浦安市に現存する昔の町家/商家(明治二年/1869年) … 邸園/文化財保全・HM2012/11/05

浦安の昔の町家建築
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浦安市の現場施工打合せの帰り道で、また興味深い民家(町家・商家)に出会いました:浦安市指定有形文化財住宅。

現場打合せの時に「清瀧神社」への道を教えられ、歩いていますと手前にこの「旧宇田川家住宅」が建っていました。その佇まいといい、プロポーションといい、細部の造作といい、美しい町家(商家)建築です。

教育委員会の立てた説明書きには、明治二年(1869年)に建てられた住宅で、浦安市に現存する古民家ではもっとも古いものだそうです。
明治二年といいますと、(10月15日のBlogでも書いたように…)戊辰戦争の最終戦(函館/五稜郭での戦い)が戦われている時ですよ。

細部を見ますと、明治初期の住宅の造りというよりも、江戸時代の町家(商家)建築の造り・面影・ディテールが目につきます。

内部も一般公開されているようでしたが、今日は時間が無くて外観を道路側からサッと眺めるだけで通り過ぎてしまいました。残念でした。

次回は少し時間を作ってじっくりと見学させてもらいます。

前回Blog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/10/24/
関連Blog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/10/15/
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川俣 正 展/YOKOHAMA Expand BankART … ART/Architecture2012/11/10

川俣 正
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横浜の赤レンガ倉庫が正面に見える運河沿いにBankART studio NYKは建っています。

そこで今やっている展覧会、世界的に有名な芸術家「川俣 正」氏のインスタレーション展です。
1953年に作られた旧日本郵船倉庫を「みかん組」が改装設計したBankART studio の1階から3階までの広いコンクリート打ち放し空間を自由に使った、「川俣 正」氏のインスタレーションが圧巻です。

会期は2012年11月9日から2013年1月13日までで、すでに始まっているのですが、まだ全然出来上がっていません。
まさに今 作品を作っている最中ですが、そこが川俣氏の芸術性の真骨頂でもあります。

縁があって今日はサラッと見物しただけですので、会期中にもう一度しっかりと時間をつくってこの空間に身を置きたい。


土壁の世界/現役で使われている50年前の鏝 … 邸園/文化財保全・HM2012/11/12

左官道具 鏝
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日本の伝統的な建築材料である「土」、土蔵造りから茶室・数寄屋造りの建物まで多くの日本建築には無くてはならない材料であり、伝統工法のひとつです。

先日行なわれた歴史的建造物の保全活用に関するレクチャーでは、その中でも土蔵造りの「蔵」の成り立ちや実際の(建設)製作工程について、かなり突っ込んだ話しを聞くことが出来ました。

建築設計の仕事を長年していて、昔の立派な「蔵」を見に行くことはあっても、なかなか正式な土壁造りの「蔵」の製作工程を知る機会は少ないものです。
土蔵造り壁の原寸大モックアップ模型を前にして、左官の親方(その世界ではプロフェッサー級だそうです)から丁寧に製作工程を解説してもらい、土蔵の奥深さをあらためて知ることが出来ました。

自然素材の持つ完璧な調湿機能にも驚かされますが、それを「土蔵」という形にして収蔵物を守り伝えていく「タイムカプセル」を造り出した先人の知恵にも敬意を払います。

完成まで最低でも20回以上塗り重ねては乾かし、また塗り重ねるという工程を積み上げて造られた土蔵に、最後に漆喰などによる化粧を施し、さらに「鏝絵」などで飾り付けた「蔵」の魅力はその姿形だけでなく、「土」の持つ自然の機能を最大限に引き出した左官技術の集大成です。

土蔵をしっかり造るには、土を塗り始めてから完成するまで3年から5年の製作期間が掛かるというのも、その工程を聞くとうなずけます。

写真の数々の鏝(コテ)たちは、その左官の親方が修業時代から現在までずっと使い続けてきたもので、50年ものの鏝だそうです。
新品の鏝には出来ない表情が出せるということで、左官屋さんにとって「道具」であり「お宝」です。

「土壁」というとどうしても「茶室」の持つ魅力的なデザイン性・存在感のあるテクスチャーなどをイメージしてしまいますが、なかなかどうして「土蔵」も奥深いですぞ!

