山の自然素材を使って作るアート(カエデ) … Nature Art・Workshop2021/11/07

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「秋を切り取る」をテーマにしたインスタレーション:黄葉したカエデ
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

山を歩き、広がる秋の景色を小さなフレームで切り取ってみる。

紅葉・黄葉・褐葉について:
木の葉には、緑色の色素である「クロロフィル」と黄色の色素「カロチノイド」がもともと含まれていて、普段は協力して光合成を行なっている。
この時点では「クロロフィル(緑)」の色素のほうが多いので、葉は緑色に見えている。クロロフィルとカロチノイドの比率は、8:1 程度だと言われている。

しかし、秋になって日差しが弱くなってくると、先に「クロロフィル(緑)」のほうが分解されていき、「カロチノイド(黄)」だけが葉に残ることになり、黄葉して見えることになる。

一方、多くのモミジなどは、「クロロフィル(緑)」が分解される際に葉の中に糖分が増えてきて「アントシアン」という紅い色素が合成され、紅葉することになる。

つまり、ふだん緑色の葉の中で、クロロフィルが分解されると残ったカロチノイド(黄色)が表に出てきて「黄葉」することになり、クロロフィルが分解されて、代わりにアントシアニンが次々に合成されると「紅葉」することになる。

さらに葉の老化が進み、アントシアニンやカロチノイドまでも分解され始めると、細胞内に多量に含まれるタンニンが、分解されたさまざまな物質やタンニンどうしが次々に結合していき、葉は茶褐色になる。つまり、枯れた状態になっていく。

簡単にいうと、紅葉・黄葉は葉の老化現象の一連の作用の過程なのだと言える。
(まぁ、そう言ってしまうと身もふたもないのだが、、、)


美しい紅葉の条件は、晴天が続き、十分な太陽光が葉に当たっていること。降雨量が少ないこと。昼と夜の寒暖差が大きくて、夜に急激な冷え込みがあること。と言われている。

さて、今年の紅葉はどうであろうか?

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山の自然素材を使って作るアート(ヤママユガ科の蚕・3種) … Nature Art・Workshop2021/11/05

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ヤママユガ科の繭3種
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

上から、ウスタビガ・クスサン・ヤママユガの蚕

ウスタビガ:(学名:Rhodinia fugax)ヤママユガ科、漢字で書くと薄手火蛾、薄足袋蛾。
薄い黄緑色の小型の繭を作り、自らの糸で作った柄を伸ばし、サクラやコナラの木の枝からぶら下がる。繭の中に水が溜まらないように、繭の下側には小さな排水穴が開いている。

クスサン:(学名:Caligula japonica)ヤママユガ科、漢字で書くと樟蚕、楠蚕。
大型のクスサンの繭は楕円形の固い網目状をしていて、この形状からスカシダワラ(透かし俵)と呼ばれる。

ヤママユ:(学名:Antheraea yamamai)ヤママユガ科、漢字で書くと山繭。別名、テンサン(天蚕)ともいう。
古くは野蚕(やさん)と呼ばれ野生の絹糸を採った。この繭からとった絹糸は「ワイルドシルク」と呼ばれる。

世界には、糸をつくる能力を持つ絹糸昆虫が約10万種もいると言われているので驚きだ。


冬枯れた里山を歩くと、木の枝や風で落ちた枝にぶら下がったヤママユガ科の繭を見かけることがある。
いずれも中の蛹(さなぎ)はすでに羽化していて、空き家状態になっているので、繭の一部には羽化した際に食い破って出て来た穴が空いているのが見える。

キョロキョロとあちこち気にしながら歩いていないと見過ごしてしまいなかなか見つけられないものだが、逆に慣れてくると居そうな気配を感じていくつも見つけることができる。
ただ、いずれも長期間風雨や日光に晒されているので、キレイなものを探すのがなかなか大変だ。

ヤママユガ科の繭はそれ自身が立派な力作なので、とても観察しがいがあるよ。

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山の自然素材を使って作るアート(ススキ) … Nature Art・Workshop2021/11/03

秋を切り取る1
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「秋を切り取る」をテーマにしたインスタレーション:ススキの穂と秋の空
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

