。
そうしないとそのまま「違反建築」になってしまうし、そもそも耐久性・耐震性・耐火性に大きな問題を抱えることにもなる。
その結果は、施主の利益が大きく損なわれてしまうことにつながってくる。

本来ならそういった違反や不良工事の検査・是正指示は(第一義的には)工事監理者が行なうべきなのだが、この会社の場合、施工会社から委託された「設計事務所」がその任に就くことはなく、施工会社が直接それを行なうので、施工者が施工者を検査する(自分で自分をチェックする)という大甘の格好になり、これでは「検査」の意味をなしていない。
施工会社が立てる「中立性を保って検査をする(建前の)第三者検査機関」というのも、信頼性においては五十歩百歩だ。
なにしろ依頼者がその施工会社なわけだから、表向き中立とうたってはいてもその検査機関の検査が厳格なものには成りきれないものだ。


また、いくら「経験豊富なデザイナーが設計した個性的な住宅」とわざわざ銘打った住宅であっても、設計者が図面を描きっ放しで、施工には一切関知しない・監理出来ない(施工会社との契約上そうなっているのだろう)のであれば、まったく中途半端な仕事だと言わざるを得ない。
おまけに、細かい図面やディテール、施工上の注意点などの指示が無いのであれば、肝心なところは施工者任せで、そこに違法性があろうと造り易いように造ってしまう、と言うことになる。

で、当然そういうやり方をしている会社は、この現場でもその他の現場においても同様の欠陥・トラブルが多発している。
ほとんどは、仕上げ材が施工されてしまうと隠れて見えなくなるところなので、施主は竣工後に何か重大な欠陥が表面にあらわれて来るまでそのことに気が付かないということになる。


運良く違反箇所を施工中に発見し是正に着手したとしても、その結果施工期間が大幅に延長となり、引渡しが半年も一年も伸びてしまう、といったケースも多く発生している。
施主にとっては仮住まい費用や引越しの費用、精神的な負担が膨らんでいくことになるのだが、そういった金銭的な面の保証・違約金に関してもスムーズに話し合いがつかず、双方で弁護士を入れてやり取りをせざるを得ないケースも実際に出てきている。まあ、一般的な弁護士は建築に関しての知識は施主以下なので、トンチンカンなやり取りになることが多いだが、、、
そしてそれは施主にとってまったく利益のない、不毛のやり取りが繰り返されることになる。


これでは、職業倫理なんてあったもんじゃない。

(こういう話題は、書き始めると文字数が多くなってしまうし、だんだん腹立ってくるので、実はあまり書きたくないんだよな。)

設計者・現場監督の責任と職業倫理 … 第三者監理・建築設計/監理2017/09/28

建築定期講習
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建築士事務所に属する建築士の資格を持っている者に義務づけられている3年毎の定期講習。
ほぼ丸一日を要して行なわれる。

現在、どんなに高名な建築家でも新しく免許を受けた建築士たちと一緒に、この講習会を受けなければならないという決まりになっている。
建築士に対してそういう縛りを付けるのであれば、同じ「士」の免許・資格である医師や弁護士も同様に実施すべきだと思うのだが、関係団体の力が強いのだろう、不条理だが現状でもまだそういう状況にはなってはいない。
弁護士だって医者だって、倫理も常識のかけらもない者も中にはいると思うのだが、、、

この建築士定期講習の組立ては、大きく2本の柱で構成されている、と言って良いと思う。
1つ目は、この3年間で起きた建築関係の事故や社会情勢に関する事例紹介、そしてそれに起因して新しく追加されたあるいは変更された法律や法令の解説。
2つ目は、建築士あるいは建築士事務所としての法令の遵守・コンプライアンスに関する職業倫理の周知徹底。
もともと2つ目のことが原因(俗にいう姉歯事件)で始まったこの制度なので、定期講習では毎回この内容に多くの時間を割いている。