関連Blog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/10/02/
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へミスゴンパの祭りの思い出 1986 … WanderVogel2012/11/13

Hemis Gumpa1986
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強い紫外線に焼けた古ぼけた1枚の写真。
インドの北、ラダック/ザンスカール地方にあるへミス村、1986年夏。

ヘミス村はラダック最大の町レーから乗合ジープに乗って、インダス川源流を50kmほどを半日かけて遡ったところにあります。
毎年7月(チベット歴では5月)に、3日間にわたってここHemis Gumpa(ヘミスゴンパ寺)で、ラダック地方最大の祭りが行なわれます。

その祭りを見るために、1986年ジャンムー・カシミール州のスリナガルから、インダス川の切り立った渓谷をローカルバスに3日間揺られてラダックの中心地レーまで走り、ジープに乗り換えはるばるヘミスのお寺まで旅をしました。
(個人旅行でしたので、ニューデリーから陸路、汽車とローカルバスをうまく乗り継いで片道1週間から10日間ほどの行程でした。)

スリナガルからレーまでは4,000m級の峠を三つも越える過酷な道で、そのほとんどが富士山の数百メートル上を走っています。
なかでもゾジ・ラ(峠)はもっとも峻険な峠ですが、そんな道でも、頼もしい(!)TATA製オンボロバスはあえぎながら一生懸命走り続けます。

ラダックという言葉はチベット語で「峠を越えて」という意味

以前のBlog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/03/01/
WanderVogel World:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/cat/world/
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北アフリカ・サハラ砂漠の空の色 … WanderVogel2012/11/15

サハラ砂漠の旅
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若い頃、1ヶ月間アフリカのモロッコを旅したことがある。
マグレブ地方(北アフリカ)の都市や建築、そこに広がるサハラ砂漠を見るためだ。
砂漠に夕日が落ちるほんの一瞬、地表一面が鮮やかなオレンジ色に染まり、空は宇宙の濃い青に変わる。

標高5,000mを越える山の頂上で見る濃い空のように美しい光景がそこには広がっていた。

以前のBlog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/03/08/
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伝統技法研究会/大谷石建築の構法と歴史 … 邸園/文化財保全・HM2012/11/16

芦野石/石の美術館
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伝統技法研究会主宰で行なわれた連続講座2講目「大谷石建築の構法と歴史」に参加してきました。
(写真は以前行った、栃木県那須芦野にある隈研吾氏の設計した芦野石を使った石の美術館です)

前回は「江戸・東京の都市空間と石材」という題で、江戸から明治・大正・昭和と移り変わる時代の伊豆の石材と都市の関係の話で、横浜の洋館建築や東京の町家の中に残る石造の建築物などを取り上げながらのとても面白い講義でした。

今回は栃木県の大谷周辺で産出される「大谷石」の採掘の様子、その歴史、地元に今も多く残る石造りの蔵や建物、門などを例に取りながら、大谷石の持つ石材としての特性などを専門的に取り上げた密度の濃いレクチャーでした。

なかでも面白かったのは、日本にはその地域で産出される地元産石材を使った「石瓦」がけっこう普通に使われていたという事実でした。

東北地方の雄勝や登米の天然スレート瓦は有名ですが、大谷石や芦野石(白河石)、諏訪や佐久の鉄平石、八丈島の抗火石など手近にある割と容易に手に入るものを屋根材の素材として、地方地方がそれぞれに工夫して昔から使っていたことをあらためて再認識しました。

先日、上州富岡の「富岡製糸場」の煉瓦造りの繭蔵を見てきましたが、栃木県大谷周辺/鹿沼周辺にも見るべき建物が多く残っていますねぇ。
同じように製糸場として造られた栃木県鹿沼市にある「帝国繊維株式会社」の石蔵の写真も魅力的でした。
この建物、鹿沼で産出される深岩石と大谷石で造られた石蔵(大正初め)だそうで、2棟残ったうちの1棟が保存されています。ぜひ見に行きたい建物です。