山を歩き、広がる秋の景色を小さなフレームで切り取ってみよう、というインスタレーションを数年前に丹沢で行っていた。
この新型コロナウイルスの騒ぎで中断しているが、そろそろ再開してみるのも良いのではないかと思っている。
作品としては「写真」だけになるが、この試みは参加者一人一人の「秋」の感じ方がそのまま作品に表れるのがおもしろい。

カメラは高機能な一眼レフでももちろん良いのだが、ここではスマホでの撮影を基本にしている。
スマホの方がそのまま直ぐに参加者同士でやり取りができるからだ。

撮った写真をそのまま使ってもよし、スマホについている画像処理機能を使って加工するのもよし、一つのインスタレーションとして作り込んでみようという試みだった。また、一枚で完成するもよし、連作で表現するもよし、発想と表現方法は自由なのだ。

俯瞰的に秋の景色を眺めるのももちろん美しいが、自分でテーマを絞りそれをいろいろな角度から観察し自分の作品として表現していく、という行為が自然をより深く感じることにつながるのだよ、と参加者には説明をしている。

写真は、開き気味のススキの穂を逆光でフレーム内に取り込んでみた。

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山の自然素材を使って作るアート(スズメノヤリ) … Nature Art・Workshop2021/10/18

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:スズメノヤリ(雀の槍)
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

スズメノヤリ(雀の槍、Luzula capitata):イグサ科スズメノヤリ属の多年生草本。

茎は地中にあり、地表に根出葉を出してそこから10~30cmの花茎を伸ばし、茎頂に1つに集まった花序を付ける。
根生葉はイネ科植物特有の線形の細長い形をしている。
この属の植物は温帯から亜寒帯にかけて分布し、60~80種もあるとされ、日本にはそのうちの10種ほどが生育している。

果実は朔果で種子は3個。種子はエライオソームを含み、それを目当てに集まるアリたちによって散布される。
植物は子孫繁栄のために種子をさまざまな方法でできるだけ広い範囲に散らす仕組みを持っている。
自ら種子をまき散らすもの、水や風の力を利用するもの、動物の毛に絡まって移動するもの、植物たちはその進化に合わせて様々な工夫を凝らしている。

種子散布の一つの方法とスズメノヤリは、アリによって種子を拡散散布させる方法を編み出した。
種子にアリの好む誘引物質(エライオソーム)を忍ばせ、アリに種子を巣まで運ばせるのだ。アリの巣に運ばれた種子はエライオソームだけがアリの餌になり種子そのものは巣の外に捨てられる。まさに、スズメノヤリのねらい通りだ。

こうしたアリを利用した種子散布の仕組みを持っている草本は200種ほどあるという。「アリ散布植物」というのだそうだ。
身近なところでは、スミレやムラサキケマン、フクジュソウ、カタバミ、ホトケノザ、カタクリ、などがある。
どれも種子自体はアリが運べるサイズ(直径1mm程度)である必要があるので、かなり小さい。観察にはルーペが必要となる。

花茎の先端の花のかたまりが、大名行列で用いられた毛槍(けやり)に似ていることが和名の由来だ。
和名に「スズメ」という枕言葉が付けられた植物がいくつかあるが、姿かたちが小さいからそう名付けられるのであろう。

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山の自然素材を使って作るアート(ヒメウズ) … Nature Art・Workshop2021/10/17

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ヒメウズ(姫烏頭)
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ヒメウズ(姫烏頭、Semiaquilegia adoxoides):キンポウゲ科ヒメウズ属(オダマキ属と表記されることもある)の多年草。
関東地方以西の日本各地に生育する。丹沢でも林道の林縁部や畑脇などで普通に見られる。
春早く(3~5月頃)に白い小さな花を咲かせるが、花は下向きに咲くため、気を付けていなければ見過ごしてしまいそうだ。
キンポウゲ科特有の形状を持つ果実(袋果)は3~5個に分かれ、結実すると上を向いて種子散布の準備に入る。果実が熟するとそれぞれの果実は左右に割れて、種子が顔を出す。

