越後妻有の民家/農家 … 建築の旅・WanderVogel2012/09/08

越後妻有の民家
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越後妻有の十日町市周辺で、今でもよく見られる民家(農家)の姿です。
もちろん急な勾配屋根を持つ茅葺き民家もあちらこちらに点在していますが、雪下ろしを前提としたこういった形状の瓦屋根・金属屋根の民家も実際には多いのです。

越後妻有トリエンナーレの主要プロジェクトのひとつに「古民家再生プロジェクト」「空家プロジェクト」というのがあって、トリエンナーレ出品作品の舞台(脱皮する家、うぶすなの家 など)として文字通り「再生」しているものもありますが、全体から考えるとレアケースですし、保存/再生という観点からは少し方向が違うのかもしれませんね。

大半の地域では(日本全国、同様なのでしょうが…)やはりここでも過疎化の波が押し寄せていて、お年寄りしか住まなくなってしまった村では、残った村人で協力しあっての雪下ろしもそう容易には出来ないのでしょう。
ここ数年は大きな地震もありましたし、年によっては豪雪になり雪の重みで潰れてしまい、その後修復も出来ず朽ち果てていく民家が多いのだと思います。

古民家再生の基本は9/4日のBlogでも書いたように、その生まれ育った地域での保存・再生が一番望ましい姿で、他所の地に運んで移築したのではその文化的価値は半減と言うか無くなってしまいます。
単に保存するといっても、それはそれでとても難しいことです。
だとすれば、何とかこの地で「再生」出来る方策はないものだろうかと、この3年に1度のトリエンナーレを見に行くたびに思います。
(これは、この地に限らず全国同じでしょうけど・・)

この民家はこの地方では良くある構造・意匠で建てられた民家/農家ですが、せがい(船枻)造りの持ち送りの方法(構造材)がちょっと変わっていて、目を惹きました。
妻側の両端部を見ると、軒先に飛び出した桁を支える梁(というか 持ち送り)にうまいこと曲がった根曲がり材を使っています。

雪の多い地域(新潟だけでなく富山や高山でも見られますが)の斜面などで、雪の重みに耐えて育った独特の形状に曲がった木材を、構造的に上手に使って造られています。

家自体(外壁の下見板など)はかなり痛んでいるようですが、傾いたり屋根が曲がったりはしてはいないので、構造的にはまだまだ大丈夫そうです。
ただ、この少し上に建っていた民家(写真右端に少し写っていますが)は屋根が落ちてしまっていて、土壁もかなりの範囲が崩れてしまい、すでに再生することは難しい状態でした。


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