古民家調査/実測調査と補強工事 … 邸園/文化財保全・HM2012/11/25

古民家実測調査
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昭和初期に建築された洋館住宅の実測調査(補強工事の検討)に行ってきました。

床下は結構高さがあり乾燥状態も良く、床組自体はそれほど痛んでいない感じですが、自然石の束石に乗っただけ(「石場建て」と呼ばれる工法)の束の一部は、白蟻に喰われて断面が細くなっています。
レベル測定をするとひとつひとつの束石自体がバラバラに沈み込んでいますので、あちこちジャッキアップして床レベルを水平にしながら家全体の歪みをとっていきます。

土壁の上に漆喰を塗って仕上げた建設当時からの壁は、床の一部をジャッキアップするたびにクラックが入りますが、まず土台下の水平を取ってから順次 壁の仕上げや建具の調整、そして小屋組み、屋根と上の方へと工事を進めていきます。

この住宅、オーナー自身の趣味心なのか、遊び心を持った大工さんが造ったのか、各部のディテールには木を彫って細工をした凝った造りの飾り物がついていたりして、なかなか楽しめます。

ただし、こういった昔の工法で同じように住宅など建物を今造ろうと思うと、法的に非常に高いハードルがあります。
これは新築に限らず、改築/改装や修繕(耐震補強)などでも同じです。

金物に頼らない従来の日本の伝統工法、木組みや土壁・基礎と上屋を緊結しない「石場建て」など、建築基準法に位置づけのなかった要素を持った伝統的な木造住宅を合法的に建てることは、2007年の改正基準法施行による建築基準法運用の厳格化で、多大な費用と時間のかかる「構造適合性判定」を通さないと着工・建築することができなくなり、かなり建てにくい状況になっています。

この状況を打開するために、「NPO法人 緑の列島ネットワーク」という団体が「伝統的構法の設計法構築および性能検証実験検討委員会」という委員会を立上げて、伝統構法の設計法についての具体的な検討や実大振動台実験とともに、伝統構法に関する調査、伝統構法に用いられる材料に関する実験等の検討を積み重ねてきて、指針づくりもあと一歩というところまで来ている、と聞かされていました。

ところが、つい先月になって「日本建築学会」がそれとは別の設計法「伝統的木造建築物構造設計指針・同解説」を作成して、来年早々にも出そうという動きが急に持ち上がってきて、ここにきて 何やらキナ臭い感じになってきています。

「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会:
http://www.green-arch.or.jp/dentoh/research_committee.html

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