僕も、デザイン・設計作業の他に、第三者監理ということに力を入れて取り組んでいるので、この職業倫理については現場で言いたいことが山ほどある。

建築士が行なう業務は、国家資格を持って設計や工事監理を行なう以上、業務独占を賦与されていることになる。
業務として行なう設計や工事監理等において私法(民法や商法など)上の契約責任や不法行為責任とは別に、建築士法などの法令に規定する内容を遵守するという公法上の責任を負っている。
あえて専門的な責任うんぬんは別にしても、特に住宅の建築などでは、ごくごく一般的な(建築や施工の知識のまったく無い)人が建て主・契約者となるわけなので、建築士は設計や工事監理業務に当たり、専門的な技術的判断のもと、専門家としての高度な注意義務(民法で言うところの善管注意義務)を負っているはずなのだ。


でも、実際にはどうだろうか?
今抱えている第三者監理の現場でもそうなのだが、建築士の資格を関係者はみな持っていて、当然この建築士定期講習を同じように受けているにもかかわらず、法令違反(建築基準法違反)や手抜き工事が頻発し、施主に対する説明不足も重なり大変な混乱を引き起こすことが多々ある。

設計書上の仕様解説の不備、思慮が浅く不誠実な現場監督の投入に加え、施工を知らない施工者が作業を行ったことで起こった結果がそう言う事態を引き起こすのだが、最近こうしたどうしょうないゴタゴタが多い気がする。

その物件の場合、数ヶ月前から設計・施工側と施主側の双方が代理人(弁護士)を立ててやり取りをせざるを得ない状況に落ち入っている。
ただ、普通の弁護士は建築のことについて施主以上に素人なので、工事の混乱を納める有効な手立てを立てることは残念ながら出来ない。

弁護士には違約金や損害賠償金の交渉、引渡し延期に伴って発生する費用の負担などの金銭的な交渉、契約上の違約交渉などに専念してもらい、私の方は実際の建物の技術的な解決策の提示、第三者監理の検査で見つかった不良箇所の是正指示と確認など、工事の実質的な監理・監視業務を行なうことに専念するのが良いのだろう。

問題は、それをどううまくやらせるのかが、大きな問題なのだが、、、まぁ、それが手腕の見せ所ということだ。

住宅建設・施工品質の崩壊(建築専門誌より) … 建築監理・第三者監理2017/06/21

日経HB7月号
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定期購読している建築専門誌、日経ホームビルダー7月号の特集「迫り来る 施工品質の崩壊」

なんとも恐ろしいタイトルが付けられているが、住宅現場の実態を肌で触れている者としては、実体験として解る気がする。
記事の大半はトラブルの実例やハウスメーカー施工各社の品質管理に関する取組みなどの内容なのだが、根本的な話しをすれば、職人と現場監督のスキル不足ということに集約しそうだ。

職人にせよ現場監督にせよ一朝一夕で優秀な人材を生み出せる、作り出せるわけではなく、それには長い時間とコストがかかる。また、100人教育しても全員が人材確保につながるというわけではない。そのうちの何割かは脱落して行くし、何割かは一定のスキルにまで達しない者が出てくる。
そこで、多くのハウスメーカーでは、そういった職人レベルのスキル不足は容認して、スキルアップだけでなく「仕事のやり方」で解決しようと、やっきになっている。
そのひとつが、施工の単純化、標準化、マニュアル化だと言える。
あらかたの作業を職人や現場監督の介在する前の段階で、工場生産してしまおうということだ、簡単に言えば「職人のスキルアップ」ではなく、「素人でも建てられるようにする」ということなのだろう。
しかし、「建物」特に住宅の建設では、不測の事態や現場で判断しなければ納まらない事柄というのが、頻繁に起きてくるものだ。
分厚い施工マニュアルをいくら作ろうが、それに記載されていない状況が現場ではたくさん発生する。

