土壁の世界/現役で使われている50年前の鏝 … 邸園/文化財保全・HM2012/11/12

左官道具 鏝
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日本の伝統的な建築材料である「土」、土蔵造りから茶室・数寄屋造りの建物まで多くの日本建築には無くてはならない材料であり、伝統工法のひとつです。

先日行なわれた歴史的建造物の保全活用に関するレクチャーでは、その中でも土蔵造りの「蔵」の成り立ちや実際の(建設)製作工程について、かなり突っ込んだ話しを聞くことが出来ました。

建築設計の仕事を長年していて、昔の立派な「蔵」を見に行くことはあっても、なかなか正式な土壁造りの「蔵」の製作工程を知る機会は少ないものです。
土蔵造り壁の原寸大モックアップ模型を前にして、左官の親方(その世界ではプロフェッサー級だそうです)から丁寧に製作工程を解説してもらい、土蔵の奥深さをあらためて知ることが出来ました。

自然素材の持つ完璧な調湿機能にも驚かされますが、それを「土蔵」という形にして収蔵物を守り伝えていく「タイムカプセル」を造り出した先人の知恵にも敬意を払います。

完成まで最低でも20回以上塗り重ねては乾かし、また塗り重ねるという工程を積み上げて造られた土蔵に、最後に漆喰などによる化粧を施し、さらに「鏝絵」などで飾り付けた「蔵」の魅力はその姿形だけでなく、「土」の持つ自然の機能を最大限に引き出した左官技術の集大成です。

土蔵をしっかり造るには、土を塗り始めてから完成するまで3年から5年の製作期間が掛かるというのも、その工程を聞くとうなずけます。

写真の数々の鏝(コテ)たちは、その左官の親方が修業時代から現在までずっと使い続けてきたもので、50年ものの鏝だそうです。
新品の鏝には出来ない表情が出せるということで、左官屋さんにとって「道具」であり「お宝」です。

「土壁」というとどうしても「茶室」の持つ魅力的なデザイン性・存在感のあるテクスチャーなどをイメージしてしまいますが、なかなかどうして「土蔵」も奥深いですぞ!

関連Blog:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2012/10/02/
・・・不定期につづく

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