金沢八景・霧に煙る 吼月山 泥牛庵 … WanderVogel2012/04/26

金沢八景・泥牛庵
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金沢八景駅から16号線を横須賀方面に少し行ったところの高台に、鎌倉時代から続く古刹「泥牛庵」があります。
この庵(いおり)は山号を「吼月山」と言います。春霞の中、落ち着いた佇まいを見せています。

石柱には「臨済宗円覚寺派 泥牛庵」と書かれています。向かい側には「暁天参禅会」の看板も目に付きます。

泥牛庵の「泥牛」の意味は、禅宗では「悟り」を「牛」で表すそうで、「泥牛月に吼ゆ」という禅の言葉から来ているそうです。
(有名な禅画「十牛図」では悟りを求めて、牛を山中に探し回ります。)
泥でつくった牛が、月の光の中で、悠然と立ちながら月に向かって吼えているように見える。
そこには一片の計らいもなく、自然のまま、天地に抱かれ、今を無心に生きることの素晴らしさを教えてくれている。と言います。

私には「悟りの境地」など、遠い先のそのまた向こうの煙雨の中です。

春霞と言えば、こちらの方が私には馴染みます。
晩唐の詩人「杜牧」の有名な七言絶句「江南の春」です。

 江 南 春
 千 里 鶯 啼 緑 映 紅
 水 村 山 郭 酒 旗 風
 南 朝 四 百 八 十 寺
 多 少 楼 台 煙 雨 中

あ~、無性に日本酒(新酒)が飲みたくなりました。
とりわけ「水村山郭酒旗風(すいそんさんかくしゅきのかぜ)」の一文が喉にグッときます。

ここから距離的にも近い「鎌倉」と中国の「南朝」をダブらせているわけではありませんが、鎌倉の栄華と南朝の華やかな六朝の栄華と衰退、何となく心情的に相通じるものを感じてしまうのかもしれません。

この詩を詠んでいると、ここから朝比(夷)奈の切通しを通って鎌倉の山を尾根伝いに歩き、鎌倉建長寺裏から北鎌倉の明月院までの山中の風景をイメージさせます。 この山中に「酒旗青紵一行書」を店先に掲げた酒舗があれば言うことなしです。

この春霞に煙る時期にはまさしく「多少楼台煙雨中」という感じなのでしょうね。

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・・・不定期に つづく

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