今まで、施主からの第三者監理で検査・監理をして来て感じるのだが、工場加工・生産された部材の間違いや食い違いというのはそれほど多くはない。
是正指摘に結びつくような不良施工のほとんどは、現場施工で造られたものに集約されている。つまり、基礎工事、断熱工事、防水工事など、現場作業で組み上げていく工事ということになる。
その施工不良の原因のほとんどは「段取りの悪さ」だと感じる。
いくら素人同然の「職人さん」でも造れるとはいっても、段取りについては施工マニュアルには書かれていない。マニュアルや施工仕様書に書かれているものは完成形の姿だけなので、ぱっと見、それ風に出来ているような感じもしたりするが、良く見ると施工の順序がぜんぜん違っていて、完全に不良施工になっているケースというのも多く見てきた。

是正指摘をしても、根本的な施工の意味を理解していないので、何が間違っていて、何をどう直せば良いのかが解らない。といった状況も頻繁に起きている。
これは職人にも現場監督にも言える。
監督がいちいち指示を出さないと現場が正常に納まらない、というのも著しく危機感を感じるが、監督自身が間違いに気付かないというのもお粗末なものだ。

特集されている「迫り来る 施工品質の崩壊」の根本原因は、(住宅本体の)物質的な話しではなく、人的なスキルの崩壊、ということなのかもしれない。

日本の住宅の全てがそうではないが、ある一定の割合で今でも不良住宅は建てられ続けているのが実態だ。

不愉快な工務店・建て主の本音 とは … 建築監理・第三者監理2017/05/19

建築専門誌の記事
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建築雑誌(専門誌)に日経ホームビルダーという月刊誌があります。
この書籍、一般の書店には並んではいませんが、毎号けっこうタイムリーな話題を届けてくれます。

今月号は写真のように、「建て主の本音」という特集になっています。
紙面内に「建設途中に不愉快な経験はありますか?」という問いに対し、ハウスメーカーに依頼した人で約65%、工務店に依頼した人で70%弱の割合で「ある」という回答が示されています。
どういう形式で質問を投げかけたのか、によって答え方は違ってはくると思いますが、私の正直な第一印象は「意外に多いな」というものでした。

トラブルの原因はそれこそ種々あってその程度も様々なのですが、一番多いトラブルの根本的な原因はというと、お互いのコミュニケーション不足によるボタンの掛け違いが最終的に大きな不信感を生み出す結果となっている。ということのようですが、そりゃそうだ。

私が関わる第三者監理でも、その対応自体というよりは受け答えの仕方・伝え方のマズさから、施主と工務店との間に抜き差しならない深い溝を作ってしまった、ということがありました。

第三者監理/検査では、施工不良箇所を見つけると、単純にそこだけの是正指示を出すのではなく、なぜ改善の必要があるのか、何が問題なのかを明確にし、施工会社が納得したところで是正工事に入るわけだが、不良で一番多いのはやはり単純な技術的ミスが多い。なのでなおさら、なぜダメなのかをきちんと正して行かないと同じような施工間違いが今後いくつも起こる可能性が出てくる。

ただ、その際の施工側の言い分や説明、受け答えがあまりに言い訳じみていて、いい加減なものだと「建物全体の施工に対する不信感」につながり、ひいては「施工会社自体への不信感」へと気持ちが動いてしまうものなのです。

で、そのうちに、言った言わないの堂々巡りとなり、本来良好であるべき「施主と施工者」の関係性が一気に崩壊してしまうことになってしまう。

施工者の中には、個々の施工ミスは認めるものの、「非」を認めたがらない担当者、会社もあるので、その場合は少々厄介なことになります。
場合によって施主側、施工者側がお互いに弁護士を立てての話し合いに発展することになります。
そうなると解決(実際には解決はしないのですが)まで時間が掛かってしまい、結果的には施主にとって(建物自体にとっても)あまり良い結果を生まないのですよ。

出来るだけそうならないように、うまくもっていきたいのですが、残念ながら弁護士同士の話し合いにまで発展するケースが今年に入ってからも2件発生し、私も対応に苦慮しているところです。