和名の「姫烏頭」は、烏頭(トリカブト)に似て小柄であることによる。
全草毒草であるが、中国では葉や根を乾燥させて漢方として解熱や利尿に用いるという。

作品づくりにあたっては、茎も細く、果実も小さいため、何本かをまとめて群生として表現してみた。
果実の中に花が混じっているのがちょっとしたアクセントになっている。

和紙を細く切って何カ所も留めているのだが、出来上がってみるとそれほど気にならない仕上りになっている。

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ミズキの木とアゲハモドキの幼虫 … 自然観察・WanderVogel2021/10/16

アゲハモドキの幼虫
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アゲハモドキはアゲハモドキガ科に属する蛾の一種で、成虫になると毒をもつジャコウアゲハにそっくりの姿になる。

アゲハモドキの幼虫はミズキの葉を食べる。体長3センチほどの幼虫は白い「毛」に覆われているが、実際は毛ではない。 毛に見えるのは幼虫が体表に分泌したロウ分で、柔らかそうに見えるが触るとベタベタした粉末が手に付く。

一方、擬態される側のジャコウアゲハ(アゲハチョウ科)は、アルカロイド毒成分を含むウマノスズクサの葉を食草としている。幼虫時にこの葉を食べることで体内に毒素をせっせと貯えるのだ。
アゲハモドキはそのジャコウアゲハに擬態することで、天敵である鳥から身を守っている。

しかし、幼虫のうちはジャコウアゲハの特徴的な姿とは似ても似つかない姿をしている。鳥に一番狙われやすい幼虫の時はまったく無防備なようにも見えるのだが、もしかすると、このロウ分が非常に不味くて鳥に敬遠されていて、捕食対象にならないのかもしれない。

昆虫の擬態手法にはではさまざまなタイプが見られるが、最も多いのは、食べられないようにするための「擬態」だ。
昆虫は鳥や小型動物の格好のエサになるため、進化の過程でそれを避けるさまざまな工夫を生み出してきたのだ。

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丹沢山中の林道脇にひっそりと咲くマヤラン … 自然観察・WanderVogel2021/10/11

マヤラン:ラン科シュンラン属
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昨日の自然観察でのスナップ。
マヤラン:ラン科シュンラン属の植物。Cymbidium macrorhizon
学名からも解るようにシンビジウムの仲間だ。漢字で書くと「摩耶蘭」

マヤランは根も葉も無い変わった植物だ。
腐葉土のような林床から明るい薄緑色の花茎を伸ばし、今まさに花びらを開こうとしていた。

マヤランも以前に書いたギンリョウソウモドキとまったく同じ仕組みで生きている。地下の菌類(キノコなど菌類の地中菌糸を消化して栄養を吸収している)から栄養を受け取り生存を維持している。菌従属栄養植物と呼ばれる不思議な生態系を持った植物の仲間なのだ。
マヤランは環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に分類されているが、丹沢では運が良ければ林道脇でも普通に見られる。

怪しい姿をした「ギンリョウソウモドキ」と違い、「マヤラン」の方はいかにもか弱く可憐な姿に見える。
明るい色調の花びらを持つマヤランは自動自家受粉をするので、花粉を媒介する虫に頼らなくても着実に実を結ぶことが出来る。
かたやちょっと薄気味悪い形態をしているギンリョウソウモドキは虫媒花なので、媒介する虫の助け無しには結実しない。姿かたちだけ見ていると全く逆のような気がするのだが、植物の進化というのはまったく不可思議なものだ。

いや、これは人間の一方的な思い込みなのかもしれない。
人間よりはるかに長い歴史を持ち、種類も数も多い「虫」たちにとっては、人の美意識とは全く逆の価値観と決まった植物との間で交わした生存に関する古い契約をいつまでも忘れないでいるのかもしれんな。

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山の自然素材を使って作るアート(オランダミミナグサ) … Nature Art・Workshop2021/10/03

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:オランダミミナグサ
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」
それぞれ自分で作った作品(植物の特徴、個性、仕組み)の詳細を良く確かめるためには、ルーペを常に用意しておくことが肝要だと思っている。

