温泉の安全性:レジオネラ菌対策と温泉吐水口の関係2008/01/30

最近では「秘湯?」の温泉情報ですら簡単にかつ大量にネット上で収集することが出来る。数年前、新聞でもたたかれた天然温泉偽装はまだ記憶に残っていることだろうが、「源泉の価値」は一体どこで決まるのだろう? 「温泉の効能」はその泉質・含有量によって決まりますが、同じ泉質でも掛け流しと循環式では表記は同じ泉質でも内容や印象は違います。昔からの自噴温泉地では問題はないのであろうが、最近多い深部からのくみ上げ温泉では資源の有効利用から循環式で利用されることが多い。そしてこの循環式温泉ではどうしても殺菌/滅菌を前提としなければならなくなる。
「掛け流しの温泉」とは温泉源泉を直接浴槽に流し込み、入れた分だけ捨てる温泉浴槽のことをいう。したがって温泉をくみ上げていったん貯湯タンクに溜め、そこから浴槽に入れ込むようなシステムを組むと厳密には「掛け流しの温泉」とは言えなくなってくる。レジオネラ菌などの雑菌類は土中には存在しないが、地上にくみ上げるとどうしても菌の侵入をゆるしてしまうことになるので、タンクにいったん溜めると菌に汚染される可能性がでてくる。したがって煮沸して殺菌するか、塩素系やオゾン殺菌など何かしらの殺菌/滅菌対策をとって初めて温泉の使用許可がおりることになる。
私の事務所では設計の仕事の内、温泉施設やお風呂の設計デザインがかなり多い。今週も1件、温泉の打ち合せに行くのですが設計上重要なことのひとつにこのレジオネラ菌対策がある。温泉の泉質に関係なく「掛け流しの温泉」でない限り、レジオネラ菌対策が温泉施設の設計にはついて回る問題である。厚生労働省告示・公衆浴場法や保健所指導では設備機器だけでなく、掛け流し式以外の循環式の浴槽での浴槽へのお湯の入れ方にも規制がかかる。私たちが天然温泉でイメージするのは、吐水口からお湯が溢れて滔々と浴槽に注ぎ込まれる「温泉」の姿であるが、循環式温泉ではこれは出来ない。殺菌された“温泉”は空気に触れることなく浴槽に入れ込まねばならないという決まりがあるからだ。この法規の出来る前に作られた施設では適用されないので、「温泉」らしさを演出できているのだが・・・ 衛生的安全性の確保とはいえ やはり、お湯の溢れない吐水口では雰囲気は出ないよなあ。
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