木造住宅・準耐火検査のための現場資料 … 建築監理・第三者監理2017/05/11

準耐火建築物の検査資料
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木造住宅の準耐火建築の仕様には、(国交省)告示に書かれている条文規定の他にも、各建材メーカーがそれぞれ国交相から取得している「認定」制度というのがあります。

しかし、その告示にせよ認定にせよ、準耐火建築を成立させるための「根本的な防・耐火基準」というものをきちんと理解した上で使わないとまったく意味が無いのは言うまでもありません。

一口に木造の「準耐火仕様」といっても、実際にはその造り方には多くの選択肢があります。
設計者はその多くの仕様基準のうちの何を選択して「準耐火建築物」を造り上げるのか、を施工者側に正確に示すために「準耐火仕様リスト」という図面を作成します。
その「準耐火仕様リスト」を元に、施工者(現場監督や現場の大工さん)は住宅を造っていきます。
また、「準耐火仕様」は「構造」と同じように確認申請時に確認機関に提出するものですので、工事の途中で勝手に変更したり、アレンジをしたりしてはいけない性質のものです。

もちろん「準耐火仕様リスト」は、検査をする側(第三者監理者)も同様のものを入手し、検査員はそれを元にして検査・確認をしていく、というのが基本的な流れとなります。


告示基準や認定書に記載されている「仕様・工法」というものは、基本的には施工者側が都合良くアレンジなどをしてはいけないものです。
「準耐火建築物」としての大きなくくりを押えつつ、告示や認定の基準通りに造っていかないと、準耐火仕様は破綻してしまいます。
熟練した、経験豊かな現場監督・大工さんであればそのへんのコツをきちんと押えて造るのでしょうが、馴れていない大工さんでは単純な間違いや工事の手戻りなどが起きやすい、というのがこの「防・耐火仕様」と言えます。

重要なのは、防火・耐火のキモである強化PBや断熱材の施工そのものにあるのではなく、それらを取付けるための「下地の作り方」が一番大切な要素となります。
その施工手順や重要性をきちんと理解をしていないと、結果的にチグハグはものが出来上がってしまいます。

もうひとつやっかいなのは、その各メーカーの出す「認定書」というものは、その中に「準耐火施工手順」の全てが書かれているわけではないということです。
工事監理者も現場監督もまた実際に手を動かす大工さんたちも、その指定された「認定書」の施工手順を間違いなく理解して施工を進めていかなければいけません。
認定書に書かれていないことや、不明瞭な点は直接メーカーとやり取りをして、最終的には申請検査機関の「主事」に確認を取るなどして正確さを担保していくことが重要です。


昨日書いた住宅の施工違反については、第一義的には現場監督と大工さんの準耐火仕様に対する知識不足・経験不足から発生した「広範囲に渡る不具合、施工不良」ということですが、実はもっと深い問題点として、施工会社自体が「認定書」の内容を読み間違えていた、ということが言えるのではないか。
そのため、結果的に(たぶん、過去にも多くの)建築基準法違反の住宅を作り出す結果になっている、と私は推測しています。

昨日も書いたように、木造住宅の防・耐火仕様には、「防火構造仕様」「省令準耐火仕様」「準耐火建築物」「耐火建築物」というカテゴリーがあります。
そのうちの「準耐火建築物」に関しても、イ-1、イ-2、ロ-1、ロ-2 というように4つの仕様・タイプに分かれていますので、それぞれその中身をきちんと頭の中で分けて理解しておかないと勘違いしやすいものです。


基礎の配筋検査や木造の構造検査は行なわれますが、この防耐火施工検査というのは私たちのような「第三者監理・検査」が入らなければ検査無しでスルーしてしまうものです。
そして、工事が進んで行きPBなどが張られ、その上からクロスが貼られてしまうと重大な違反があったとしても、まったく解らないということになります。