オランダミミナグサ(和蘭耳菜草、Cerastium glomeratum):ナデシコ科ミミナグサ属
ヨーロッパ全土が原産地ということで、特にオランダが主要な原産地というわけではない。日本には明治時代末期に帰化していることが確認されている。
今では、外来種として世界中に分布している「雑草」だ。花期は3~5月。
オランダミミナグサの茎はふつう直立し、緑色で全体に腺毛(せんもう)と呼ばれる、触るとべたつく毛が生えている。卵形~長楕円形をした可愛らしい小さな単葉が対生して取り付く。

オランダミミナグサは花弁より萼片の方がかなり短いので、閉じた時に花弁が上にはみ出て見える。
対して日本在来種のミミナグサ(Cerastium holosteoides var. hallaisanense)は、萼片と花弁の長さがほとんど同じで、花が閉じたとき花弁が隠れる。
種子は0.5mm程度のごく小さなサイズだ。

また、在来種のミミナグサは茎や萼片の色が暗紫色で、茎が緑色のオランダミミナグサとは外観でも区別出来る。
ミミナグサ(耳菜草)の和名は、対生する小さな葉をネズミの耳になぞられ、「菜」は、食用とされる植物であることから付けられたようだ。
なかなか可愛らしい命名の仕方でこれには僕も妙に納得させられた。

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山の自然素材を使って作るアート(ハナダイコン) … Nature Art・Workshop2021/09/27

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ハナダイコン
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ハナダイコン(花大根、Orychophragmus violaceus):アブラナ科オオアラセイトウ属(ショカツサイ属)
別名オオアラセイトウ・ショカッサイ

果実は、長さ8〜10cmの細長い長角果で4稜があって開出斜上する。熟すと裂開して種子を蒔き散らす。
種子は写真にあるように、黒褐色~淡褐色で長さ2〜3mmの長方形をしている。表面には網目状の凹凸がある。

中国原産で、日本には江戸時代~明治始めに渡来したとされる。花がダイコンの花に似ていることからこの名前になったと言われる。
中国ではこの植物を食用として栽培しているようで、「諸葛菜」(しょかっさい)という別名の由来は、三国志で有名な中国三国時代の諸葛孔明(しょかつこうめい)が戦で出陣する際にその先々でこの植物の種子をまき、兵士の食糧となるよう栽培した,という故事からきている。

同じくハナダイコンと呼ばれるものにセイヨウハナダイコン(Hesperis matronalis)という植物があって、写真の学名はそれと間違えて当初作ってしまったもの。(写真は修正前のもの)セイヨウハナダイコンはハナスズシロ属で、ハナダイコンとは属が違い別種のものになる。

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あまりに酷い命名「継子の尻拭」 … 自然観察・WanderVogel2021/09/26

ママコノシリヌグイ
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昨日の自然観察でのスナップ。
ママコノシリヌグイ:タデ科イヌタデ属のツル性植物。Persicaria senticosa

漢字で書くと「継子の尻拭」
和名の由来は、血の繋がっていない憎い継子(ままこ)のお尻を、鋭いトゲのある葉や茎で拭いていじめた、ことからきているという。
Wikipediaを覗いてみると、「韓国では「嫁の尻拭き草」と呼ばれる」とも書かれているので、もともとの出所はそのあたりにあるのかもしれない。

丹沢あたりの低山では林縁部に群生しているのをよく見かける。茎・蔓に付いた細かいトゲで他の植物に巻き付きながら広範囲に蔓延る。
蕾みや花自体は米粒くらいの大きさなのだが、鮮やかなピンク色が遠目でもよく目立つ。

同じ属に良く似た「アキノウナギツカミ」という植物があるが、こちらは秋に花が咲いて、そのトゲトゲした茎を使ってあのヌルヌルのウナギでさえも容易に掴めそうなことから「秋の鰻攫」と名付けられた。
アキノウナギツカミは水辺で多く見られ、ママコノシリヌグイは野山に多く見られることで命名の差が生まれたのであろう。

ママコノシリヌグイ、花はこんなに可愛らしいのになんていう命名なのだろう。
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