山の自然素材を使って作るアート(ヤマノイモ) … Nature Art・Workshop2021/08/20

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「タネ・種子」に注目して作った標本風のサンプル作品:ヤマノイモ
「森林インストラクターと山を歩き、山で収集したもので作品を作ってみよう」という“森のワークショップ”の一環で作成した、WS用の個人的な「習作」

ヤマノイモ属のつる性植物は丹沢ではヤマノイモのほか、オニドコロ、ニガカシュウ、カエデドコロなどいくつか混生して見ることが出来るが、みな良く似た形状をしているので見分けるには少しコツが必要だ。

ヤマノイモ(山の芋)Dioscorea japonica:ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。雌雄異株。
日本原産で、粘性が非常に高い。ジネンジョウ(自然生)、ジネンジョ(自然薯)、ヤマイモ(山芋)とも呼ばれる。
雄花は直立し白い花を咲かせ、雌花は下に垂下がって咲く。
葉はヤマノイモ属の中で唯一対生なので、見分けは付き易い。また、葉腋にムカゴ(零余子)が付くのも特徴のひとつだ。

果実は蒴果(さくか)で大きな3つの陵があり、下向きにつく。
それぞれの陵の中に2つの種子が入っている。果実が熟すと針金状の留め金がはじけて裂開し種子が放出される。種子の周りに出来た薄くて大きな膜を使って風に乗り遠くに飛ばされる。ただし、ムカゴによる繁殖のケースの方が多いのだともいわれている。


オニドコロ(鬼野老)Dioscorea tokoro:ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。雌雄異株。
雄花は直立し淡黄緑色を咲かせ、雌花は下に垂下がって咲く。ムカゴは付かない。
オニドコロは葉はヤマノイモに比べ丸く、葉が互生で付くので見分けられる。オニドコロのイモには有毒成分があって食べられない。ヤマノイモと間違えて食べて苦しむ人もいるが、アク抜きをすれば食用出来るともいわれている。オニドコロの毒の成分はサポニンの一種とシュウ酸カルシウムで多くは水溶性。シュウ酸カルシウムは加熱処理である程度無効化することができる。とは言え、一種の救荒植物的な扱いでの話であろう。

果実は蒴果でヤマノイモとは逆に上向きに出来る。
種子の周りにはヤマノイモ同様に薄い翼があるが、ヤマノイモと比べずいぶんと小振りだ。なので、飛翔能力も高くはない。上向きの付く果実はヤマノイモと違って稜/殻は全開せず、先端から3分の1だけ開く。殻から吹き飛ばされるほどの強風が吹くときだけ種子は散布される仕組みなのだ。理にかなった実に良く出来た種子散布システムだ。


ニガカシュウ(苦何首烏)Dioscorea bulbifera:ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。雌雄異株。
雄花(紫色)雌花はともに下に垂下がって咲く。
葉の形は普通のハート型で互生して付く。オニドコロの葉と似ているが、大きさはヤマノイモ科では一番大きく、15cm位もあるのも見かける。
葉脈に規則正しく横に走る側脈があるのもニガカシュウの特徴。ニガカシュウの葉柄の基部と上端には独特の縮れた襞(ひだ、ひれ)がある。
葉腋にムカゴ(零余子)が付くが、ヤマノイモのムカゴに比べるとゴツゴツした突起があってイビツな形をしている。
根もムカゴも苦みが強くて食用には向かないかな。


ヤマノイモの作品制作にあたっては、枯れた果実のサンプル採取は非常に容易でいくらでも手に入る素材のひとつだ。
蔓と枯れた果実のバランスを見ながらレイアウトし、薄い翼の付いた種子をアレンジすると作品は出来上がる。フォルム自体がキレイで面白い形をしているので、そこを活かして楽しみながら作ると良い。
上記のように似たツル植物の種子散布方式の違いを頭の隅に思い浮かべながら作っていくとより理解が深まるだろう。

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