今回、検査で見つかったような「重大な施工違反」も、そのままあと1週間もするとまったく気付かれずに、また是正をすることも出来ずに、結果的に建築基準法違反の不良住宅になってしまうところでした。

木造住宅の準耐火仕様違反について … 建築監理・第三者監理2017/05/10

準耐火仕様違反の住宅
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一般的な規模の木造住宅でも、都市部に建てられるものには、より高い防耐火性能が求められる「準耐火建築物」や「耐火建築物」という仕様を要求されることがめずらしくなくなっています。

特に、木造3階建てともなると「準耐火仕様」というのが常識化してきています。
木造住宅の防耐火仕様に関して言うと、「防火構造仕様」「省令準耐火仕様」「準耐火建築物」「耐火建築物」というカテゴリーがあります。
それぞれにその位置付けや防耐火施工要領などが細かく建築法規(告示・認定)等で定められています。

今、私の行なっている第三者検査の物件の中で、とても大きな問題を抱えている物件があります。
木造3階建ての「準耐火(イ-2)」仕様で建設が始まった住宅なのですが、基礎工事から建て方工事までの間でもいろいろと問題はあったのですが、今抱えている最大の問題はこの「準耐火仕様」による施工に関してです。

最初の問題発覚は、検査を行なっている段階で感じた「もしかしてこの大工さんは、準耐火仕様の住宅を今まで造ったことがないのではないか?」という私の疑念からでした。
なぜなら、準耐火仕様では絶対必要となる下地の施工等が工事が進んでいってもまったく施工されていなかったからです。
それが「1カ所、2カ所、施工し忘れた」、というようなレベルではなく(まぁ、それもあってはいけないことですが)、まったく、ぜんぜん施工されていないのです。
設計図面でもそのあたりの重要な仕様書(準耐火仕様リスト)が整備されていなかった、という点も問題を起こしやすい原因だったと思います。
この点に関しては、私も相当早い段階から、図面での指示がしっかり出来るように「準耐火仕様リスト」をきちんと作成して現場に周知徹底するように、と何度も進言していたのですがダメでした。


しかもこの住宅会社には、施主からの第三者監理である私の事務所以外に、施工会社が依頼している「第三者検査機構」の検査員が事前に何度か検査をしているのです。
にもかかわらず、施工の間違いや施工忘れが最後まで正されることはなく、結果的に建築基準法違反になってしまう住宅の施工が続けられていました。
私は、施工会社から依頼された「第三者検査会社」は最初からあまり信用していませんので、べつに驚きもしませんが、、今回はちょっとひど過ぎました。
もう少し真剣に、というか、施工の先々を見越した検査をしてくれないと、検査員・検査会社としての役割を果たしていないと思うけどなぁ。
私とは直接契約関係にない施工会社・検査機関なので、私が強制したり指導したりすることが出来ないのが、悔しい。


そういうことが重なり、急遽、施工会社・設計事務所・第三者検査機構ら関係者を集め、法律上・法規上の解釈や準耐火仕様の正しい施工要領などをめぐって、早朝から深夜までカンカンガクガクやり合ったところ、問題の根元が現場の大工さんだけにあるのではなく、現場監督や工事監理者を含む施工者側にあったことが解ってきました。
ということは?、この会社が今まで造ってきた住宅の中にも少なからず深刻な建築基準法違反の疑いがある物件がある、ということなのか?

