花冷えの三渓園・サクラは満開を通り越して … 自然観察・Volunteer2016/04/02

春草盧
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今日は本牧・三渓園にある、茅葺き民家・旧矢箆原家住宅でガイドボランティアをしてきました。
花冷えの天気で、サクラの花びらも地面にハラハラと舞い始めています。この分だと、明日・日曜日には花吹雪が舞いそうな感じです。

昨年末に屋根を葺き替えたばかりの春草盧(九窓亭)は、明け方に降った煙霧に濡れて檜皮(ひわだ)が鮮やかなオレンジに輝いていました。
春草盧は、桃山時代の建築と伝えられ、三畳台目(さんじょうだいめ)の小間茶室は、織田有楽斎の作品とも伝えられています。茶室内に九つの窓があることから、かつて「九窓亭」と呼ばれていました。

園内の咲くロウバイや梅の花はとっくに終りを迎えていて、この間まで咲いていたトサミズキも数輪の花びらが残っている程度で花の時期はすでに過ぎてしまいました。
一方で、シャガやタチツボスミレ、キランソウ、ヤマブキなどが春らしい花の色を見せてくれています。

三渓園では、4/29~5/5までの期間で、「新緑の古建築公開 - 数寄屋建築 江戸と近代 - 」と題して、江戸時代初期に和歌山・紀ノ川沿いに造られた紀州徳川家の別荘と伝えられる「臨春閣」(重要文化財)と、三渓園の創設者/原三渓の住居であった大正9年建築の「白雲邸」(横浜市指定有形文化財)の二棟の建物の内部が公開されます。
どちらも美しい建物です。

インド・ネパールの素朴な民衆画:ミティーラ画 … Art・WanderVoge2016/03/06

ミティーラ画を虫干し
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床がきれいに張られた2階を片付けているついでに、押入れの角にずっと丸めて放置していたミティーラ画を久しぶりに出して広げて虫干しをしました。

30年以上も前にインドで買ってきたもので、一地方で描かれている民衆画です。一見すると、子供じみた拙い絵に見えますが、よ〜く見ると純粋でいて味があって、素朴で温かさを感じる絵柄で癒されます。僕はとても大好きな絵です。
だいたいが手漉きの厚い紙に描かれていますが、中にはきちんと布で裏打ちされているものもあります。

現地で買ってきてからずいぶんと長い年月が経っていますが、その間ぜんぜん陽に当てていないので、色はきれいに残っています。
何枚かは部屋に貼っていて、陽に当たっているのでそれらはやはりちょっと日焼けして色が落ちてしまってますが、長さ3mを越える長い絵の2枚は色もきれいなままで、虫喰い穴もなく良好な状態で残っていました。安心しました。
せっかくですからこれからは、あれこれ取り替えながら壁に貼ったりして楽しむことにします。


ミティーラ画というのは、インドのミティーラと呼ばれる地域(ビハール州:インド北東部に位置し、ネパールと国境を接する)とネパールのジャナクプールという地域のごくごく狭い地域内で描かれ伝えられてきた素朴な民衆画のことを言います。

題材は主にヒンディーの宗教モティーフが描かれることが多く、画面は余白が無いほどに空間を埋め尽くして、ヒンドゥ教の神様の姿の周りに、これでもかという具合に花や星、月、太陽、幾何学模様などがびっしりと描き込まれています。
色もカラフルで、素朴な絵柄とデフォルメされたタッチが印象的です。

ミティーラ地方の家々では、主に女性がこういった絵を伝統的に代々(母から娘へと)伝えられてきた、と言われています。
宗教的なお祭りの時や結婚式、作物の豊作をお祈りする時などに描かれてきたと言います。
本来はその家の漆喰壁や床面に描かれてきたものだそうですが、近年になって和紙のような手漉きの紙や布やキャンバスの上などに描かれるようになったようです。
(一説では、地方の女性たちの収入源と自立支援促進のため、インド政府が紙やキャンバスの上に描くことを奨励した、という話しもあります。)

いずれにせよ、こういったかたちで、自分も手に入れることが出来、家で広げて眺めていられるのはとても幸せなことです。

杉の無垢縁甲板張りと蜜蝋ワックス … 自然素材・WanderVogel2016/03/05

スギの無垢フローリングと蜜蝋ワックス
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とりあえず2階の和室の床の杉縁甲板張りは完了です。

