一昨年の地震の被害・ナグタリ村のゴンパ … Nepal Trekking・WanderVogel2016/12/09

ナグタリ村の倒壊したゴンパ
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一昨年のネパール地震で大きな被害のあったランタン一帯(Langtang Valley)ですが、川(Bhote Koshi River)を挟んだ西側の山麓一帯でもやはりかなりの被害が出ていたようでした。
そこはthamag(タマン族)の人々が暮らす、独特の文化の残っている地域(Tamang Heritage Area)で、事前の情報では地震の被害が比較的小さかったエリア、と聴いていたのですが、実際に歩いてみるとそうでもありませんでした。

エリア内のいろいろな村を巡りながら歩いていると、目に付く家屋で被害の無かったものは皆無で、ほぼ全ての民家の屋根が倒壊・崩落していました。
地震から1年半以上が経った現在でも、応急修理がなされているものはそのうちの約半数程度、というのが印象です。
しかも、伝統的な屋根(スレート石屋根や板葺き屋根)での修復はまったく見られず、波形トタン板による応急修理がほとんどです。

この地域の民家の建て方には2つのパターンがあって、木造(柱梁工法)で造られているものと、石積みの壁に木造の床や屋根を載せたものがあります。
また、細かい彫刻を施した飾り窓や柱頭飾りなども、この村の独特の建築文化を象徴しています。

木造の場合は、屋根も「くれ板葺き」で造られ、葺いてある木の板が飛ばないように、上に石が載せられています。日本の昔の民家に良く似ています。
石積みの壁の上に木造の梁・垂木で屋根下地を組んだ民家の場合は、薄く裂かれたスレート石で屋根が葺かれているものが多く見られます。これも石の産地を持つ地方の日本の民家でも見られる手法です。
いずれにしても、みな地元で容易に手に入る素材で造られています。

村のあちこちには応急修理さえままならず、打ち捨てられている家屋も多く見られ、大切な村のゴンパ(チベット仏教の僧院)でさえ未だに手が付けられずに仏像が野ざらしの状態にあったりしています。

この辺りの村は、古くはチベット・中国との交易で栄えた地域だったと言います(Bhote Koshi川沿いの道を遡ると、チベットはすぐそこです)が、新しく観光産業(トレッキング)にも力を入れ始めた矢先のあの大地震です。目玉である静かな村の装いや伝統的な村の佇まい、建築文化、といったものが失われてしまったというのは何としても残念なことです。

とは言え、こうした村々では、まずは倒壊した宿泊施設(ロッジや山小屋レベルのものではありますが)の修復や新築をする姿も多く見られました。

独特の佇まいを見せていた村のイメージは少し失われてしまいましたが、ナグタリ(Nagthali)村から見る壮大なヒマラヤの山々の姿は昔も今も変わりません。

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