大阪市最古の住宅・渡辺邸の解体に想う … 建築の旅・WanderVogel2012/09/25

大阪市渡辺邸解体
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昨日の全国版のニュースに載っていましたから、目を留めた方もいるでしょう。
「大阪市内で最古とされ、大阪府の文化財に指定されていた江戸時代初期の民家「渡辺邸」(同市淀川区)が近く解体される。
府の古い規則に基づく指定だったため、府の文化財保護条例などと違い、所有者の申請だけで4月に指定が解除された。」
さらに、大阪府内にはこういった古い規則に基づく文化財が他に27件あり、府は今後も同様の事態が生じかねないかと懸念している。ということでした。

渡辺邸は平安時代の武将、渡辺綱(わたなべのつな)の子孫の家と伝えられ、約2,560m2の敷地内に17世紀初頭に建てられたと推定される母屋や土蔵など6棟が建つ。といいます。

保存活動も細々と続けられてはいたのでしょうが、住宅の場合 まったくの個人の所有ですので、相続となると莫大な相続税が一般と同じようにかかりますし、現行法では行政が主体となり土地を含めての買い取るか、持ち主からの寄贈という形にならないと、現実問題として「その地での保存」は難しいということになります。

ともあれ、こういった民家は今となっては数少なくなってしまった「日本の宝」ですから、超法規的な扱いをしてでも「土地を含めた完全保存」に舵を切らないと、これまで同様に、それこそ何の痕跡も残さず消えてなくなってしまいます。
これはその土地の歴史の消失と同じ意味を持つと思います。

戦前までは日本のあちこちに当たり前のように代々受け継がれ残ってきた、(平安時代、鎌倉時代あるいは江戸初期に建てられた)歴史ある民家や邸宅。
空襲の戦火をくぐり抜けて奇跡的に残った、こうした「日本の歴史」が、平和を手に入れた戦後(特にここ20~30年の間に)になって片っ端から壊され消えていくことが何とも皮肉なことで悔しく、悲しい。

日本・日本人のアイデンティティーは私たちの住み暮らしてきた地方の歴史の中にあります。
地方の歴史を形作っているものの大きなファクターが、村(町)の成り立ちであり、こういった民家の姿だと思います。
古くからの「地名」もそのひとつです。昔から呼び慣らされてきた「地名」にはその土地の歴史が詰まっています。

「民家」と「地名」が失わされていく現代の状況(風潮)は、亡国の危機に瀕しているともいえます。
そんな状況を少しでも改善するために必要なことは、無関心でいないことです。目を背けないことです。

失ってしまったものは二度と元には戻りません。
そして、私たちがやらなければならないこと(出来ること)は まだまだたくさんあります。

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