カラ拭きのあと、蜜蝋ワックスをかけます。説明書にもあるようにベタつきが残らないように、薄く薄くかけていきます。
一見すると塗られていないようにも見えますが、触ってみるとかすかに手のひらに油分が残ります。
まだ、ワックスの量が多かったのでしょうか?このまま一日置いて明日また確かめてみます。

今日は一日予定が入っていてバタバタと忙しかったが、その予定すら完全に消化に出来ずに終ってしまいました。
明日は、どうしても1階の片付けを終らせてしまわないと、月曜からの解体工事に着手できない状況です。明日は朝から頑張ります。

柿渋和紙:柿渋のムラが特徴の和紙 … 自然素材・WanderVogel2016/03/03

柿渋紙
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ナチュラル系の紙屋さんでは、伝統的な白い和紙や先日書いたロクタ紙などの他に写真のような柿渋紙なども置いてあるので、用途に合わせて購入することが出来ます。
和紙はいろいろと組み合わせることで、面白い使い方・表現が出来ます。

壁や天井、扉、家具などに張ると生成りの和紙とはまたひと味違う独特の空間を造り出すことが出来ます。ただ、柿渋紙はちょっと個性が強すぎるので、使い方というか張る面積に注意が必要かもしれないですね。
先日行った石神井の「土の先生」のところでは、紙に土を塗ったり、布を土で染めたり(埴染め、と先生は命名されている)と自然素材の中でも「土」にこだわった使い方をされていますが、自然素材は土(土壁)や紙(和紙)だけでなく、いろいろな素材がありますので、探して使ってみるととても勉強になり楽しいものです。

写真は和紙の表面に柿澁を塗った柿渋紙で、これも古くから民具や衣料、食器などいろいろなものに使われてきた材料です。
柿渋は塗料としても有名で、防腐・防虫効果から住宅の木材部分に塗るなど、漆(うるし)などと同じように、柿渋も昔から多く利用されてきました。

ただし、昔ながらの作り方のものは独特の強烈な臭いがすると言いますので、今の住環境で使うにはちょっと勇気が必要かもしれません。
今は、臭いの少ない「無臭柿渋液」も販売されていますので、そちらであれば抵抗なく使えるでしょう。

柔らかい床材:杉の無垢縁甲板張り … 自然素材・WanderVogel2016/03/02

杉の縁甲板張り
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今、自宅兼事務所の改装に取りかかっています。

築50年くらいの古屋なので、あちこちにガタがきていて、家全体もかなり傾いています。根本的に建て直すことは出来ないのですが、何はともあれ床のレベルだけは水平に直しておかないといけないね、と友人の大工さんに無理言ってレベル調整をしてもらっている。
床が少しでも傾いていると、人というのはそういう部分はけっこう敏感なものですので、僕もここに住んでいてなんだか気持ちの悪い感覚をずっと感じていたんですよ。

とりあえず2階から手を付け始めます。
敷いてある古い畳(60mm厚)を撤去した後に、根太で水平を取ってやってその間に断熱材を敷き、その上から仕上げ材の厚さ30mmの杉の縁甲板を張り進めて行きます。

杉板は材質が柔らかく温かみがあって、床板には僕は最適だと思うのですが、欠点は表面が傷つきやすいことです。
杉は想像以上に表面が柔らかいので、ちょっとした物を落としただけでも簡単に凹んだり傷になったりします。ですから、杉材とはそういうものだと納得できる人しか床板材としては使えないのかもしれません。
床の傷を気にする人はもっと硬い材を選ぶか、表面が強化コーティングされた合板フローリングを選んだ方が無難です。
また、無垢材は時間の経過とともに多少暴れますので、合わせ目に隙が出来たり、材全体が微妙に反ってきたりすることがあります。

日に焼けるのも早いので、陽の当たってる箇所とそうでない箇所では色変わりが目立ってきます。
そもそも杉材は白木と赤目がはっきりとしていますので、材によって色や年輪(板目)などのバリエーションというかバラツキが大きい材木です。
板を張る時には何枚かの杉板を並べて、木目や色合いを見比べながら自然に見えるように選んで張って行くのですが、それでもどうしても色味のバラツキが出てしまいます。

