丹沢のシカ捕獲のこと 自然観察指導員研修会 … 鳥獣捕獲/自然観察・WanderVogel2015/02/09

自然公園指導員研修会
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先日、七沢にある自然環境保全センターで丹沢に生息するシカの保護管理と捕獲についての研修会が行なわれた。一般向けの講習会というよりも、神奈川県自然観察指導員を対象とした専門のレクチャーです。


研修会の主題は2つあって、ひとつは神奈川県の取り組みとしてのニホンジカ保護管理についてのこれまでの経緯と今後の目標について、もうひとつは神奈川県で行なっている少し変わった取り組みであるワイルドライフレンジャーの取り組みについてです。

ワイルドライフレンジャー制度は3年前から始まった神奈川県独自の新しい取り組みなのですが、具体的にどのような活動をしているのかその実態がよく解らなかったもので、その方の話しを直接聴きたいというのが今回の目的でもありました。

丹沢全域のニホンジカの生息数は(実際はよく解っていないので、あくまで推定数)5,000頭程度と見られています。シカは「シカ算」的に増えるので、全体数としては丹沢の場合(自然減を考慮しても)1年で約3割ずつ増えていくと言われています。

シカの社会は「一夫多妻」で、成熟したメスは1年で1頭の子供を産みます。栄養状態がよく環境も温暖だと、メスは2歳からもう子供産める身体になると言われています。
丹沢地域内ではメスの捕獲が長い間禁止されていましたので、もっぱらオスジカの捕獲を主に実施してきたということなのですが、オスの数が減っても単に「一夫“超”多妻」になるだけ(これはこれでうらやましい気もするが…)で、シカ全体の頭数調整には役立たなかったようです。

神奈川県では平成19年からメスの捕獲にも着手しだし、ようやくシカの全体頭数の削減効果が見えてきたという段階なのだそうです。県では年間2,000頭近くのニホンジカを捕獲しているとのことですが、メスジカを捕獲するようになってようやく増加に歯止めがかかった、ということですね。


ただし、一方ではその弊害も出てきていて、捕獲数が増え捕獲圧力が増してくると当然シカも警戒レベルを上げ警戒心が強くなるとともに、今までの生息エリアからより山深い標高の高い山岳地域に移動することになります。
その結果、今まで割と容易に捕獲出来ていた地域での捕獲が難しくなり、そのエリアでの捕獲数が減ってきているという状況になっているそうです。

シカもそれほど馬鹿ではない(鹿だけど)ということですよ。

そしてその状況に対応するために考え出されたのが、シカが新しく進出しだした高標高域の山岳稜線や遠方地での捕獲・調査を専門に行なう、シカ専門のワイルドライフレンジャー制度ということなんです。
考えてみれば、いたちごっこのような気もしますが、野生動物相手では人の方もそれに合わせて追いついて行くしかないのでしょう。

シカにしてみても今まで敬遠していた領域にまで足を踏み入れるわけですから、四本足のシカにとっても厳しい地形条件の場所なのです。当然、二本足の人間にとってはさらに過酷な場所での活動となります。
特に昨年、一昨年のような大雪の時は特にそうでしょう。冬山装備での行動にプラスして、重い猟銃を携えてシカに見つからないように隠れて歩くなんて、聴くだけで大変さが解ります。まして、その状況下でもしっかり成果を上げなければならないのですから、仕事とはいえ過酷なものです。


相手が「自然」と「野生動物」なのですから、人が考える計画通りに全て行くはずも無く、毎年毎年試行錯誤の繰り返しとのこと、ほんとよく解ります。

前回の鳥獣被害対策研修会:http://hd2s-ngo.asablo.jp/blog/2014/11/17/

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