このことは、(住宅や建築の業界だけでなく)実は社会的にも大変大きな問題をはらんでいて、軽々にここに詳細を書くわけにはいきません。
問題がある程度解決に向かってから、後日整理して追記を書くことにいたします。
(そういうわけで、写真も少しボカシを入れてます。)

防水的にかなり危険な施工が最近多いと感じる・2 … 建築監理・第三者監理2017/04/07

防水処理の間違い
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防水処理の間違いというか不良工事・その2

ベランダの防水はFRP防水紙上げなのだが、下地の水勾配床を施工する前になぜか出入口の窓下にアスファルトルーフィングの下張り処理がなされてサッシの取付けが終っている。上部をまったく雨養生をしていないので、ベランダの床合板の上には水が溜まっている。
一瞬どういうことなのか理解出来なかったが、サッシにはビスまできちんと打たれているので仮留めというわけではないのだろう。

本来ならばバルコニー床の防水下地を作り、FRP防水を窓台まで巻込み、その上でサッシを取り付けるという順序のはずが、一般の窓サッシ取付けの要領で施工してあるのがNGです。
ここのサッシ下の防水処理は、アスファルトルーフィングではなくFRP防水巻込みが正しい。ましてや下地施工前の取付けでは施工順序もチグハグです。
防水下地作りで1日、FRP防水施工で半日、と2日もあれば防水施工が終るのに、施工の手順を間違えると(天気にも見放されるのか?)雨に降られてしまい、下地が濡れてさらに施工が進まないという悪循環に落ち入ってしまっている。

いずれにせよ、この施工ではNGなので、サッシはいったん外して、防水下地を作った上でFRP防水をして、窓台部分もFRPで巻込み、その後に再度サッシの取付けを行なうことになるでしょう。まずは、濡れた合板が乾かないと次の作業も出来ないのですけどね。

まったくこんなことをしていては、二度手間、三度手間です。

防水的にかなり危険な施工が最近多いと感じる … 建築監理・第三者監理2017/04/06

安易な雨水対策
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最近の住宅の施工検査で、防水的にかなり危険なことが安易に行なわれているなぁ、と強く感じています。

それも、デザイナー系の住宅にその傾向が見られます。
外観のデザインを考えてのことなのか、外周面にパラペットを回して、軒を作らずにFRPで防水した排水溝に雨水を溜めて排水するという形式のものをたまに見かけますが、これがかなり怪しい作りになっています。

これがベランダなどであれば日常的に人も目に触れますし、管理も出来ますし何かあっても対処はし易いのですが、屋根の上だともうお手上げです。
人の目が届かない箇所での漏水トラブルの場合、被害がかなり広がってから気が付く、ということになります。

特にデザイナー住宅と呼ばれるものの中で、施工が主体の会社が元請けになって契約を交わしているものは施主も相当に注意が必要と言えます。
設計者は外部ブレーンと言う形態で施工会社と契約して設計業務をしているので、工事が始まってしまうと工事管理をすることも現場に来ることも無く、トラブルに親身に対処してくれるとは限らないのです。

全てがそうとは言いませんが、私のところに持込まれる検査案件を見ると、単に施工上の問題というよりは、設計時にきちんとした図面を描いて指示を的確にしていればこうはならなかったのに、というものが多々見られます。

人の手が入らないような狭い溝での施工を強要するような残念な納まり、排水穴が何かでふさがり水位が少しでも上がるととたんに漏水する危険を含んだディテール、複雑な形状の屋根に対し安易にFRP防水を多用してしまうような施工態度、などなど、、危なっかしい設計や施工が数多く見られます。

こういった傾向のあるケースでは、防水や止水の問題だけでなく、構造的にもかなり怪しい図面が出てきます。平面図・断面図と構造図とで整合性が取れていない、ということも多く見られます。
こうした図面上の食い違いやディテール図不足で施工に突き進んでしまうと、まず間違いなく施工間違いが複数発生します。
本来は図面を見ればどう造れば良いのかが解るはずなのが、現場監督が実際に施工をする大工さんらに現場で指示してあげないとどう造って良いか解らない、なんてことになってしまいます。やがてそれが、施工ミスが連発することにつながっていきます。
ですので、間違ったまま工事が進んでいかないように、現場監督とは別にそれらをチェックする人(第三者監理など)が重要なのです。


施工会社で用意する「第三者機関」は、建前は立派ですが、往々にして検査やチェックはおざなりでかなり甘い、是正指摘の判断についても、当然お金を払ってもらっている施工会社寄りになります。
今まで私のところで行なってきた多くの第三者監理の検査の中でも、こうした検査会社のチェックを合格した後に検査に行くと、いくつもおかしなところが出てきたり、その先の施工を見越したチェックなどはまったく考慮されていない、というような事例が多く見られます。

日本で日々建てられている多くの住宅で、こういったミスが是正されないまま見過ごされ建てられてしまっているのでしょうね。
人生の中でももっとも高い買い物だと思うのですが、、、!

