カラムシと越後上布とへぎそばの関係 … 自然観察・WanderVogel2014/05/07

丹沢のカラムシ
- -
丹沢で見かけたカラムシの群生

南アジアから東アジア地域まで広く分布していて、日本では各地で見ることができる。というか、各地で栽培されていた、という言い方の方が正しい。

カラムシ(苧)とは、イラクサ科の多年性の植物で、葉は互生に付く。よく似たものにヤブマオという草があるが、こちらは葉が対生に付くので区別できる。カラムシはアカタテハの食草でもある。
と、ここまではなんてことの無い、ただの植物の説明文のようだが、実はこの草、茎の皮から丈夫な繊維が取れる。

なので、上代の時代より日本各地で栽培されていて、その繊維を紡いで高級な織物を作っていた長い歴史を持つありがたい草なのです。

別名は苧麻(ちょま・まお)、青苧(あおそ)ともいう。

特に戦国時代には、越後(新潟)が日本一のカラムシの栽培地となり、糸の原料として奈良や上方に運ばれ、高価な交易品として上杉謙信に莫大な軍資金を提供していたと言います。
江戸時代以降、南魚沼地方~小千谷・十日町市周辺の豪雪地帯で栽培されたカラムシは、糸の原料としてだけでなくこの地独特の織物としても発展していくことになります。

その繊維から織られ、この地特有の豪雪の中に晒されて(天然の漂白作用)生まれる「越後上布」「越後縮(ちぢみ)」「小千谷縮」は特に有名です。

カラムシの繊維はとても強靭なのですが、欠点は毛羽立ちやすいことだといいます。そのため、糸の表面を滑らかにするための「糊」として使われたのが「布海苔(ふのり)・海藻」だったのです。
布海苔は煮ると柔らかなゼリー状になるが、べたつかなくて扱いやすいと言います。


越後上布などの織物が盛んな地で簡単に手に入る「布海苔」
これを地元の蕎麦のつなぎとして使い、生まれたのが有名な「へぎそば」です。
ふのりは織物の糸の表面だけでなく、蕎麦の表面もツルツルにして、喉ごしのよい独特の食感を持つ蕎麦が誕生した、というわけです。

カラムシからつながって生まれた「へぎそば」は、東京下町の蕎麦よりも、信州信濃の蕎麦よりも、(僕にとっては)最高の蕎麦になりました。
おしまい。。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2014/05/07/7305030/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

アクセスカウンター