好きな人にとっては、その色違いの具合や柔らかさなどが杉の縁甲板(本実の無垢フローリング)の一番大きな特徴であり、魅力なのだと感じるのですが、ムラや色変わりが無く、いつまでもきれいなままで変わらないものを求める人にとってはたぶん気になってしょうがないかもしれません。

自然素材とは元来そういうものですから、使う側がそれに合わせてメンテナンスしていく、というのが自然素材との正しい付き合い方と言えます。

この杉板、もちろん無塗装品ですので、一部屋すべてを張り終わったら表面に蜜蝋を塗っていきます。

ネパール和紙:Lokta paper … 自然素材・WanderVogel2016/03/01

ネパール和紙
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ネパールに行くと、一昔前の日本のような風景と出会える、という話しはよく聴きます。
実際に行ってみるとまさしくそんな感じで、懐かしい気持ちになります。

ネパールでは古くから日本と同じように木の皮から取れる繊維を漉いて作る「和紙」が作られているのをご存知でしょうか?
日本の和紙の原料は楮(コウゾ)、三叉(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)が有名ですが、ネパール和紙の原料となるのは、ミツマタやガンピなどジンチョウゲ科と同じ種類の「ロクタ」という植物です。(ちなみに、コウゾはクワ科ですのでちょっと違いますね)
ロクタはヒマラヤの標高1,800m〜3,000mの高地で栽培されています。

最近ではこのロクタ紙を日本でもナチュラル系の紙屋さんで目にする機会があります。
壁や天井に張ったり、扉に張ったりと室内空間を包み込むことで、吸湿性にすぐれたやさしい空間を造り出すことが出来ます。

庭の手入れのついでに、マン盆栽 … 自然観察・WanderVogel2016/02/22

植木鉢とman盆栽
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昨日は庭木の手入れをして、邪魔な木や枝、草をバッサバッサと切って捨てました。

ただやみくもに切って捨てるのではちょっとかわいそうかなという気持ちも働いて、足元に幼樹が出てきている木や株分けできる草花などは一部を鉢植えにして残しておきます。

写真はマンリョウの木の幼樹です。胸下くらいにまで育ったものを切って整理する際に、足元から芽を出している幼樹を鉢植えにしました。
庭に盛んに飛んでくるヒヨドリが食べて、あたりにまき散らした種が発芽して育ったものです。

これもただ鉢に移して植えただけでは面白くもなんともないので、以前インド・バラナシのバザールで買って来た民芸品の人形を使って「マン盆栽」風にしてみました。
昔流行った、パラダイス山元氏「家元」のマン盆栽(マンボ+盆栽)。それをちょっと思い出してやってみたのですが、これだけでも雰囲気が変わるものだなぁ。
まあ、ベースは盆栽と言うよりはただの鉢植えですけど、これで、足元に苔でも生やせばそれなりに雰囲気が出るかな?

今はとりあえず山砂を敷いてあるけど、インドの雰囲気を忠実に再現するなると、足元はやはり赤い砂(砂岩)ということになるのかな・・・。

家の片付け・中央アジアのがらくた達 … ART・WanderVogel2016/02/08

中央アジアのがらくた達
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昨日・今日と時間があったので、以前より気になっていた部屋の大片付けに手を付け出しました。

家の中で一番場所を取っているのが、雑多な本たちなのですが、負けじと場所を占めているのが世界各地で見つけて持ち帰ってきた「がらくた」たちです。
金銭的に価値のあるものは何一つないのですが、みなそれぞれ思い入れがあって捨てるに捨てられない、という感じで、片付けたつもりでも変わらずごちゃごちゃしています。

本の方は、久しぶりに整理してみると古いコンピュータ関係の本や、解説書、カタログなど今となっては全く用を為さないものがたくさん残っていたので、これらは片っ端から捨てます。古い建築の技術書やデザイン本なども遠慮なく捨てる側に選別して行きます。小説本なども一度読んだものなどは迷わず捨ててしまおう。
でも、紀行文や写真集などは古くてもなんだか捨てられないんだなぁ。

食器棚の中もついでに整理します。棚からすべて出して選別していくと、いらないもの(普段使っていないもの)ってけっこうたくさんあるもんです。
箱に入ったままそのままの姿でしまわれている食器もいくつも出てきます。
始めに食器の量を半分に減らそうと目標を立て、量産品を中心にどんどん捨てる側に選別して行きます。