ローコストだから欠陥住宅?ってことはないのだが … 建築監理・第三者監理2017/03/15

サンプル写真
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今日(2017年3月15日)の文春オンラインで流れていたニュースのなかで、とても気になる記事がありました。

「ローコスト住宅のハウスメーカー「秀光ビルド」の物件に、建築基準法違反など“欠陥住宅”が続出している」というものです。

「秀光ビルドは1991年に石川県で創業し、北陸から関西、中部、東北へとシェアを拡大。現在までに手掛けた住宅は全国に1万戸弱ある。」ということでしたが、関東地方ではまだそれほど進出してきていないのか、私は監理や施工調査を依頼されたことはまだありません。

記事の中ではさらに、「中堅ハウスメーカーの営業マンが明かす。」として、「秀光ビルドは一棟1000万円を切るようなローコスト住宅が売りですが、現場監督は常に一人で10件程度の案件を抱えて疲弊している。そのうえ、単価が安いため腕のいい大工が確保できずにトラブルが頻発している。施主が支店に怒鳴り込むことも多く、会社側は訴訟になる前に補償金を支払い、クレームを抑えている」などと書かれていますが、、、

前半部分はどの格安住宅メーカー(パワービルダー)もほぼ同じ条件でしょう。
後半部分は、請負金額が低く設定されていれば、腕の良い大工を雇えないのはある意味しょうがないことです。
ローコストであるには、それなりのちゃんとした理由があるのですから。

ですが、腕の良い大工を雇えない=欠陥住宅が出来る、ということは必ずしも言えません。

なぜならば、今のハウスメーカー系の木造住宅の施工現場では、実際に大工さんが腕を振るえるような場面などそうそう無い、と言えるからです。

大工さんの仕事である「木工事」に関して言えば、工場で木材をカットして、組立て順に番号を付けられた部材(プレカット材)をトラックで現場に運び込み、現場で梱包を剥がして、順番通りに組立てていく、という作業が主になってしまっている今の工法では、大工さんの腕の善し悪しはあまり考慮されていません。
裏を返せば、少し訓練を受けた若手の大工さんなら、そつ無く組立ててしまえるのです。
工法自体がそういう風に出来ているからです。


一昔前の大工さん、職人さんの中には、「あの人は、口も態度も悪いのだが、仕事は出来るねぇ!」なんて人も居たのかもしれませんが、今は「口や態度が悪い大工は、絶対に良い仕事は出来ない!」と言えるでしょう。

「腕」に差を求めないとするならば、今のハウスメーカー系の大工さんに求められている素質は、きれい好きで時間を守れて、細かいことにもよく気が付き、他の職方とトラブルを起こさず、むしろ調整役をこなせるようなオールマイティーな職人、ということになります。

ですので、そういう意味での大工さんのランク付け、というのは確かにあります。


その一方で、態度も性格も悪く、怠け癖の付いた無精な職人、というのは現実にはいますし、まったく訓練を受けていない職人(風)のアルバイトが大事な仕事をしている、なんてこともあります。
そういう職人が手がけた現場の検査をしたことが過去ありますが、1カ所・2カ所といった間違いではなく、ほとんど全ての仕事が汚くていい加減で、全てに渡って不適格な施工でした。
本来、そういうものづくりに不適な人が現場に入ってこないように、きちんと現場を管理するのも現場監督の大切な職責なのです。それがコントロール出来ていないと、知らず知らずに不良住宅・欠陥住宅を造ってしまう原因となってしまいます。