鹿沼というと、ロッククライミングのゲレンデには毎年行っていますが、ここは勉強不足でした。

富岡製糸場のBlog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/10/15/
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森林インストラクター講習・南足柄の紅葉 … 森林インストラクター・WanderVogel2012/11/18

南足柄の紅葉
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今日は神奈川県南足柄にある「県立21世紀の森」で、神奈川県の森林インストラクター養成講座の野外実習に行ってきました。
森林づくりボランティアの方々の野外作業(間伐や下刈り、植栽など)を指導・サポートするためのインストラクター養成実践講習の一環です。

神奈川県(特に丹沢山地)には「丹沢県民の森」「やどりき水源林」「県立21世紀の森」など森林にふれあえる公共の場が20カ所近くあります。

今日行ってきた「県立21世紀の森」は、神奈川県西部の山北町の隣、ちょうど酒匂川を挟んで丹沢山地の(南側)対岸の丘陵に位置していて、その丘陵は金時山へと延び、箱根の山々へとつながっていきます。

この丘陵、標高250m〜650mとそれほど高くはないのですが、すでに針広混交林(植林された針葉樹林と広葉樹林が入り交じった山)の山全体が美しくモザイク状に紅葉していました。

紅葉前線はもうここまで下りてきたんですね。

前回Blog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/09/22/

古民家調査/実測調査と補強工事 … 邸園/文化財保全・HM2012/11/25

古民家実測調査
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昭和初期に建築された洋館住宅の実測調査(補強工事の検討)に行ってきました。

床下は結構高さがあり乾燥状態も良く、床組自体はそれほど痛んでいない感じですが、自然石の束石に乗っただけ(「石場建て」と呼ばれる工法)の束の一部は、白蟻に喰われて断面が細くなっています。
レベル測定をするとひとつひとつの束石自体がバラバラに沈み込んでいますので、あちこちジャッキアップして床レベルを水平にしながら家全体の歪みをとっていきます。

土壁の上に漆喰を塗って仕上げた建設当時からの壁は、床の一部をジャッキアップするたびにクラックが入りますが、まず土台下の水平を取ってから順次 壁の仕上げや建具の調整、そして小屋組み、屋根と上の方へと工事を進めていきます。

この住宅、オーナー自身の趣味心なのか、遊び心を持った大工さんが造ったのか、各部のディテールには木を彫って細工をした凝った造りの飾り物がついていたりして、なかなか楽しめます。

ただし、こういった昔の工法で同じように住宅など建物を今造ろうと思うと、法的に非常に高いハードルがあります。
これは新築に限らず、改築/改装や修繕(耐震補強)などでも同じです。

金物に頼らない従来の日本の伝統工法、木組みや土壁・基礎と上屋を緊結しない「石場建て」など、建築基準法に位置づけのなかった要素を持った伝統的な木造住宅を合法的に建てることは、2007年の改正基準法施行による建築基準法運用の厳格化で、多大な費用と時間のかかる「構造適合性判定」を通さないと着工・建築することができなくなり、かなり建てにくい状況になっています。

この状況を打開するために、「NPO法人 緑の列島ネットワーク」という団体が「伝統的構法の設計法構築および性能検証実験検討委員会」という委員会を立上げて、伝統構法の設計法についての具体的な検討や実大振動台実験とともに、伝統構法に関する調査、伝統構法に用いられる材料に関する実験等の検討を積み重ねてきて、指針づくりもあと一歩というところまで来ている、と聞かされていました。

ところが、つい先月になって「日本建築学会」がそれとは別の設計法「伝統的木造建築物構造設計指針・同解説」を作成して、来年早々にも出そうという動きが急に持ち上がってきて、ここにきて 何やらキナ臭い感じになってきています。

「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会:
http://www.green-arch.or.jp/dentoh/research_committee.html

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