明日は、書類、事務用品・文房具類を捨てよう。
昔使った道具類が今も後生大事に仕舞われていて、いらないものがいっぱい出来そうだなぁ。

アトリエ・テラ:土の先生のatelier訪問 … ART・WanderVogel2016/02/07

アトリエ・テラ、光る泥だんご
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僕が「土の先生」と読んでいる、上石神井の田村先生の工房「アトリエ・テラ」の室内は、まさに「お宝の山」でした。というお話し。

先生は土壁や磨き壁(大津壁)、漆喰、染色(泥染め)、など「土」にやたらと詳しい方なのですが、ここ十数年は「光る泥だんご」でも各地で活躍されています。
先生とはもうかれこれ十数年のお付き合いをさせていただいていますが、アトリエを訪問するのは実ははじめてなんです。
いままで、ずいぶんいろいろなところにご一緒させていただいていて、何日も泊まりがけで行動を共にしていた時期があるというのに、考えてみるとアトリエに入ったのは始めてでした。

さすが、いろいろ土に関する研究・製作をされているだけあって、アトリエの中はお宝の山です。もちろん「光る泥だんご」もいろんな種類のものが所狭しと飾られていました。
「光る泥だんご」に限らず、磨き壁に和紙の型で染め抜いた土壁作品とか、螺鈿を埋込んで磨き出した作品とか、土染めの作品とか、目を引くものがあちこちに無造作に置かれていました。

自然農法で作った野菜を中心とした食事(ランチ)を、これまた一風変わった民家風のカフェで一緒にいただきながら、3時間以上も話し込んでしまいました。

先生はデザイン学校で教えていた時期が長いのですが、本来は建築家で日本建築・民家の古い技法や工法にも詳しい、土の建築の専門家なんです。
歳は一回りくらい上なのですが、まだまだパワフルに走り回っています。
素晴らしい。僕も大いに見習わなくっちゃ!

映画:エベレスト3Dを観に行った … Cinema・WanderVogel2015/11/11

映画エベレスト3D
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建築の検査予定がポコッと空いたので、11/6から公開されている「エベレスト3D」をTOHOシネマズに観に行ってきた。

現実のエベレスト登山に関してはここ数年、イヤな話、悲しい話ばかりが聴こえてきます。
エベレストベースキャンプを襲った巨大雪崩(何人もの優秀なシェルパたちが犠牲になり、その1年間は喪に服するということでエベレスト登山は1隊も入らなかった)、ベースキャンプでの登山家とベテランシェルパとの乱闘、過酷な仕事で危険と背中合わせにならざるを得ないシャルパたちのボイコット騒ぎ(屈強で優秀なシェルパたちがいなければエベレスト登山は成り立たない)、ベースキャンプや各キャンプ(C1~C4)周辺に積み重なるおびただしいゴミの山、搬送出来ずに氷付けになったままの何十体もの登山者の遺体(それはそのまま、数十年に渡るエベレスト登山の悲劇を脇を歩く登山者に見せつけていることになる)、そして今年春に起きた大地震。。。


「エベレスト3D」も、そうしたエベレスト登頂を舞台とした商業登山を描いた映画です。(実は、まったく予備知識を入れずに観たので、観るまでそういうストーリーだとは知らなかったのですが・・・)

過酷な自然と向き合い、登山者の安全を計りながら冷静にリードするリーダーガイド=ボブ・ホールの姿を映画はけっこう淡々と描いている。
1996年の実話を元に描かれた映画は、結局は実話通りに悲劇で終る。

商業登山であるが故に(というわけでもないのかもしれんが)最後に「情」に流されシビアな決断を下せなかったリーダーの判断を当事者でもない人には、責めることは出来ないだろう。

限られた選択肢しか無いエベレスト頂上へのアプローチでは、精鋭のプロ登山家でもツアー登山者でも同じルート、同じタイミングでアタックを仕掛ける。
ある時のほんの小さな歯車の乱れが、少しずつ引き返せない領域へと滑り落ちていく、、そんな怖さがエベレスト登頂には付きまとう。


それにしても、なんと美しい山だろうエベレストは。
どうやって撮影したのだろう、と不思議になるほどリアルな描写と、厳しくても美しいネパールの山々を観せてくれて、大満足の2時間でした。

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