現場監督が現場にいないのは、今ではすでに常態化・常識化していますので、それをハウスメーカーに求めても仕方ありません。

であるからこそ、施主自らあるいは施主の目で検査をする第三者監理者による検査体制が今の建設現場には不可欠なんです。

20年前の設計図書の資料管理について … 建築監理・建築設計事務所2017/02/28

保存図書
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今からちょうど20年前に設計をし、竣工した商業施設のオーナーから今日連絡がありました。

当時(平成9年竣工)の設計図面・竣工図書が、私の事務所に残っていないだろうか?という問合せでした。

地ビールプラントを併設したレストランと広い露天風呂が特徴の天然温泉の温浴施設からなる複合商業施設で、けっこうな山の中に建っています。
当時、温泉は源泉掘削から立合い、自然の山の傾斜に合わせて各建物の配置計画をし、地ビールプラントに関してはドイツから専門の醸造技師を招き入れて、現地でやり取りを重ねながらプラント部分の設計・プランニングをしていましたので、大変時間の掛かる仕事をしたなぁ、という思い出があります。

平成23年に起こった東日本大震災では少なからず施設建物や設備関係に被害が出ましたが、地ビール工場とレストラン、温浴施設ともに今でも全てきちんと稼働しています。
竣工時よりも増築している分だけ、施設としては大きくなっていて、今もなかなか繁昌していると言っていました。


建築士法では、設計事務所にあっては設計図書または工事監理報告書の保管期間を15年(平成19年に士法が改正される前は5年でした)と「建築士法」で定めています。
保管すべき資料は、1:配置図・各階平面図・二面以上の立面図・二面以上の断面図、2:基礎伏図・各階床伏図・小屋伏図・構造詳細図・構造計算書
などが保管の対象となっています。

また、建設業者にあっては士法とは別に「建設業法」で定められていて、保管すべき期間は5年または10年と義務づけています。
同様に保管すべき資料は、1:完成図(竣工図)、2:発注者との打合せ記録、3:施工体系図、などです。


物置の中を引っ掻き回して、当時の設計図書一式と縮小版の竣工図面、当時の引渡し書類など資料一式を引っ張り出してきました。
上の写真のように、一式を出してみると机の上が占領されるほどのボリュームがあります。(実際にはこの他に、議事録や竣工写真、工事写真など雑多な資料が残されています。)
自分でいうのもおかしいのですが、20年前の図書とは思えないほどきれいな状態で残っていました。
全て青焼き図面ですけど、日焼けもせずきれいでした。
建築の設計図面は、細かいディテール図や露天風呂の詳細図などを除いて、全て当時のCADで作成してあります。

CADデータも最初はフロッピーディスクでバックアップ保存をしていましたが、そのうちMOディスクになり、それも古くなるとCDやDVDになり、その後大容量の外付けHDDにデータを移し替えて、というようにこの20年間で、ハードウエアに関しては更新・更新で残し続けてきたのですが、いかんせんCADファイル自体が古くなり過ぎていて、今となっては正確に読み込んで・表示をしてくれるソフトウエアがすでにありません。
(もちろん、図面自体はPDFやJPGなどの画像データでは残していますが、レイヤー管理の出来るフォーマットではなかなか正確に保存しておくことが出来ないのですよ。)


そこにいくと、紙媒体は青焼きのインクが薄くなった部分はあるにせよ、何年経ってもいちおう読める、というのはなかなかすごいことですね。

でも、1物件でこの量ですから、倉庫には何物件ものこういった資料類が山積みに眠っている、ということになります。
保存期間が過ぎれば破棄してもかまわない、とわかってはいるのですが、今日のようなことがあると、もう少し保存しておく方が良いのかなぁ、などと思ったりもしています。

まぁ、どこかでキリを付けてきっぱり破棄するか、施主側に保管を頼むかしたほうが良いんだろうな。

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